阿藤快急死の報に大声あげた。
 最初に阿藤海を観たのはいつだったのか。
 優作主演のシリーズ第2弾「殺人遊戯」の、主人公鳴海昌平を兄貴と慕う男役が印象に残っている。

 合掌

          * * *

 一応、「劇場版 MOZU」 ……の前に、映画「グラスホッパー」について から続く

 叙述ミステリを映像化すると陳腐になるとはこういうことだ。

 たとえば、女装が趣味の男がいるとする。しかしこの男、華奢ではないから、外見はいかにも男が女装しているというもの。街を歩くその女装男を異様なものとして見るまわりの人たちがいる。ところが、男からするとその眼差しは、絶世の美女を見ていると。男の大いなる勘違いなのだが、これを文章にすれば、読者は美女が街を歩いているところを想像してしまうわけだ。活字だから成り立つとはそういうことだ。
 いや、映像にすることはできる。カメラを女装男の眼にするとか、あくまでも遠目からしか女を狙わないとか。しかし、そんなことすれば技巧が目立って、これは何かあると観客にすぐわかってしまう

 映像化不可能なんてそれほど大したものではないのである。
 騙されないでね!
 
 ……最近、女装男を東京の街でよく見かける。
 本人、けっこうその気なのだが、わかる人間にはわかるのだ。

 そんなことはともかく、百舌のシリーズは、最近まで全5作だった。

 「百舌の叫ぶ夜」
 「幻の翼」
 「砕かれた鍵」
 「よみがえる百舌」
 「鵟の巣」

 図書館から借りて夢中で読んだのは単行本で、「百舌の叫ぶ夜」が文庫化されたときに購入して読んだ感想、および久しぶりに続編が書かれたときの感想が、夕景工房にあったので転載する。
 ドラマから興味を持って、これから小説をあたろうとする人は読まない方がいい。

     ◇

2002/06/21

 「百舌の叫ぶ夜」(逢坂剛/集英社文庫)  

 僕の場合、図書館から借りて読んだ単行本(ハードカバー)のミステリで非常に面白かったものは文庫になってから買うことにしている。宮部みゆき「火車」、北村薫「空飛ぶ馬」、原尞「私が殺した少女」、貴志祐介「天使の囀り」等々。高村薫「マークスの山」も文庫化を待ち望んでいるのだが、これがなぜかならない。  
 「百舌の叫ぶ夜」もその一つ。もうずいぶん前に購入してそのまま積ん読状態になっていた。

 一仕事終えた〈百舌〉と呼ばれる殺し屋が、組織に殺される。崖から海へ突き落とされたのだ。しかし〈百舌〉は生きていた。落ちたショックで記憶喪失になっていたが。〈百舌〉が最後に実行した殺人に巻き込まれ、妻を失った公安刑事の倉木、組織との関係を狙って以前から彼を監視していた同じく公安の赤星美希刑事、そして彼の生還を一番恐れる組織が〈百舌〉をめぐって入り乱れる。  

 単行本を読んだのが4年前。書名だけは以前から知っていた。ただ作者の逢坂剛についてスペインを舞台にした物語を書く人という認識しかなくそれほど興味をかきたてるものではなかった。ところが、一時期読み漁ったミステリ紹介本に〈傑作〉として必ず登場してくるので、どんな内容なのか読み始めたのだ。  
 当時の日記にこう書いている。
 
     ▽
 逢坂剛の傑作サスペンスミステリという噂に違わず、叙述トリックを生かしきった力作で、夢中でページをめくってしまった。  
 (略)  
 ストーリーが時系列に並んでいないというのもこの小説の新しい試みだろう。この手の構成って、以前にもあったのだろうか?  
 僕自身は映画「パルプ・フィクション」で初めて知ったのだが。すぐに続編を読もう!   
     △

