SMAPの今後についてメディアが大騒ぎしている。
 解散するにはいい機会じゃないかと思った。なぜこれまで解散しなかったのか、独立しなかったのか不思議でたまらならなかったからだ。
 これはジャニーズ事務所所属の、特にベテランの部類に入るタレント全般にいえることだ。

 1970年代から80年代にかけて、ジャニーズ事務所のアイドルグループは人気を極めるとその後は解散、独立という道が当たり前だった。
 60年代のジャニーズ(現役時代の活躍を知らないが)に始まって、70年代のフォーリーブス、80年代のたのきんトリオ、THE GOOD-BYE、シブがき隊、光GENJI、男闘呼組。
 あおい輝彦や郷ひろみがジャニーズ事務所だったってことを知っている人は少ないのではないか。

 少年隊以降流れが変わった。メンバー3人は現在もジャニーズ事務所所属である。まあ、グループとしての活動はないけれど(と思う)。3人とも事務所の大御所だ。先輩にマッチがいるか。たのきん(田原俊彦、野村義男、近藤真彦)のうち、ただ一人事務所を離脱しなかった。
 SMAPからは完全にグループとしての活動、個人活動と並列させながら長年第一線で活躍している。これはすごい。TOKIO、V6、嵐が後を追っている。

 昔と比べて事務所の方針も変わったのだろう。
 だって、アイドルが夜や朝のニュース番組(ワイドショー)でMCを務めるなんてこと、考えられなかったもの。
 歌謡界(なんて今もあるのか疑問だが、いわゆるレコード業界、コンサート、ライブ業界)とTV、映画の世界を完全に掌握してしまった事務所なら別に他の事務所に移ることもないか。

 男性アイドル専門の事務所から歌手、俳優、キャスター等々、芸能全般を扱う総合芸能事務所へ、それこそ本当に21世紀の渡辺プロダクションになったというわけだ。タレントが辞めない、事務所に対する不服を言わないのはギャラの配分も申し分ないからだろう。
 あるいは子どものころから育てられているから、事務所への忠誠心が他とは断然違っているのかもしれない。

 とはいえ、もっと成長するためにぬるま湯にいてはいけない。
 SMAPの中でそう思える人がキムタクなのだ、本当のところ。
 だから、5人の中でただ一人残留を決めたという報に残念な気持ちがあった。
 そこらへんのことは「武士の一分」のレビューで触れている。

 長い間の下積みがあって、それがこの数年で売れたのならば、事務所としてこれまでの投資金額を回収しようとしていた矢先に独立だ、なんてことであれば、「これまで育ててくれたのだから」という言葉に得心できる。
 でも、SMAP はこの20年あまりトップで活躍していたわけで、事務所だって十分儲けさせてもらったのだから、これを機会に円満独立という道があってもいいと思うのだけど。

 どうでもいいことだけれど、今回の騒動で、一番動揺しているのはキスマイの連中なのではないか?

     ◇

2006/12/22

 「武士の一分」(丸の内ピカデリー)

 このままでキムタクはいいのだろうか? ずいぶん前から思っていた。別にSMAPのファンではないし、ジャニーズなんて昔の渡辺プロみたいで大嫌いだ。にもかかわらず考えてしまう。
 キムタクは本当にこのままでいいのだろうか?

 「anan」が毎年実施している〈好きな男アンケート〉では13年連続のトップ。TVドラマに主演すれば高視聴率で話題を呼ぶ。SMAPとして何曲もヒット曲を持つ。
 タレントとしてならそれでいいかもしれない。中居くんの立ち位置だ。俳優としてはどうだろうか。確かにドラマは高視聴率だ。しかし、10年後、20年後、彼のドラマは語られるだろうか。たとえばショーケンの「傷だらけの天使」、松田優作の「探偵物語」のように。
 たぶん、Noだ。語られるとしても、あくまでも〈高視聴率〉という側面でという注釈がつくと思う。

