今、DVDで「夜叉」を観ている。
 いしだあゆみが健さんの奥さんを演じている。
 ショーケンの奥さんを演じていたときもあったなぁ。
 本当の奥さんのときもあったし。

     ◇

●あなたならどうする? 2006/09/28

 昨晩京浜東北線の電車に乗っていたときのこと。
 夜の9時過ぎ、品川から乗り込んだ電車はかなり空いていた。座って本を読んでいると、どこからにぎやかな声が聞こえてきた。声ではなくTV番組の音声だった。車内では異質の音。かなり大きな音で車内にこだましている。
 読書をやめ、あたりを見渡す。音の出所はどこなのか? 
 最初はわからなかった。左右、前方、よく注意したがそれらしき光景は見当たらない。にもかかわらず音はすごく近くから聞こえてくる。
 ピンときた。僕が座ったのはドア横。座席とドア際に立つ人を隔てる壁(?)がある。その壁むこうを横からのぞきこむと…いた。若い男が床にすわって携帯電話のTVを見ていたのだ。
「ああ、携帯か」
 納得してまた本を開こうとして、ハタと気づいた。
「なんで、こいつ、生音でTVを見ているんだ?」
 たとえば、車内でウォークマン(今はiPodか?)をヘッドフォンなしで聴いていたらどうなるか。ヘッドフォンから漏れてくるシャカシャカ音さえ問題なのに。
 いや、シャカシャカ音だからイライラするのだ。たまに横にそういう人がいると思わず叫びたくなる。
「ヘッドフォンを取れ! どうせ聞こえてくるのならシャカシャカよりちゃんとした音楽の方がいい!!」
 話がずれた。携帯電話TVのことだ。
 若い男が電車の中でヘッドフォン(イヤフォン)をせずにTVを見ている。画面見ながらニヤけている。
「おい、ここをどこだと思っているんだ? 自分の部屋じゃないんだぜ。公衆の場。なぜそんなおおっぴらに音が出せるんだ? えっ!」
 僕は叫んだ。
 心の中で。
 それにしても誰か注意する人はいないのか。あ、オレが一番近い距離なんだっけ。周りを見渡す。携帯を熱心に見つめるOL、文庫本を読みながらチラチラと男を見る学生、無関心を装う中年サラリーマン。隣の女性は驚愕の眼差しだ。やはり僕なのか。
 もう一度奴の顔を見る。うーん、どこか正常でない雰囲気。注意して逆ギレされても困る。しかし、音はうるさい。注意すべきか否か。まるでハムレットの心境で数分間。
 と、電車は東京駅に到着。奴は降りていった。
 助かった。


●あなたならどうする? その2 2007/07/05

 問題は23時過ぎ、西川口の駅から自宅に帰る途中に起きた。
 ほとんど人通りのない歩道を歩いていると、若い女性とすれ違った。呼び止められた。振り返ると、女性が今にも泣き出しそうだ。
「あの、見ず知らずの人に、こんなお願いするのはいけないこととわかっていますが……」
 黒い縁の眼鏡をかけたスリムな女性。容姿は人並みプラスアルファ。
「身元を保証するものもないけど、月末にはきちんと返却しますので、九千八百円貸していただけないでしょうか?」
 泣いているけれど、涙は見えない。西川口の聖子ちゃんは何度も頭を下げる。
 金額を聞いて、ホッとした。
「それは無理です。今、財布にはそれほど入っていなんですよ。千円だったら貸せるけど」
 言ってから、しまった! と思った。千円でもいいから貸してくれと言われたらどうするんだ?
「……そうですか」
 聖子ちゃんはあっさり引き下がった。
 全くの赤の他人に1万円近くの大金をなぜ借りる? いやその前になぜ1万円ではなく、九千八百円なんだ? いったい何の目的で?
 いろいろ聞きたいことはあったが、深入りしたくないので、そこで回れ右した。
「別に返してくれなくていいよ、その代わり、これからちょっとつきあってよ」
 そう返答したらどんな反応を示しただろうか。いや、そのものずばり「やらせて」と迫ったら……。あっさりついてきたらそれもまた怖い。
 帰宅して家族に話す。
 かみサンが言う。「このまままっすぐ歩いていくと交番があるから、そこで借りたらいいって言えばよかったのに」
「交番は金を貸してくれないよ」すかさず答える。
「どうしてわかるの?」
「昔、借りようとして断られたことがあるから」
「いつよ? いつ?」
「もう結婚して、笹塚に住んでいたころ……」
「どうして?」
「それは、あの、ムニャムニャ……」
 かみサンと娘の冷たい視線を感じながら、猫ハウスを覗き込む。
「コムギ、また起きていたのか? どうした? 元気してたか?」 
 男同士だもんな、コムギだけだよ、オレの気持ちわかってくれるのは。


