2003/01/02

 「コラムの逆襲」(小林信彦/新潮社)  

 ふたたびU野様  

 六甲オリエンタルホテルでは翌日早いのにもかかわらず朝方までおつきあいいただきありがとうございました。  
 教えていただいたロバート・デ・ニーロ主演の「フローレス」、ビデオで観ましたよ。フィリップ・シーモア・ホフマンのオカマちゃん、見応えありです。ところでこの映画って日本では公開されなかったんですってね。ビデオ発売のみ。デ・ニーロの右半身不随の演技がいい。そのしゃべり方も。

 あっ、映画の話はまた今度ということで、実は小林信彦のコラムシリーズの新刊が年末に出たんですよ。以前お送りした「コラムの冒険」の次にでた「コラムは誘う」も文庫として発売されました。

 このシリーズ、新刊がいつ出るか、首を長くして待っていました。年末に出版されるというのがいいですね。年末年始の楽しみは保障されたもんです。  
 副題の〈エンタテインメント時評 1999~2002〉どおり、99年から02年の4年間の映画、TV、ラジオ、舞台に関する極上のコラムが楽しめます。  
 小林信彦ファンなら誰でも考える「あの映画を小林信彦はどう評価しているのか」を確認できるわけですから。  
 表紙はディカプリオの似顔絵(和田誠)。別にディカプリオのファンではないけれど、書店でこの装丁を見た時から胸わくわくです。(裏表紙は黒澤明です。)  

 映画「踊る大捜査線」が好評で公開が延長になったという話題から「ショムニ」の映画化に対する苦言になります。TVとは主演者も内容も違うことに触れ、松竹だからそんなものだと切るところなんて、そうそうとうなずいてしまいます。この頃の松竹って何やってもダメでしたからね。初めて手がけたTVアニメの映画化「忍たま乱太郎」、東宝を出し抜いて獲得したジブリ映画「おじゃまんが山田くん」、皆コケたました。

 アメリカ映画は70年代から世界中をまき込むような大がかりな映画作りを始めたがオリジナルなプロットがなくなったという話から、「ユー・ガッタ・メール」が昔の映画「桃色(ピンク)の店」または「街角」のリメイクだと説きます。私はどちらの映画も知りませんが(恥)、こんな風に話を展開する評論家(映画ライター)がいるでしょうか。  

  「シックス・センス」のアホらしさにも触れています。こんなの最初のシークエンスで秘密がわかってしまうと。映画には文法があり、それをフツーに考えればすぐわかるとのこと。  
  「アーリー・myラブ」シリーズは小林信彦お気に入りのTVですが、このドラマのプロデューサー件シナリオライターが製作および脚本を担当したB級ホラー「U.M.A./レイク・プッラシッド」をユーモアホラーとして捨てがたいとも書いています。この映画、ロードショーされた時から気になっていたんです。この回のコラムを読んでさっそく借りてきました。

 こと日本女優に関しては、趣味がいっしょとはいえない小林信彦ですが、本書で何度か絶賛するアシュレイ・ジャッドをぜひこの目で確認したいですね。初出演は「ディープ・ジョバティー」ですって。  

 いつも感心してしまうのですが、取り上げられた映画その他、どうしても観たくなります。紹介の仕方が絶妙なんです。この巧さ、どうにか自分のレビューに取り入れようとしているのですが、なかなかうまくいきません。  
 映画ファンを自認する人はぜったい読むべき本(シリーズ)ですよね。


2003/01/04

 「笑学百科」(小林信彦/新潮文庫)  

 古書店で見つけた。もちろん1982年に出版された単行本は持っている。一昨年だったか、郷里においてあった単行本をもう一度読み直したくて正月帰省した際に持って帰ってきた。  
 単行本の3年後に出た新潮文庫版はすでに絶版になっていて古書店でも見かけることはなかった。表紙の、峰岸達の描くウディ・アレンの似顔絵が気に入って買ってしまった。  

 夕刊フジに連載された〈笑い〉に関するコラム集。1980年代前半の、ちょうど漫才ブーム前後の時代をひもとく時の資料になる。漫才ブームが終焉をむかえ、それぞれのコンビが一人で活躍をしなければならなくなった頃のコラムなのである。  
 ビートたけしがピンチヒッターとして「オールナイトニッポン」のパーソナリティを担当した時、その面白さを伝えるため3回連続で書いている。この番組は一世を風靡した。  
 ドリフターズ全盛時代(というかその前か)、もしいかりや長介が単独で脇(役)にまわったら、渋いユニークな演技者になると役者としての現在の活躍を予言する目の確かさも確認できる。

