昨日の休みは、午前中、新宿のB社へ。「僕たちの赤い鳥ものがたり」文庫化の打ち合わせ。
 終わってから、新宿ピカデリーへ。13時35分からの「劇場版 ウルトラマンX 来たぞわれらのウルトラマン」を鑑賞。テンポがいい。
 夜は日暮里サニーホール・コンサートホールの「立川流日暮里寄席」へ。
 始まるまで時間があったので駅前の「焼き鳥日高」で一杯やりながらの読書。中華料理の日高へは何度も利用しているがこの店は初めて。安い! 西川口にも一軒あるのでこれからは利用しよう。

     * * *

●BBQ 参加・賛歌・惨禍 2006/04/25

 5月にバーベキューをやろうという企画が部署内ですすんでいる。
 部員も少ないので家族同伴でという室長の提案。
 わが家で家族同伴なんてありえないよなあなんて思いながら帰宅して相談すると、案の定、かみサンは拒否。高校3年の娘なんか「どうしてあたしを誘うわけ?」なんて顔している。
「昔はお母さんがいなくてもバーベキューについてきたじゃないか」
 当時を思い出しながら孤独な父は嘆く。
「はあ? いつ?」
 きょとんとする娘。
「小さかったころだよ、保育所のときだっけ? 会社のみんなと奥多摩に行ったじゃないか」
「知らない」
「覚えてないのか?! Tさんちの××ちゃんと仲良く遊んでいたじゃないか」
 まったく覚えていない。なんてこったい! じゃあ、あのときのお父さんの勇姿も忘れたわけですか。

 今から10年以上前になる。出向していた会社の同僚で、一人娘のいるTさんが奥多摩バーべキューを企画した。参加者はT家族、僕と娘、同じ会社で働くKさん夫婦、僕の以前の部署の後輩N。あともう少しメンバーがいたような気がする。
 7月某日快晴の中、乗用車2台に分乗して出かけた。
 現地はすぐそばの川で水遊びができるし、何よりバーベキュー用の施設が整っている、バーベキュー初心者には最高のロケーションだった。洗い場、トイレはみな完備していた。
 小さな女の子二人の前で一番はりきっていたのが、K夫婦、特に旦那の方だった。子どもがいないからなのだろう、用意した空気舟に二人を乗せ海パン姿で川の中を行ったりきたり。それをやさしく見守るKさん。
 たらふく肉を食べ、ビールも飲んで、一休みしていた午後のこと。
 あるパーティーの年配男女が川原で、洗い物をしはじめた。先に記したように、そこはきちんとした水道水を利用した洗い場があるのに、だ。川原で食器を洗えば当然川が汚れる。
「なにやってんだよ!」
 あたりに怒鳴り声が響きわたった。見るとKさんの旦那が川原で洗い物をしている男女を注意しているのだ。しかし、男女は無視。もう一度注意しても聞く耳持たず。K旦那がキレた。
「てめぇら、ここは洗い場じゃねぇんだ、子どもたちの遊び場だぞ。自分らが何やってるのか、わかってんのか? えっ!」
 周り中の視線が男女とK旦那に釘付けになった。
 ここで、僕が「まあまあ」と間に入り、不心得な男女に対して下手に「この人(K旦那)、口が悪くて申し訳ないけど」とか何とか言い訳しながら、洗い場ではない旨説明していれば、その場は丸く収まったのではないかと今も考えることがある。
 K旦那は左官屋。いわゆるガテン系で少々口のきき方がぶっきらぼうなところもある。公衆の面前で、いい年した大人が若者に注意されたら、それこそプライドが傷つくだろう。本当なら男女のそばに行って、静かに語りかけた方がよかったのではないか。それを自分は寝そべったまま相手を叱りつけるというのはどんなものか。
 やりとりを見ながらそう思ったのは確か。
 しかし、このとき、こちらは大いに酔っぱらっていた。何をするのもおっくうだった。だいたい悪いのは男女の方なのだ。K旦那の言っていることは正論だし、そこに口をはさむのがはばかれた。それこそ旦那の体面を傷つけるのではと。
 とにかく男女はその場を立ち去った。「やれやれ」と安心したのもつかのま事件が勃発したのである。
 まさか、男女が仲間を連れて仕返しに来るとは!


