本日フジテレビで放映された「ホワイトハウス・ダウン」、ある意味「ダイ・ハード」のパクリなのだ。「インデペンデンス・デイ」同様、アメリカ合衆国万歳!で味付けして。エメリッヒ監督はドイツ人なのに。

 この映画は試写会で観た。
 精神的なことで会社を休職しているときに。
 まあ、それなりの面白さ。

     * * *

 2週間前に図書館のDVDコーナーで見つけたので借りてきた「フライ・ダディ」。金城一紀の小説「FLY,DADDY,FLY」は岡田准一、堤真一主演で映画化された。韓国でも映画化されていたなんてちっとも知らなかった。

 日本の人気小説が日本だけでなく韓国で映画化されるのは珍しいことではない。貴志祐介「黒い家」がそうだった。韓国映画「黒い映画」はDVDで観た。残念ながら日本も韓国もあまり出来のいい映画ではなかった。

 しかし「フライ・ダディ」は違う。これは韓国映画に軍配が上がる。
 主人公の父親が訓練によって肉体改造していることが実感できるのだ。そのほか、原作を損なうことなく、映画のオリジナルを挿入している。

 本当なら、もう一度原作をあたり、日本映画の方もDVDで確認してから書くべきなのだが、そんなことしたら時間的にUPできないから、あくまでも記憶だけで書いていることをご了承のほどを。

     ◇

2005/06/28

 「FLY,DADDY,FLY」(金城一紀/講談社)

 岡田准一、堤真一主演により映画化されたと知って、あわてて借りてきた。「GO」の感動が忘れられない者としては当然の行為。作者も映画化作品に対する想いは同じだったらしく今度は自分で脚本まで書いているというのだ。これは期待するなというほうが無理だろう。「小説と映画のあいだに」で取り上げられるかもしれないという下心見え見えだな。

 鈴木一、47歳。大学時代の同級生だった女房と名門女子高に通う一人娘の3人暮らし。会社でも順調に出世して今は経理部長だ。一戸建てのマイホームも手に入れ、平凡ではあるが充実した毎日を送っていた。
 そんな彼が遭遇した人生一大のピンチ! 娘がカラオケボックスで暴行を受け入院したのだ。
 暴行した相手は都内の有名私立高校のボクシング部選手・石原。インターハイで二連覇している強者で、両親はふたりとも芸能人、病院へは教頭、顧問とともに訪れはしたものの、まったく反省の色がない。だいたい事件の詳細が要領を得ない。学校側も多くを語ろうとせず、この不祥事を金と力で解決しようとするだけ。娘の心の傷は大きく、怪我が完治しても固く口を閉ざす。
 家族の長として、男として失格……
 失意の彼が知り合ったのが、先の有名私立高校と同じ地区にある某三流高校の落ちこぼれ生徒たち。南方、板良敷、萱野、山下、朴舜臣(パク・スンシン)のグループだ。
 会社から一か月の休暇をもらった彼は喧嘩の達人、舜臣の指導のもと、激しいトレーニングを積む。喧嘩の極意をマスターした彼は、石原に素手による一対一の対決を申し込む……

 主人公と驚くほどシチュエーションが似ていた。
 まず年齢が近い。中肉中背。女房と高校生の娘の3人家族。娘は一人っ子を感じさせないしっかりタイプ。マイホームから駅まで約2キロ。バスを利用している。
 ま、こちらは同じ上場企業に勤めながらも出世にはほど遠く、自宅も狭い中古マンションで娘に勉強部屋も与えることができないだらしない父親ではあるのだけれど。

 物語はある種のファンタジーといっていい。仕事一途に突き進んできた平々凡々の男が、ある事件をきっかけにして激しく苦しいトレーニングを積み、やがて一対一の男の決闘に挑む。その過程で、その結果、男は何を手にするのか。
 普通に考えれば、〈そんなバカな〉と思えるような展開もあるが、シラけることはない。読み進むうちどんどん熱くなっていく。クライマックスの対決では手に汗握ることになるが、個人的にその前のバスとの競争のくだりに胸にくるものがあった。
 最終バスに乗るサラリーマンのグループ。いつも同じメンバー、互いに認識しているものの会話を交わしたことはない。彼もその一人だったが、トレーニングに励み脚力に自信をつけてからはバスに乗るのはやめ、走って帰ることにした。バスの発車とともに駆け出し、利用している停留所までどちらが先に到着するか競争するようになったのだ。普通に走ればバスが早いのは決まっている。しかしあちらには信号待ちがあるのだ。最初は全然かなわなかったが、いつのまにか肉薄するようになってきた。ついに勝利する時がやってくる。勝利した時の、それまで無関心を装っていたメンバーたちのはしゃぎようがいい。

「GO」同様、やはりこの作者は〈軽さ〉が身上だ。よみやすい軽快な文章、散りばめられた笑い。あっというまに読了してしまった。
 聞けばスンシンたち落ちこぼれグループが活躍する物語の、これは第2弾だという。第1弾の「レボルーションNo.3」もあたらなければなるまい。

     ◇

2005/07/17

  「FLY,DADDY,FLY」(丸の内東映)

