承前

 ZZのトーク&ライブが終わって、新橋駅で電車に乗った。23時過ぎ。帰宅するときはいつも京浜東北線の車両の後ろから5両め、一番うしろのドアに乗り込む。西川口駅では降りれば改札口に向かう階段が一番近いからだ。
 車両がけっこう混んでいたので4両目との連結部分の扉部分へ。扉にもたれかかって本を読み始めた。

 次の駅で中年男が乗り込んできたのだが、その際、4つめのドアのすぐそばに立っていたサラリーマンにぶつかったらしい。どこがどうあたったのか、僕の位置からは見えなかったのだが、サラリーマンが中年男に文句を言う。かなり高飛車な態度な物言い。案の定中年男はあやまらないで言い争いが始まった。

 白髪まじりのサラリーマンと短髪角刈りのガテン系男。
「その言いぐさはなんだ」と男。「自分の方が若輩者だが、無礼を働いたのはあなたなのだからあやまれと言っているんだ」とサラリーマン。
 そのやりとりが延々と続く。乱闘になるのではとハラハラしていたのだが、お互い手はださない。

 年齢が問題になって、男が言った。
「じゃあ、あんたいくつなんだい、俺は昭和40年生まれだよ」
 サラリーマンが応えた。
「……昭和39年」
 男がドヤ顔になって叫んだ。
「はあ? 俺の方が若いじゃねぇか」
 男の態度が急変した。俺の方が若いを連発する。サラリーマンが何か言うが、聞く耳持たない。
 電車が駅に到着して、ドアが開くとサラリーマンが出ていった。どうやら隣の車両に移ったようだ。

 僕は途中から笑いをこらえるのに苦労した。
 男のあのドヤ顔はなんだろう。学生時代、それも小学生や中学生ならともかく、成人してからの1歳違いが何だというのだ。
 五十歩百歩じゃないか。
 目くそ鼻くそを笑う、とも言うな。




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kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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