●BBQ 奥多摩死闘篇~代理戦争 2006/04/27

 立ち去った男女の男の方が仲間数人を連れて再びやってきた。K旦那の前に立ちはだかる。ほとんどケンカ腰である。
 そこで、どんな言い争いになったのか、記憶が定かでない。
 危惧したように、K旦那の物言いが問題にされたように思う。今は完全に中年の部類に入ってしまう年齢になってしまったけれど、当時僕は30代前半。K旦那はまだ20代後半だったのではないか。相手は40代だった。あくまでも見た目のこちらの印象でしかないけれど。
 やったことは悪いけれど、年上の人間にあの言い草はなんだというのが相手の主張。対してK旦那はあくまでもお前らが悪いから注意しただけじゃねぇか、一貫してふてぶてしい態度を変えない。
 手を出したの相手だった。見事なストレートがK旦那の顔面に炸裂した。K旦那はそのまま地面に倒れた。立ち上がる気配がない。脳震盪を起こしたようだった。
 Kさんがあわてて駆け寄り、旦那を抱きかかえると名前を叫んだ。返事がない。泣き出すKさん。泣きながら手を出した男を激しくののしる。
「何よ! 暴力ふるうことないでしょ! ××が死んだらどうすんのよ」
 見かねて、そばにいた見知らぬ女性が仲裁に入った……
「おいおい、お前は何しているんだ!」と怒鳴られそうだが、K夫婦との距離は10m、いや7m…5mはあって、急な、まるで映画の1シーンのような展開(それもスクリーンで観たらぜったいベタと指摘されそうな)に思考が一時ストップしていたのだ。苦しい言い訳だけど。
 それに、バーベキューの主催者であるTさんの出方をうかがっていたこともある。参加者の中で一番年長なのはTさんなのだから。ところがTさんの声はしない。姿も見えない。
 こちらには未就学児童、それも女の子二人いることも心配のタネだった。何かあったとき誰が守るのか。視界の端にTさんの奥さんが見えた。しっかり二人の前に立ちはだかっている。少し安堵した。
 文章にすると少々長いが実際は数秒のことである。
 ……T夫婦に同情した見知らぬ女性が仲裁に入った。男は信じられないことに、この女性も振り払った。かなりの力だ。倒れる女性。
「何するんですか! この人は関係ないでしょう!!」
 グループの中で一番若いNが男に飛びかかった。蹴りが入れられ、そのまま地面につっぷした。
「このやろう!」
 誰かの声がして大乱闘が始まった……


●BBQ 頂上作戦~完結篇 2006/04/27

 あっという間に大乱闘が始まった。
 とにかくケンカを止めなくては! 僕もあわてて乱闘の中へ。Nに蹴りを入れた男の後ろにまわって、腕をつかんだ。
「ちょっと落ち着いてください! 暴力は止めろって」
 言い終わらないうちに誰かに襟をつかまれた。振り向くと、パンチが飛んできた。左頬に激痛。勢い余ってそのまま仰向けに倒れた。鼻のあたりにすえた臭い。怒りがこみ上げてきた。
「ざけんじゃねえぞ」
 右拳を握り、すばやく立ち上がった。そっちがそういうつもりなら、相手してやろうじゃねぇか。一気に戦闘モードに。
 が、脳裏に娘の顔が浮かんだ。いかん、いかん、オレが殺気だったら、この乱闘を誰が収めるのか? 
 立ち上がって、深呼吸。
 冷静さを取り戻して、リーダー格の男の前に立って腹の底から声を出した。
「暴力は止めろと言ってるのが聞こえないんですか!」
 大きな、四方八方に通る声には昔から定評があるんだ。あたりは瞬時に静寂さを取り戻した。
 リーダー格の男と対峙する形になった。
「なぜ暴力ふるうんですか! それも関係ない女性にも…… それこそいい年した大人が恥ずかしくないんですか」
 相手が言い訳する。それを否定する形でさらに大きな声で反論する。自分でも何言っているのかわからなくなっていた。
 そこにパトカーのサイレンの音。誰かが通報したのだろう、警察官がやってきた。
 驚いたのは、その後からやくざも様子を覗きに来たことだった。現場から少々離れた、百mくらい先で、ご一行さまがバーベキューを楽しんでいたのだ。
「なんだ? どうした? 何があった?」
 Tシャツの袖から青いホリモノの見える五分刈りの若い男が嬉々としてこちらに走って来るのが見えた。これにはビビった。もし警察が来ていなかったら、思うように現場を荒らされていたかもしれない。警察に通報した方に感謝したい。皮肉ではなく。
 リーダー格の男と僕が事情聴取を受けることになった。
 名前、会社名、年齢、住所の確認の後、乱闘の始まりからこと細かく説明する。確かに言い方は悪かったかもしれないけれど、悪いのは先方であること、先に手を出したのも先方であること。このときとばかりにしゃべりまくった。
 仲裁に入って災難にあった女性の証言もあって、全面的に先方に非があることになった。もう名前も忘れたが、どこかの会社の集団だった。
 負傷したT旦那は全治2週間だったか。もちろん治療費は先方持ちである。
 Tさんは僕が警察官と話しをしている最中に現れた。トイレに行っていて、状況をまったく知らなかったんだって。ハラホレヒレハレ。
 とんでもない事件に巻き込まれてしまったが、帰りの車の中は陽気そのものだった。用意したトランシーバーが役立ち、2台の車をつなぎあわせたというわけ。
 娘も初めてのバーベキューを楽しんだようだ。父親としてはそれだけで満足。
 帰宅する前に娘に釘をさした。乱闘事件のことを絶対にお母さんに言うなよ。余計な心配かけたくないから。というか、事態を知って怒られるのは僕なのが目に見えていた。
 父と娘が共有する秘密。
 後日、草野球の試合に娘を連れて行って、Tさんの娘に再会した際、「あのときは怖かったねえ」なんて話しをしているのを小耳にはさんだ。
 笑みがこぼれた。
 娘の目にはたった一人敢然と相手に立ち向かい弁舌をふるう父の姿が焼きついているはずだ。日頃はお母さんになんだかんだと叱られているお父さんもやるときはやるもんだと感じたに違いない。
 成長して世間の多くの娘が抱く父親への嫌悪感。僕は何とも思っていなかった。そう言いながらも娘の記憶の片隅にかつての父の勇姿が刻まれているはず。そう信じていたからだ。

 なのに、覚えていないだと! 僕は当時の思い出を詳細に語ってきかせた。やはり知らないと言う。声をあげたのはかみサンだった。
「そんなことがあったの? どうして黙ってたのよ!」
 しまったと思ったが後の祭り……
 しばらくショックから立ち直れそうにない。




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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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