もう昨日だけど、ブックカフェ二十世紀の1周年記念パーティー、大盛況でした。原めぐみさんのオールディーズ。「メグミーン!」良かったですねぇ。PAが素人で申し訳ありませんでした。
 きくち英一さん、役者だなぁ。懇親会の後半は、もう2ショット撮影会でした。二次会にもつきあってくださりありがとうございました。

160409


     * * *

●あの日、京浜東北線の修&亨(「傷だらけの天使」) 2006/05/10

 卒業と同時に郷里(秋田)に帰った大学の一年下の後輩がいる。8ミリ自主映画サークルで一緒だった。サークル内の人間関係に嫌気がさして途中で退部してしまったが、映画や趣味で話があって、その後も何かとつきあっていた。
 僕が4年時に監督・主演して、卒業後も独自に制作を続けたにもかかわらず、結局未完成に終わった「今は偽りの季節」のスタッフ、キャストとして最後まで協力してくれた後輩2名のうちの一人。郷里に帰って警察官になった。その彼が結婚すると聞いて秋田に駆けつけた。
 もう10年以上前の話だ。
 彼と仲が良かった先輩二人は飛行機で現地へ飛んだ。飛行機嫌いの僕は新幹線「こまち」を利用した。大騒ぎの披露宴に度肝を抜かれ、にもかかわらず同僚から「いまいち盛り上がりにかけるので何かひとつ」なんて余興を催促される始末。
 二次会に出席した後、先輩二人と居酒屋で地酒を嗜みお開き。
 翌日、昼からまたまた先輩たちと飲み始め、新幹線の僕は先に失礼した。
 秋田~大宮間、約4時間の旅。行きは気が張っていたからか、何とも感じなかった。帰りはアルコールが入っているから前日の疲れが一気にでた。4時間が長い長い。
 大宮で京浜東北線に乗り換えた。ドア横の席にすばやく座る。そのまま目をつむって下を向いていた。本当なら横になりたい気分。眠たい。後から大勢の人が乗り込んできた。かなりの混雑。
 電車が動き出すと、目の前に立つ若い男二人がやけにうるさい。一人がもう一人に対していろいろ愚痴っている。その声が神経に障る。しかしこちらは疲れているので、そのまま眠ったふりをしていた。会話からするとどうやら修と亨のような関係(註・「傷だらけの天使」)らしい。
 とにかく修の声がでかい。都会人の人情のなさを嘆き、亨に同意を求める。
「(嘆き・怒り・妬み)…なぁ、わかるだろう?」
「……」
「お前、そう思うだろ?」
「……」
「聞いてんのかよ!」
「はい」
「声が小さい!」
 その繰り返し。
 イライラしてきた。まわりの人たちも同じ気持ちだろう。雰囲気でわかる。
 大声で交わす会話の最中に、修のバックが僕の抱えていたスーツバック(?)に勢いよく触れた。
 カチンときた。
「うるせんだよ」
 反射的に言葉がでてしまった。相手にするな、心の声が叫ぶ。わかっちゃいるけど、後戻りはできない。
「どこだと思ってるんだ? ほかの乗客に迷惑だろうが」
 いいのか、そんな高飛車にでて?
「気持ちはわかるけどさ」
 ちゃんとフォローしてみる。
 まわりは気のないフリして成り行きを見守っている。やばい、どうしよう、喧嘩になるんじゃないのか? びくびく。
 と、そのとき。西川口~というアナウンスのあと、電車が止まりドアが開いた。グッドタイミング! そのまま飛び降りた。
 ホームに下りた僕は爽快感に酔いしれていた。渋い。まるで「日本侠客伝」の高倉健みたいじゃないか。映画観たことないけど。少なくとも車内の人たちにはそう見えたはずだ。
 階段に向かって歩き出した。後ろに殺気を感じた。振り向いた。
 修が仁王立ちしていた!


●あの日、京浜東北線の修と亨(「傷だらけの天使」) その2 2006/05/10

 修の上気した顔が目の前にあった。
 殴られる! 瞬間的に2つの選択肢が頭をかけめぐった。
 
 その1 脱兎のごとく逃げる
 その2 その場にひざまづいて謝る

 その1には自信があった。
 朝の通勤時、品川でJR京浜東北線から京浜急行8時30分発の羽田空港行きの急行に乗り換える。たまに時間がなくて、階段を一気に駆け上り、京急のホームに突入、電車に飛び乗ることがある。今でこそ、飛び乗った後、動悸が激しく肩で息している状態が長くなったが、当時はまだまだ元気だった。だいたい中学時代は短距離走の選手だった。高校のラグビー部では足の速さだけが取り柄だったし。
 その2の行為で、今、思い出した。
 Mr.sistertoothこと、姉歯元一級建築士は逮捕されたとたん坊主頭になった。カツラをはずし、わずかに残っていた髪も剃ったのだろう。その姿を見ながら、あのとき本当なら国会喚問に応じるはずだった哀しき元一級建築士を想像していた。
 議員の激しい追求にタジタジとなる元一級建築士。偽装工作したことを詫びて、ひざまづき、泣きながらおもむろにカツラをとる……。TV中継を見ている僕は叫ぶ。「辰巳さん!」
 少しは元一級建築士の印象が良くなったはずなのに。少なくとも全国「傷だらけの天使」ファンに対しては。
 ――「傷だらけの天使」の「殺人者に怒りの雷光を」のエピソードを知らなければ何のことだかわからないな。
 探偵事務所で一緒に調査員として働いていた仲間を殺された修と亨は、某組の仕業と誤解し、他のメンバーとともに、復讐しに組に乗り込む。組の若い衆とちゃんちゃんばらばらやっていると、そこに組長(加藤嘉)とともに事務所の上司(?)辰巳(岸田森)が登場。辰巳は、殺人事件が組の仕業かどうか、その真意を聞きに組長と差しで話しにきていたという。組とは無関係だと判明し、組長が辰巳にこの落とし前をどうするか尋ねる。神妙に組長の前にひざまづいた辰巳は、「申し訳ありません」と頭に手をやると地毛だと思われた髪をそっくりそのままはずしてしまうのだ。堂々の丸坊主頭。で、修の驚愕の顔と「辰巳さん!」の声が響く、というわけ。
 実相寺監督の劇場映画(「あさき夢みし」)の撮影で役柄にあわせて頭を剃った岸田森は同時期撮影の「傷だらけの天使」にはカツラ着用でのぞんでいた。スタッフ、キャスト、誰も知らなかったらしい。撮影中にカツラをとったのも岸田森のアドリブだったとか。そりゃ驚くよ。
 閑話休題。
 逃げるか、謝るか。どちらもプライドが許さなかった。
「何か用ですか?」
 恐怖を隠しながら、落ち着き払って尋ねた。
 修は急に僕の手を握った。心臓の鼓動が高鳴る。ええい、もうどうにでもなれ!
 修は僕の目を見ながら、相好を崩した。
「ありがとうございます! いや~あんな風に注意してくれるなんて。目が覚めました」
 はあ?
 東京に出てきて、人間不信に陥りどんなにつらい思いをしているか、そんな中にあってあなたの言葉がどれだけ自分に希望を与えてくれたか。うれしかったです。握手してください。
 修ちゃんは映画「ランボー」のスタローンのように、決壊したダムから噴出する水のごとく感謝の言葉を紡いだ。
 一気に全身の力が抜けた。何なんだ、この展開?
「わ、わかってもらえればいいよ」
 そう答えるのがやっとだった。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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