 原作者(金城一紀)自身がシナリオを書いた映画(監督:成島出)はいかなるものか。かなり期待して丸の内東映会館に向かった。
 入口に立って看板を見上げると、「FLY,DADDY,FLY」の隣に昨日公開されたばかりの「姑獲鳥の夏」が。こちらも主演が堤真一である。片やダメ中年オヤジ、片や古書店の主にして頭脳明晰の陰陽師・京極堂=中禅寺秋彦役。まったくタイプの違う人物を演じるのは役者冥利につきるだろう。

 高校生の娘(星井七瀬)に理不尽な暴行を働き大怪我をおわせた有名私立高校ボクシング部の選手(須藤元気)。腕力だけで理性のかけらもないが、インターハイ三連覇に賭ける選手は学校にとって名誉なことであり、表沙汰にできないこの不祥事を金と権力で闇に葬ろうとする教頭(塩見三省)と顧問の先生(モロ師岡)の態度。彼らに怒りを覚えながらもただオロオロするばかりの父親(堤真一)
 俺は娘のため家族のため何をすればいいのだろう?
 娘の信頼を失くした男が、落ちこぼれ高校の5人組と知りあい、喧嘩の達人・スンシン(岡田准一)の特訓を受け、見事復讐を果たす物語。

 うまく小説世界を映像に転換させていた。ロケが効果的だ。この世にありえない架空の世界、といって絵空事ではない人間味あふれる世界が確かにスクリーンに存在している。
 冒頭、主人公のプロフィールを語るモノクロシーン、その語り口はかなり快調である。原作の設定を変え、毎日最寄駅まで妻(愛華みれ)が送迎していることに、その夜は娘も一緒に迎えにくることによって、家族構成を含め、その仲の良さをアピールする。
 続くもう一人の主人公スンシンの登場シーンでは瞬時にカラーとなって空の蒼さを強調する。映像処理や対比がいい。
 いいのではあるが、娘が3代目夏っちゃんこと星井七瀬であることと父と娘の仲が良すぎることに違和感を覚えた。星井七瀬だとどうにも幼すぎるのだ。もっと大人びた、クールな感じをイメージしていた(途中、友人役で渋谷飛鳥が出てくるが、彼女の方が個人的には適役だと思う)。それに娘と父親のやりとりがいかにも絵に描いたようで嘘っぽい。この年頃の娘はもっと父親に冷たいぜ、悲しくなるほどに。
 この違和感を最後まで引きづってしまった。

 もうひとつ、バスとの競争シーンで常連の乗客たちが最初から主人公を応援する態度に閉口した。主人公一人だけの達成感が、実は乗客一人ひとりの感動に結びついていたという原作の味がなくなった気がする。というか、一人で喜びをかみしめていた主人公、そこにバスがバックしてきて乗客、運転手が拍手喝采する、展開の方が感銘は倍増すると思うのだが。
 原作では主人公が家族には内緒で特訓を受ける。会社に行く振りをして毎日スンシンに会っているわけだ。もちろん仲間たちが家族に連絡をとって、肉体改造の食事メニューやらなんやら教えているのだが。直接には高校生と家族のやりとりは描かれなかったところが、対決前の夫婦の会話に活かされていた。映画は夫(父親)の勝利を願う妻や娘の姿を描いている。それも出来すぎていて肩透かし。
 スンシングループの面々が協力して、仲間一人を屋上からロープで吊るし、娘の病室のところまで降ろさせ、意思の疎通をはかるなんて行為は少々やりすぎではないか? トトカルチョのくだりは映画オリジナルでこれは納得。

 大木に吊るされたロープを腕だけで昇る特訓がある。何度も失敗し、やっと昇った主人公がスンシンと太幹に腰を下ろして対話するシーン。夕暮れ時で空には星が瞬き、眼下には住宅街が広がる。木に登った二人とバックの空や住宅街はたぶん合成だろう。この合成が素晴らしい。手前の二人を移動カメラで捉え、その動きに合わせてバックの空も色を変えながら動いていく。内容的、映像的に屈指の名シーンといえるのだが、やはり合成は合成なのである。開放感がいまひとつ感じられないところが悔やまれる。
 それからこれはないものねだりかもしれないが、特訓によって徐々に肉体がリフレッシュされていく様、頬がこけ精悍になったり、胸板が厚くなったりといった描写があったら、また違った感動、感銘を受けたと思う。

 というわけで、観終わってすがすがしい気持ちに浸れたものの、「GO」のように絶賛する気になれないのが残念で仕方ない。
 原作を先に読んでいなければ印象も違ったものになったと思うのだけど……。

 カメラワークの良さは特筆できる。キャメラマンは誰だろうと気になってエンディングロールで確認すると仙元誠三だった。


 【追記】

 その1
 決闘の前に主人公が娘の幼少時代のビデオを見るシーン。1年に一度くらい僕も無性に見たくなるときがある。キスしてと言うと喜んで唇を近づけてくれた。歩くときは必ず手をつないできた。それが今は――。

 その2
 主人公がジョギングしているコースにいつも登場する老夫婦の旦那さん、東映特撮ヒーロー番組でいつも悪役(の幹部)やっていた役者さんですよね? 懐かしかったなァ!

 その3
 協力のクレジットに〈太田市役所〉とあった。これは郷里の群馬県太田市のことだろうか? 何年か前に瀟洒な建物に建て替えられていているのだ。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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