 漫才ブーム後に日本人の〈笑い〉が変質することを萩本欽一が予言していることも書かれている。その変質が自分をTVの王者から引きずり落とすきっかけになると考えていたのかどうか。  
 漫才のボケとツッコミの話から〈大阪の生き字引〉香川登枝緒の指摘、漫才芸人には〈漫才人間〉と〈役者人間〉がいること、この2つのタイプがコンビを組むと成功することを紹介し、実例をあげる。古くはエンタツ(漫才人間)・アチャコ(役者人間)、啓助・唄子を経て、やすし・きよしというような。著者は若手では紳介・竜介がそうだと付け加える。その後のコンビを考えてみると、ダウンタウンの二人がまったうその通りだ。ただしとんねるずはどうだろう。ウッチャン・ナンチャンは? 爆笑問題はその系譜だろう。

 ウディ・アレンが日本映画を編集し直し、台詞も変え全く別の映画を作った(東宝「鍵の鍵」→「What's Up,Tiger Lily?」なんてことも教えてくれた。  
 澤田隆治、谷啓、鈴木清順、野坂昭如、古今亭志ん朝、井原高忠、タモリ、さまざまな人たちも登場するこのコラム集は何度読んでも飽きない。
 20年前ほどに書かれたものだからすでに亡くなった方も多く登場する(まさかその一人が古今亭志ん朝だとは……)。

 この文庫版は表紙のほかにもう一つ楽しみがある。巻末の解説である。
 自分(解説者)がどんなに頑張っても抜くことができない相手として小林信彦の魅力を語る章なのだが、冒頭のつかみとして語るアメリカの某陸上選手の話が面白い。
 アーノルド・F・テイラーは子どもの頃から足が速かったが、ハイスクールに上がって陸上競技部に入ると、自分より足の早い奴がいた。自分が記録を更新すると、そいつはその上を行く。決して追い抜くことができない。やがてアーノルドは陸上競技からばっさり足を洗い、アイダホ州ボカデロの町で花屋を営んでいる。オリンピック中継を見ていると、そいつが金メダル台に上がっていた。カール・ルイスだった。  
 この後にこの話は自分の創作(嘘八百)であると書くのだが、初めて読んだ時は「やられた」と唸ったものだ。解説はまだ〈放送作家〉という肩書きだった景山民夫。本を上梓し始めたあの頃、小林信彦本と同様一所懸命著作を買い集めた。まさかその後宗教に走るなんて思ってもいなかった。景山民夫ももうこの世にいない。


2003/01/09

 「コラムは誘う」(小林信彦/新潮文庫)

 【「コラムの逆襲」より続く】  

 U野さん、話変わって文庫の「コラムは誘う」です。95年から98年までのエンタテインメント時評。
 単行本では表紙の絵(by和田誠)は爆笑問題でした。文庫は渥美清になっています。(ちなみに単行本の裏表紙は古今亭志ん朝。文庫本は…ありません。)
 この95年から98年の間に横山やすしが、渥美清が亡くなったのでした。ですから帯のコピーが〈渥美清が逝った やすしが逝った そして小林信彦はこんなことを考えていた〉。フランキー堺も亡くなっています。中田ラケット、萬屋錦之介も。黒澤監督も……。

 話が湿っぽくなりました。
 まあ、感想なんてどうでもいいでしょう。コラム81本を読み返してみて観たくなった映画を列挙してみます。
 「グランド・ツアー」(日本では公開されたかどうか定かではない、でもTVで放映されたB級映画)
 「ニック・オブ・タイム」(ジョニーデップ主演のB級アクション)
 「銀嶺の果て」(黒澤明脚本、谷口千吉監督、セルビデオではあるのですが、レンタルではお目にかかったことがない)
 「死と処女」(ポランスキー監督、シガニー・ウィーバー主演のサスペンス、これは以前から興味あったんですよ)
 「誘う女」(ニコール・キッドマン主演)
 「非情の罠」(キューブリック監督の初期の傑作。観よう観ようと思いつつ、いつも後回しにしてしまいます)
 「ファーゴ」(コーエン兄弟監督作。コーエン兄弟の作品って興味津々のものばかりなんですが、まだ一度もビデオを借りてきてません)  

 「銀嶺の果て」の紹介では笠原和夫の黒澤映画に対する名言を引用してます。  
 〈黒澤さんを始め、小国英雄、橋本忍、その他の脚本家で構成されるクロサワ・タクスフォース(機動部隊)の偉大さは、パターンの独創性にある。映画的な発想、思いつきの素晴らしさである。〉  
 映画ではありませんが、伊東四朗の舞台(三谷幸喜作、東京ボードヴィルショー公演「アパッチ砦の攻防」、三宅裕司とのコント大会)もムショウに観たくてたまりません。  

 というわけで、「コラムの逆襲」と「コラムは誘う」の2冊、お借りした本を返却する際に一緒に送りますので、どうぞお楽しみに。

                                        草々





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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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