シネマート新宿で「若葉のころ」を観たあと、新宿に行けば必ず立ち寄る紀伊國屋へ向かう。
 本店の前に、道を挟んだアドホックスビルへ。いつも1階のCD、DVD売り場を覗くだけなのだが、珍しく2階のコミック売り場へ足を踏み入れた。単にトイレに行きたかっただけなのだが。
 復刻コーナーの棚で心臓が高鳴った。
 「男の条件」(集英社)があったのだ。

 小学校の4年か5年のときだったと思う。ちょうどそのころ将来の夢が漫画家になって、まず秋田書店の「マンガの描き方」という本を購入した。続いて石森章太郎の「マンガ家入門」。
 同じころ、漫画家志望の青年の漫画修行を描くコミックスの存在を知った。マンガ業界のスポ根ものといえばわかりやすいか。ジャンプコミックス「男の条件」である。原作・梶原一騎、画・川崎のぼるという「巨人の星」のゴールデンコンビの作品。

 即手に入れたわけだが、不思議なのは全2巻(上・下巻)のうち、第一部所収の上巻しか買わなかったことだ。その日、書店に上巻しかなかったのか、それとも、こずかいの関係で上巻だけにしたのか。どちらにしても、その後下巻を買わなかったことがどうにも理解できない。絶対続きが読みたくなるようなところで上巻が終わるのだから。

 主人公は絵の才能がある旋盤工の青年。彼がある用件で売れっ子漫画家の自宅を訪問するところから「男の条件」は始まる。この漫画家は、旋盤工を描くマンガがヒット中なのだが、背景に描かれた旋盤機械にウソがあって、それを指摘するためにやってきたのだ。
 その後、いろいろあって、主人公は売れっ子漫画家の友人である男に弟子入りすることになる。才能はあるのに、妥協をゆるさない性格から人気漫画家への道を閉ざしてしまった過去を持つ。
 この師弟が読者が渇望しているマンガを目指して切磋琢磨する姿を描いている。

 最初、この二人は紙芝居の上演で子どもたちの人気を得る。ところがショバ代をめぐって、やくざとのいざこざに巻き込まれる。
 ここで登場してくるのが、女子高でやくざの組長となっている娘と、その弟でひ弱でがり勉タイプの嫌味な中学生。
 「セーラー服と機関銃」より20年近く前に女子高生組長が誕生していたのである。このキャラクター、「巨人の星」の京子みたいだ。弟は「いなかっぺ大将」の西一だし。
 というか、主人公は星飛雄馬で、ライバルは花形そのまま。伴宙太だって同様の役柄で登場する。女子高生組長を支える老やくざは白髪頭の星一徹!

 実のところ、下巻(第2部)がどのような展開になるのかまったく知らなかった。気にはなっていたのだが、その後、「男の条件」を書店で見かけることがなかったのだから仕方ない。
 それが、第2部も所収されて全1巻になった「男の条件」が目の前にあるのだ。40数年ぶりの再会。この気持ちをどう書けばいいのか。

 一気に読んだ。燃えた。



otokonojouken
マンガ業界の常識、原作・〇〇、画・〇〇という表記、
本当は、物語(ストーリー)・〇〇、画・〇〇なのではないか?
「吾輩は猫である」をコミカライズするなら
原作・夏目漱石になると思うけれど





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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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