●あなたならどうする? 3.1 2007/08/23

 この前の日曜日、新宿でまぐま発行人と飲んだ後、帰宅したわけだが、ちょっと用があって、一つ手前の川口駅で降りた。改札口に向かっていると2、3m前を歩く女性のロングスカートが目には入った。小太りの20代の女性。ベージュのスカートの尻に赤黒い染みがあった。
 ピンときた。
 大昔、小学6年か、中学1年だったと思う。朝布団から起きた母親のパジャマの同じところに同様の染みを見つけて動揺したことがある。何も言えなかった。母親はそのままトイレに入って何食わぬ顔で出てきた。息子に見られたことを知っていたのか否か。
 前を歩く女性はスカートの汚れについて認識しているのだろうか? 認識しているのならいいのだがそうでなかったら? 誰か教えてやればいいのに。男のオレにはできない。ほら、そこ行く女性たち! 
 でも、ここで知らされてどうなるというのか。
 自分のことに置き換えてみる。社会の窓を全開にしていて、それを人の大勢いるところで教えられたら……。
 顔が真っ赤になるだろう。羞恥が一気に押し寄せるだけ。知らない方がいいのかもしれないな。
 二つの思いが交互に押し寄せ、ふと思った。赤の他人のことでどうしてあれこれ考えなければならないのか。それこそ恥ずかしくなって、早歩きして女性の横を通り過ぎ改札を抜けたのだった。
 以前にも似た状況があった。
 ずいぶん前のことだ。場所はJR品川駅。まだ改装前で、品川プリンスホテル側の改札と港南口を結ぶ地下通路があった時代だ。
 夜、飲んだ帰りだったか、ホテル側の改札に向かっていたら、前を行く女性がいた。後姿からかなりの美形だとわかる。服装にもセンスを感じる。ちょっと見とれていた。ヘアスタイル、うなじ、背中、ウエスト……。
 愕然とした。スカートがめくれあがり、下着が丸見えだったのだ!! 


●あなたならどうする? 3.2 2007/08/24

 前を歩く女性のスカートがめくれている。いや、めくれあがっている。
 パンツもろ見え。お尻全開。
 目が点になった。
 目の前の光景が信じられなかった。
 思わずあたりを見渡した。
「もしかしたらどっきりカメラかも?」
 どうみてもリアルじゃないのだ。
 スカートがずれ上がったというのではない。裾が腰のベルトに巻きついた、どうしてそーなるの!状態。トイレに行ってたのか? 自分で顔が赤くなるのがわかった。
 本人、まったく気づいていないから、颯爽とした歩きだ。それがまた哀しい。
 誰か注意する人はいないのか。というか、まだ誰も気がついてない。
 すぐにでも駆け寄って注意したくなった。できなかった。そのくらい恥ずかしい姿なのである。
 女性が改札を抜けた。とたんにあたりが明るくなって、黒のストッキングに包まれた白いパンティがくっきりと目に飛び込んできた。女性はそのまま右側の階段に向かっていた。駅構内はものすごい人だろう。完全なさらしものになってしまう。声をかけるべきか。いやその前に僕も同じ方向に行くのだから、このままでは下から覗く形になる。それこそ眺めはいいだろう。
 人間の、というより男の性とは不思議なもので、見えるか見えないかというのならわくわくしながら注視する。ところがあまりにあからさまだと逆に躊躇して目をそむけたくなる。後ろからついていきたくない。そう思って、歩みを止めた。
 すると後からやってきたスーツ姿の若者たち(確か3名だった)が僕を追い越しながら、その光景を見つけたのだ。
「なんだ、あれ?」
「マジかよ」
「わぉ!」
 若者たちは階段を上がっていった。階段はもしかしたらエスカレーターだったかもしれない。
 いてもたってもいられなくなった。回れ右して、構内に続く階段(エスカレーター)とは反対の、地下通路へつながる階段を駆け下りたのだった。
 だからその後のことはまったく把握していない。
 スケベである。若い頃は日活ロマンポルノを映画として観ていなかった。(今は違う。だから後悔している。まあ、年齢を重ねなければわからなかったことでもあるのだが。)
 アダルトビデオは今でもたまに見る。かつてアテナ映像の代々木忠作品に夢中になり、一時V&Rプランニングのバクシーシ山下に浮気した。今はBABY ENTERTAINMENTか。
 にもかかわらず、目の前の光景があまりにあからさまだと逆に目をそむけたくなる。
 嘘ではない。
 実は、もっととんでもない光景、女性のあられもない姿を真近にして、始終顔をふせていたことがあるのだ。興味とは逆に。
 ある土曜日の午前中、それは京浜東北線の車両で起きた。


