原作を読んだときにこう感想を書いた。 

 「まぐま」で「小説と映画のあいだに」を連載していたら絶対取り上げた。
 映画化作品には映像におけるオリジナリティがある。そこに衝撃を受けたのだから、もうそれだけで個人的には認めてしまう。
 オリジナルエピソードの一つ、劇中で歌われる「レモンティ」って、シーナ&ロケッツの、元をたどればサンハウスの曲だった。歌詞が意味深。「雨上がりの夜空に」の前にこんないやらしい歌があったなんて。
 主人公の白鳥は、「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」「町長選挙」(奥田英朗/文春文庫)の伊良部センセの容姿に「相棒」右京さんの頭脳を足したキャラクターみたい。医師免許を持っているのだ!

 中村監督は劇中における音楽の使い方がうまい。

          * * *
2008/03/01

 「チーム・バチスタの栄光」(MOVIX川口)

 スパゲティ作りの名人たちが腕を競い合うコンクールに敢然と挑む若者集団。人は彼らを〈チーム・パスタ〉と呼んだ……。
 最初そんな物語を想像していた。タイトルを勘違いして。いやほんと、受け狙いじゃないから! 少なくともコメディ映画を予想していたのだ。
 原作の存在を知らなかった。第4回「このミステリーがすごい!」第1位になった小説だという。作者は海堂尊。うーん、見たことがあるようなないような。一応毎年「このミス」はチェックしているはずなのに。
 だいたいチーム・バチスタとはいったい何だ?
 舞台となる病院でバチスタ手術を行うために組織された外科チームの通称名。バチスタ手術とは心臓移植の代替手術のことで、拡張型心筋症に対する手術術式をいい、肥大した心臓を切り取り小さくし、心臓の収縮機能を回復させる。考案者がランダス・バチスタ博士。だからバチスタ手術なのだ。

 これまで100%の成功率を誇ってきた某病院のチーム・バチスタが3例続けて失敗。すべて原因不明の術中死だ。事態に危機感を抱いた病院長はを心療内科医に内部調査を命じる。専門外の心療内科医はとりあえずメンバーに聞き取り調査し、事件性はないと結論づけた。にもかかわらず、外部からの意外な人物の介入で意外な展開を見せていく。医療関係者に対して圧倒的立場にいる厚生労働省の役人の登場だ。
「犯人はチーム・バチスタのメンバー7人の中にいる!」
 彼は内科医を助手にして強引な調査を開始する。果たして術中死の原因とは何か? 本当に犯人はいるのだろうか?

 何と医療ミステリ。おまけにホームズ役が阿部寛だ。竹内結子をワトソンにしてまたまた怪演を見せるだろう。「トリック」コンビの変型バージョン。もっとシリアスにしたストーリー。
 ぜがひでも観たくなった。とはいえ、ミステリ映画に関してはあるポリシーを持っている。
 原作がある場合、まず小説をあたること。ミステリの醍醐味が映像では半減するからである。TVの2時間ドラマなんて、キャストで誰が犯人なのかすぐわかってしまう。ずいぶん前になるが、宮部みゆきの「蒲生亭事件」がNHKで単発ドラマ化された際、このポリシーを守って本を読むまで録画ビデオをかなりの間寝かしていたこともある。
 今回はロードショー前に読んでしまおうと思った。書店で文庫本を手にとって考えを改めた。上下2冊なのだが、上巻も下巻も大した厚さではない。1冊で十分。にもかかわらずなぜ上下分冊なのだ! これって版元の儲け主義か、それとも作者への印税対策か? 腹が立った。よって活字によるミステリの醍醐味は諦めた。

 チーム・バチスタの面々を眺めてみる。チームのリーダーで、バチスタ手術の権威として米国の病院から招聘された吉川晃司。吉川と同じ病院で働いていた池内博之。吉川のためにNO.1の座を奪われた佐野史郎。そのほか、田中直樹、玉山鉄二、田口浩正、井川遥。
 紅一点の井川遥を除いて、誰もが犯人役になりうる。なかなか巧いキャスティングではないか。
 ついでにいえば病院長は國村隼。これで岸辺一徳や石橋蓮司などが登場してきたらどうなることやら。
 それはともかく。一番怪しそうな佐野史郎は犯人でないだろう。吉川晃司もはずれるな。玉山鉄二の線もない。田口浩正はありえそうでそうでなかったところに存在意義がある……。ほら、ストーリーやキャラクターの詳細も知らないのに、もう推理できてしまう。ミステリの醍醐味が映像で半減する意味がわかっていただけただろうか。
 ミステリ映画を成立させるのは、容疑者がオールスターか逆にまったくの無名の俳優かどちらかしかない。この数年、ミステリに一番適しているのは自主映画だと考えている。
 
 映画サービスデーということもあるのか、あるいは人気を呼んでいるためか、11時40分の回はほぼ満杯だった。
 開巻、ある仕掛けがあってすぐに引き込まれた。シリアスな内容をユーモアで包んだタッチ。案の定、阿部寛と竹内結子の探偵コンビがいい。リアリティが求められる手術シーンもまったく遜色ない。あまりのホンモノぶりに何度か目をそらしたほどだ。
 「フランケンシュタイン対地底怪獣」に登場する心臓がこのくらいリアルだったら当時どんなインパクトがあっただろう。吉川晃司の両手にぴったり張りついているゴム手袋。どうしてもウルトラマンを思い出してしまう。手袋に銀色のスプレーを吹きかけて、なんて。

 まったく先を読めなかった。最終的に残った容疑者たちへの尋問も興味津々。犯人が判明したときのはこれぞ医療ミステリだと快哉を叫んだ。確かにいろいろな伏線が散りばめられているのだ。
 「犯人に告ぐ」同様、映画化作品としてかなりのレベルだ。かなりルンルン気分で劇場を後にした。


【追記】 

 やはり原作読んでみようか。後日書店でちょっと立ち読み。上巻最初のページの文字を追ってみる。大発見! 迷ワトソン役の田口は男だった! 映画化における最近流行の手、ですな。




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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
私家本「僕たちの赤い鳥ものがたり」
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」

神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。遊びにきてください。

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