今朝の朝日新聞で瀬川監督の訃報を知った。
 松竹の「喜劇・〇〇〇〇」という映画をよく撮った監督というのが僕のこの監督に対する長い間の印象だった。
 著作「乾杯!ごきげん映画人生」を読んで、さまざまな発見があった。

 2012年だったか、13年だったか。女優の若葉要さんから電話をもらった。その日、瀬川監督のご自宅で、監督作品の上映とトークがあるので、いらっしゃいませんかというものだった。元気だったら喜び勇んで伺った。ところが、当時、重度の引きこもり状態。土日はフトンに寝たまま近くのコンビニに食事の買い物に行く以外外に出ることはなかった。人に会うなんてもってのほかだった。

 本当の理由なんて言えるわけがない。これから用事があるので、とお断りしたのだ。直接監督から話を聞けるいい機会だったのに。

 90歳。大往生だと思いたい。
 合掌。

     ◇

2007/05/26

 「乾杯!ごきげん映画人生」(瀬川昌治/清流出版)

 昭和40年代、日本映画にはタイトルの頭に必ず〈喜劇〉とつく映画があった。昔、海外のSF映画、それもB級映画のタイトルにSFという文字が冠されていた。それと同じ意味合いか。
 喜劇なのはわかっているのに、なぜ喜劇と称さなければならないのか、子ども心に不思議に思ったことがある。中学時代はバカにしていたところがあった。
 リアルタイムで観たことはない。しかし、1980年代前後、年末年始の深夜によくTVで放送されて、フランキー堺主演の旅行シリーズにはまった。こたつに寝そべり、みかんや落花生をほうばりながら見るには格好の映画だった。
 この一連の映画で瀬川昌治という監督の名を覚えたといっていい。プログラムピクチャーを量産した職人監督というイメージ。

 図書館に寄ったらこの監督が自分の映画人生を綴った「乾杯!ごきげん映画人生」があったのでさっそく借りてきた。

 松竹専属の監督だとばかり思っていたら、その始まりは新東宝だった。そこから東映、松竹と渡り歩く。
 日本映画の歴史に名を残す傑作、名作に数々の伝説や裏話があるように、一度上映されたら消えてしまうプログラムピクチャーも、同様の思い出話にことかかない。監督が愛着を持って語る話に興味はつきない。
 
 書名の元ネタとなった「乾杯!ごきげん野郎」なんて、梅宮辰夫、南廣、今井俊二(健二)、世志凡太がコーラスグループを結成して人気者になっていく話で、喜劇界の大御所のエノケンがゲスト出演している。まるで東映らしからぬ作品で、こういう映画、深夜に放映してくれないかしら。
 南廣は僕らの世代では「ウルトラセブン」のクラタ隊長で有名。世志凡太は浅香光代の旦那さんということは知っていたが、かつてフィンガー5を世に送り出したプロデューサーだったとは!
 東映では渥美清と組んで喜劇〈列車〉シリーズをものにし、これが、松竹の喜劇〈旅行〉シリーズにつながっていく。

 助監督時代に垣間見た、個性派俳優のぶつかりあい(鶴田浩二と三国連太郎)は、酒の席の話としては最高、しかし、現場にいたら息がつまるだろう。
 70年代は大映テレビの「赤い」シリーズ、80年代は「スチュワーデス物語」を手がけていて、ホント、プログラムピクチャー作家の鑑みたいな監督さんである。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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