本当は、前々々項の続きを書こうと思っていたのだが。

 とうとう大橋巨泉が亡くなった。
 がん闘病はずいぶん前から知っていたから、この日がくるのはわかっていたのに、本当にくるとショックだ。

 大橋巨泉は、永六輔と違って、愛憎相半ばしている。
 出会いは「巨泉・前武 ゲバゲバ90分」だった。この番組、見るとまるで宿題がはかどらなかった。巨泉と前武の掛け合い部分は生放送だったという。小林信彦がゲスト出演したこともあるというがまったく覚えていない。
 「11PM」はTVで同世代の人たちが言っているように、僕も最初親に内緒でこっそり見た。
 「お笑い頭の体操」は観ていなかったが、後番組の「クイズダービー」は毎週の愉しみだった。

 次第に偉そうな態度が気になりだした。
 番組内に登場する芸能人が年上だと○○さん、年下だと××くん、はっきり区分する。そうういところがどうも……。

 1978年の夏、日本テレビで始まった「24時間テレビ」で、欽ちゃんがパーソナリティ、巨泉さんは総合司会を担当した。
 番組終了時、募金は10億近くが集まった。これに対して巨泉さんはTVカメラを見据えて当時の政府にこう言った。「本来ならあなたたちの仕事なのだ」云々。
 確かにそのとおりだけれど、あなたに言われたくない。TVの前でそう思った。

 とはいえ、杉良太郎がそうであるように、自身が(司会を)担当する番組は皆面白かった。それはすごいなあと。
 政治家になったときは大いに期待したものだ。あっけなく辞めてしまって、裏切られた気分だった。

 前の奥さんがジャズ歌手のマーサ三宅だと知ったときは驚いた。ジャズ評論家なのだからあり得ることなのに。

 つらい闘病生活だったでしょう。
 「アッパレ!」です。
 
 合掌


 【追記】

2004/10/06

 「ゲバゲバ70年」(大橋巨泉/講談社)

 要は自慢話なんだよな。自分にどれだけ幅広い交友があるか。友人たちにはどんな肩書き、地位があってどれだけの力を持っているのか。その活躍ぶりで自分の立場を何気なく披露する。登場する仲間たちがどこの大学かなんてことも逐一付け加える。
 てなことを書くとみもふたもないか。TVで活躍中の時から垣間見られたことだし、その尊大さはマスコミに批判されていた。本人自身も自覚していることだ。

 僕が大橋巨泉の名前を知ったのは「巨泉・前武 ゲバゲバ90分」だった。小学4年の時から始まったこのバラエティ番組に夢中になった。ショートコントが休みなくつながる構成の妙に〈お笑い〉好きの僕は釘付けだった。当時はTVを視聴しながら宿題をする習慣があったのだが、この番組が始まるやまったく勉強に身が入らない。番組が終了したらしたで脱力感で勉強する気が起きない。罪作りな番組だよなと毎週感じていたことを鮮明に覚えている。

 TVの構成者からタレントに転身した同じような経歴、その絶大な人気によって大橋巨泉と前田武彦はライバル視されていた。そんな二人の共演も話題になった。僕は「オレがオレが」の唯我独尊的な巨泉より、物腰がおだやかで話し上手、頼れるおじさん的な前武が好きだった。
 にもかかわらず巨泉司会の番組はけっこう見ていた。代表作の1つ「11PM」、趣味の競馬をうまくクイズに取り入れた「クイズダービー」、お得意の海外情報満載による「世界まるごとHOWマッチ」etc。
 タレントとして好きでなく(はっきりいうと嫌い)ても、番組は面白かったからにほかならない(こういう類の人はほかに杉良太郎がいる)。

 本書を手にしたのも、TVの黎明期から業界で活躍していた著者ならではの視点によるTV年代記を期待したからである。そう意味では期待は裏切られなかった。興味深いことが満載だ。ジャズ評論家時代、マーサ三宅との結婚、離婚、構成作家の時代。

 著者の再婚相手(浅野順子)は日活女優の芦川いずみだとずっと思っていた。全然違かった。いわゆるパッと出のTVタレントで、自分のジャズバンドを持ちたかった著者が「11PM」でレギュラーにしようとしたところ、紅一点のヴォーカルが必要との局側の要請で彼女をメンバーに入れた。ところが彼女はジャズなんて歌ったことがない。つきっきりでレッスンしたことが縁になって結婚したという。
 それにしてもなぜ芦川いずみが大橋巨泉夫人だなんて勘違していたのだろう。(芦川いずみは藤竜也夫人でした)。巨泉の奥さんは日活女優でとてもかわいかったんだ、結婚してすぐ引退しちゃったんだけど、なんてことを昔誰かから聞いて、日活女優でかわいくてすぐ引退してしまった女優=芦川いずみと思ってしまったのかも。
 調べてみたら浅野順子は鈴木清順監督の「けんかえれじい」で高橋英樹と共演しているのだが、このことについては本書ではまったく触れられていない。

 自分の番組に対する意気込み、その度合いは尋常ではない。それは「世界まるごとHOWマッチ」に触れた文章でよくわかる。もともと構成者からタレントになったのだから当たり前なのかもしれないが。

 「コクがあるのにキレもある」のコピーで有名になったジャンボ尾崎と青木功共演のアサヒビールCFが、実は著者とビートたけしの共演で放映だったとか。たけしのフライデー暴行事件で急遽青木・尾崎バージョンに変更になったことを初めて知った。

 何週間か前にTBSラジオの永六輔の番組にゲスト出演していた。男特有の前立腺の病気の疑いがあって、その検査の話題だった。
 トイレが近いという話から子どもの頃オネショの用心として母親から夜中に目が覚めたら必ずトイレに行くように厳命された。そのいいつけを70歳になった今でも実行している。母親の影響力ははかりしれない、なんて今は亡き母親の思い出話に厚顔無人なタレントの新たな一面を見たような気がした。
 この母親への強い愛情は本書でもうかがうことができる。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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