 俳優としてなら、同じSMAPの草なぎくんの方がずいぶんといい仕事をしている。ジャニーズでいえば岡田准一や長瀬智也に注目している。あと二宮和也。彼らはTV、映画、隔たりなく出演している。個人的に観たくなる作品だ。
 キムタクにこれまで本格的な主演映画がなかった、というのが信じられない。

 香港映画に出演してから事務所も方針を変えたのだろうか。
 山田洋次監督のオファーを受けて、藤沢周平原作の時代劇第三弾「武士の一分」に主演すると知ったときは、やっと〈作品〉作りに取組む気持ちになったのかと思ったものである。
 前評判も上々。かなり期待していた。
 平日の午後、映画館はかなりの混雑だった。年齢層は雑多。けっこう高いか。

 海阪藩の毒見役である三村新之丞(木村拓哉)は妻加世(檀れい)と中間の徳平(笹野高史)と質素に暮らしている30石の下級武士。かわりばえのしない仕事に嫌気がさし、剣の腕を活かした道場を開きたいという夢を持っている。
 ある日、いつものように毒見をした新之丞は激しい腹痛に襲われた。食した貝に猛毒が含まれていたのだ。命はとりとめたものの、高熱で3日間寝込んだ後、意識をとりもどした新之丞は新たな悲劇に見舞われる。失明していたのである。
 盲目では仕事はつとまらない。家名断絶を覚悟した新之丞だったが、藩主の温情により、これまでどおりの生活が保証された。
 妙な噂は、口かさのない叔母(桃井かおり)からもたらされた。加世が見知らぬ男と密会しているというのだ。
 外出した加世の後を徳平につけさせると、果たして用事を終えた加世は傍目を気にしながら茶屋に消えた。少し遅れて藩の番頭、島田(板東三津五郎)が入っていく。
 帰宅した加世を問い詰めると、あっさりと白状した。家禄を失う夫を心配した加世は、叔父叔母たちの勧めもあって、藩の有力者で、子ども時代から顔見知りだった島田に口添えを頼んだ。その代償に加世の身体を求められたというのだ。それも一度ではない。
 すぐさま加世を離縁した新之丞は、島田が実際には藩主に何の口添えもしていないことを知る。新之丞は島田に果し合いを申し出た……。

 観終わっての率直な感想は「それほどのものか?」。スクリーンに登場したのはいつもと変わらないキムタクだった。違いはちょんまげをつけているか否か。冒頭なんて「スマスマ」の寸劇か、なんて突っ込みたくなるほど。
 慣れてくると悪くない。が、全体を通して武士の威厳というか、侍魂は感じられなかった。たとえば、毒見役を誠心誠意つとめているのなら、まだわかる。ところが、仕事が嫌になってふてくされて女房に甘えるような男。それが夫の行く末を案じて、それも自ら望んで抱かれたわけではないというのに、その結果だけで判断して離縁を迫る。気持ちが迫ってこない。
 それに比べて檀れいは見事に下級武士の妻を演じていた。少し汚れた足の裏がリアルだった。中間役の笹野高史もいい。

 確かに映画は丁寧に作られているが、キムタクが主演ということで、スタジオ撮影が中心。開放感がなかった。
 卑怯な手を使って襲ってきた坂東三津五郎を、どうやって斬ることができたのか、わからずじまい。剣の師匠(緒形拳)に極意でも伝授されたのか?
 ラストも甘い。あっさりと離縁した後、また簡単に受け入れてしまうのはどんなものか。その間の妻への想いが、描かれているのなら、まだしも。

 館内が明るくなると左隣の中年夫婦の会話が聞こえてきた。「別に映画館で観る必要はないね」
 前の席の夫婦は、夫が立ち上がりながら言った。「2時間ドラマのようだったな」 
 右隣の老女は途中から涙を流しっぱなしだったのだけど。 
 
 山田監督の時代劇三部作の中では第一作の「たそがれ清兵衛」がダントツにいい。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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