●あなたならどうする? 3.3 2007/08/27

 某社から今の会社に出向してすぐのことだったから、十数年前になる。
 当時は毎月土曜日に管理職を対象にした全体朝礼というものがあった。社長、会長のスピーチを拝聴する1時間のためだけに、出社するというのもどうかと思っていたが、まあ、あのころは業績は最高潮、社長の言葉は神の声だったから、役員以下管理職はありがたくスピーチを拝聴するのだった。
 もちろん、管理職でない僕には関係ない行事。にもかかわらずI部長のお供として参加させられていた。
 後に、部署が異動になって、この朝礼の企画運営、司会を担当するなんて思いもよらなかった。このときは土曜日でなく平日に変更になっていたけれど。
 その日。朝礼が終わって京浜急行で品川へ出た。JR京浜東北線に乗り換える。
 1時間の朝礼のために往復3時間かけるのだ。いつもなら、有楽町で降りて映画を見たり、銀座の本屋散策にいそしむのだが、この日はそのまま西川口に向かっている。何か予定があったのだろうか。覚えていない。
 昼前。車両にはほとんど乗客がいなかった。
 それまで本を読んでいたかうたた寝していたか、気がつくと上野駅を通過したところだった。正面を見ると前の席に座る女性の行動が目に入った。年齢は20代後半から30代前半といった感じ。容貌は、これまた覚えていない。長いスカートをはいていたことだけ記憶にある。家庭用のビデオカメラを手にしていた。ファインダーを覗き、ホワイトバランスを調整したりフォーカス合わせたりしている。少ししてカメラを座席に直置きした。カメラをそのままにして、反対側の、僕が座っている席に移る。僕が座っているのは席の端、ドアのところ。女性は真ん中よりちょっと向こう寄りだった。
「何しているんだろう?」
 カメラを見た。レンズは女性が座った位置に向いている。
「撮影しているのか? でもなぜこんなところで?」
 女性は両足を座席を乗せた。左右に大きく開いた。
 あわてて視線をそらした。
「な、な、なんだこれは!」
 目はカメラの方を集中しながら、意識は完全に女性に飛んでいる。
 スカートの中を撮っている。そういえば、パンスト穿いていなかった。もしかしてノーパン……?。
 いったい中はどうなっているのか? 限りない妄想が頭の中をうずまきはじめた。
「AVの撮影だろうか? この女性、AV女優か?」
 確かに女優のセルフ撮影なんていう作品もあることはある。女性は近くにいる僕なんて眼中にないかのようにさまざまなポーズをとりだした。鼓動が激しくなった。ものすごく興味ある。なのに恥ずかしくて見られない。目をふせるしかない。でも、気になる! ほかの乗客がこの光景をどう見ているのか? 女性の反対側に顔を向ける。遠くに客が二人いたが、まったく気がついていないようだ。
 たとえば、一般車両で痴漢行為やファックシーンに及ぶAVを見ることがある。いや、あった。
 いつも思うのは、まわりの乗客がまったく気がついていないことで、それがどうにも不思議だった。どう考えても、視線に入っているはずなのに、皆われ関せずみたいな顔をしている。
 同じような状況になってわかった。見て見ぬフリをしているのだ、たぶん。きっと。至近距離であからさまな行為をされると思考とは別にある種の恐怖がともなって正視できない。
 単にお前に度胸がないだけじゃないか! 
 そうかもしれない。
 電車が王子駅に着くと、女性は何事もなかったかのようにビデオカメラをバックにしまって降りて行った。




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新井啓介
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神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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