承前

2008/10/26

 「キューポラのある街」

 冒頭、赤羽方面から鉄橋を渡って川口に向かう電車を空撮しながら、ナレーションで川口が鋳物の街であることを紹介する。音楽はサスペンス映画のような重厚さで、青春映画には似つかわしくないような印象を持った。
 早船ちよの原作を、浦山桐郎と今村昌平が脚色。音楽は黛敏郎、撮影は姫田真佐久だ。

 ヒロインのジュン(吉永小百合)が通う中学校は、荒川土手沿いにある。車で赤羽方面から川口へ向かう際、橋(国道122号)を渡るのだが、渡ってすぐ左。この学校は今もある。当然か。道路をはさんだ反対側にそびえたつ川口一の高層マンションが現在のランドマークだろうか。
 橋を背に土手沿いを(電車が走る)鉄橋側へ歩いてジュンは家に帰る。その場所が鉄橋をくぐる前に市街の方に折れたあたり。ここが60年代当時の鋳物工場の中心地だったそうだ。毎朝、通勤時に電車から見えるが、今はもうマンションばかりで当時の面影はない。映画の後半、川口駅がでてくる。駅舎や駅前のロータリーが、まるで田舎のそれといった佇まいに驚愕する。
 現在の川口駅前は、そごう等の大型ビルをペデストリアンデッキで結んで、昔とはまったく異なる様相を呈している。広くて大きい。数年前には、大型施設が完成してデッキも延長されたから、より大都市の印象になっている。この施設、メディアセンターのほか、図書館等の公共施設、スーパーや書店等の商業施設、住居棟などで構成される大きな建物で、名称が「CuPola(キュポ・ラ) 」。まあ、とにかく、もうキューポラの時代ではないのである。
 この時代、僕の住む地区はほとんど田んぼ(畑)だったのではないか。劇中に西川口にできた工場なんて台詞がでてくるところから予想して、川口駅周辺が手狭になって、郊外(?)に鋳物工場が建設されはじめたころかもしれない。

 川口という街の変貌を知るには格好の素材。ある意味、ドキュメンタリー映画の様相を呈してしまうわけだが、ストーリーもなかなかどうして、かなり引き込まれた。
 吉永小百合の魅力はもちろんだが、弟役の市川好郎が良い。この弟と朝鮮人の親友の関係が後半にクローズアップされる。親友の家族が北朝鮮に帰るというエピソード、それを皆が応援する構図が、現代から見ると鼻につくのだが、時代を考えれば仕方ないか。当時、北朝鮮はこの世の楽園だと喧伝され、在日朝鮮人の帰国運動が推奨されていたのだから。母親は日本人で、結局母親だけ北朝鮮に帰らない。映画の中では悲劇だが、現実ではよかった、よかった!

 親友には姉がいて、ジュンの同級生。家が貧しいためにパチンコ店でバイトをしている。ジュンもこのバイトを紹介してもらう。ジュンにはもうひとり友人がいて、こちらはかなり裕福な家庭。これで当時の生活の差が歴然とわかる。貧乏にも裕福にも何の屈託もなく接するジュンがいい。怪我で鋳物工場を馘首された父親(東野英治郎)の根っからの職人ぶり、呑んだくれっぷりもたまらない。母親は杉山とく子が演じている。
 そのほか、ジュンの担任が加藤武、昼間働いて夜定時制の高校に通っている女工が吉行和子。下元勉や小林昭二も姿を見せる。クレジットには岡田可愛の名前があり、最初どこに出てきたかわからなかった。2回目の鑑賞で、膝を打った。学芸会(芝居)のヒロインだ。小学生じゃわかりません。

          * * *

 パソコンが故障がしたので、回復するまでしばらく休みます。
 もう故障して2週間経ちますが、あまりのショックに何もしていません……






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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
私家本「僕たちの赤い鳥ものがたり」
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」

神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。遊びにきてください。

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