果実さん、検察庁じゃないよ、警察庁!
 電話では「警視庁ではなく警察庁だ」って言ったんですよ。

     ◇

2016/05/12

 「64-ロクヨン- 前編」(MOVIX川口)

 佐藤浩市主演で映画化されると知り、あわてて小説を読んだ。D県警シリーズのよくできた長編ミステリ。それにしても群馬が舞台なのに、なぜGではなくDなのか。まあ、いい。
 後半は、「犯人に告ぐ」と同じプロット、というと、ミステリ好きには展開がわかってしまうか。「犯人に告ぐ」の映画化作品も原作の味を活かした佳作だった。
 同様のことがこの作品にもいえるのではないか。

 映画化の前にNHKでドラマ化されている。主人公にはピエール瀧が扮していた。なかなかの力作だった。とはいえ、映画の方が、何かと心にしみる。胸にくる。まだ前編だけしか観ていないのだが、記者クラブと広報室のやりとりの緊迫感は特筆できる。

 アバンタイトルで涙があふれた。被害者家族の描写。娘が描いた絵、両親と手をつないだ自分~もうそれだけで娘を失う親の気持ちが伝わってきた。うちの娘もいつもあの手の絵を描いていたのだ。以降、演じる永瀬正敏がスクリーンに登場するだけで泣けてくる。事件に遭遇してからの彼の人生を想うと……

 キャスティングがまさに適材適所といった感じ。主人公の妻を演じる夏川結衣。今、こういう役をやらせたら右に出る者がいない。身元不明の死体がもしかすると娘かもしれないと夫とともに雪国を訪れて確認するシーン。正視できずに目を伏せる。リアルな母親像だった。
 部下を演じる綾野剛、榮倉奈々。もう一人、金井勇太が光る。
 読書の感想で映画化に触れ、本当なら佐藤浩市はミスキャストと書いた。一人娘との確執の原因が顔で、父親似を嘆き、言い争いの毎日。ある日家出してしまうのだ。

 二枚目の佐藤浩市をキャスティングすることで、この父親と娘の確執の要因が変更になるものと考えていたのだが、原作どおりの設定だった。
 膝を打った。あくまでも娘の神経が病んでいる、というのであれば十分成り立つのだ。

 同じ列に、いつもなら映画館に足を運ばないようなおばさんの二人連れがいた。50代の男がおばさんと書くのだから、世間一般ではおばあさんか。まあ、いい。映画が終わって、一人がもう一人に言った。
「後編も観なくちゃね」
 まさしくそう思わせる前編のラストである。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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