 というわけで、すぐに「よみがえる百舌」を図書館で見つけて読んだ。これが大失敗。  
 なぜか主役の倉木警視が死亡している。ヒロインの美希は倉木と結婚して未亡人になっている。物語中で知らない事件(既に解決済み)が話題になることがある。人間関係も変わっていた。不思議に思いながら読了してやっとわかった。「百舌の叫ぶ夜」と「よみがえる百舌」の間に「幻の翼」「砕かれた鍵」の2作がある! 知らない事件とは「幻の翼」と「砕かれた鍵」で扱われたものだったのだ。
 結局図書館になかったせいで、「砕かれた鍵」「幻の翼」と読み、第1作→第4作→第3作→第2作なんていう変則的な読書になってしまった。犯人がわかっているミステリを読むのは味気ない。  

 文庫になった際に会社のミステリ好きの元同僚に貸したことがある。もう夢中になってしまって、その後のシリーズを全部買い集めたみたい。しっかりと僕の失敗を教えてやったから同じ過ちは犯さなかった。 
 シリーズ新作「(のすり)の巣」が最近上梓されたこと、知っているかな?


2002/10/24

 「(のすり)の巣」(逢坂剛/集英社)

 (のすり)としているのには理由がある。本当の書名は狂の下に鳥と書く漢字一字でのすりと読ませるのだが、この字が表示しない。仕方なく(のすり)と表記する。  

 本作は「百舌」シリーズの最新作(第5弾)。いや「百舌」シリーズというと語弊があるかもしれない。本来なら「倉木警視」シリーズとでも呼ぶべきものなのだろう(本当は公安刑事シリーズと呼ばれる由)。
 倉木およびその妻(となる)美希特別監察官、大杉刑事が活躍して警察内部の不正事件を暴き、阻止する物語。しかし前々作「砕かれた鍵」で倉木は殉職、前作「よみがえる百舌」で未亡人となった美希と大杉がコンビを組む形で事件にかかわり、驚いたことにふたりはその中で肉体的にも結ばれてしまう。  
 思えばこれが新しいシリーズの始まりなのであった。  
 表紙のイラストが洒落ている。のすりの巣(なのだろう)に千切られた万札、4個の卵、そして4つの銃弾。白い粉でもまぶせてあれば文句なしだ。  

 今回は〈のすりのだんな〉と呼ばれる男が、密輸入されたコカイン、拳銃をそれぞれ2つの組織から強奪するところから始まる。どうやらこのだんなは暴力団と深い関係があるらしい。  
 プロローグが終わり(映画ならこの後タイトルが入って)、ヒロイン美希の登場となる。  
 警視庁きっての美人と評判で同期の出世頭である洲走かりほという女性警部が警察内部で複数の男性と関係を結んでいる噂が広まる。ことが露見する前に、素行を改めるよう特別監察官の美希が本人に忠告するも、それほど反省が見られない。逆に美希を挑発する態度を示すのだ。どうやらかりほは警察内部で何か組織しているらしい。  
 警察を辞め、調査事務所を開設している大杉はある刑事の浮気相手を探っていた。その浮気相手というのが洲走かりほだった。依頼主は刑事の妻。ところがなかなか関係がつかめない。妻からの申し出で調査対象を洲走から刑事に変更、その尾行している最中のことだった。ある廃屋で刑事と暴力団の幹部が争い、拳銃の相打ちで二人とも死んでしまったのだ。大杉は刑事の財布から淫らな裸体をさらした洲走かりほの写真を発見する。  
 盗まれたコカインと拳銃、暴力団とつながりのある悪徳刑事、洲走かりほを結ぶものは何か。  
 またまた警察内部に巣食う腐敗摘出のため、美希と大杉の連携プレイが開始される……  
 美希も大杉も年をくったからか、現場を離れているためか、以前ほどのキレがない。美希は尾行されても気づかない、逆に大杉は相手に尾行を気づかれてしまう失態を重ねたり……。  

 久しぶりにお馴染みのキャラクターが活躍するのはうれしいことだが、ストーリーそのものはそれほど意外な展開もなくまあ面白いかなという程度。

     ◇

 この項続く




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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