前項に簡単な感想を記した映画「淵に立つ」に少し関係する。一人娘の病気ということで。

     ◇

●略してワンダバ! そして…… 2006/10/30

 昨日は劇団スーパー・エキセントリック・シアターの第44回本公演「ナンバダ・ワールド・ダンシング」の千秋楽(マチネ)を鑑賞した。

 まぐま関係者によるSET本公演鑑賞。今年で何回目になるのだろうか? 冬が来る前の恒例行事となった感がある。
 ヒップホップのルーツを探るためニューヨークからジャマイカ、アフリカへ飛ぶダンサー4人のハチャメチャ物語。男3人、女1人のダンスユニット。ヤマト、ヤヨイ、ジョウモンという名前は大和時代、弥生時代、縄文時代なのか。とすると紅一点の名前は何だっけ?
 
 まさに歌あり、ダンス(ブレイク、タップダンス等々)ありの世界。SETが標榜しているミュージカル・アクション・コメディの、ミュージカル部分を大きくフィーチャーさせた内容で大満足だった(もちろん昨年までも満足していたが、どうしても笑いとアクションに重きがおかれていて、ミュージカル的には?があった)。その分、お楽しみの三宅&小倉のかけあい部分が縮小してしまった気がしないでもないが。まあ、それは「熱海五郎一座」で満喫しろということか。

 日本のタップダンサーのトップをいくHIDEBOHのタップで会話するコーナー、長いタップのわりに、通訳がたった一言ですませてしまうというギャグはその昔のクレージーキャッツの「おかゆ」ギャグの応用。
 ハナ肇が病気の父親に扮し、娘のピーナッツが面倒をみているシチュエーション。初めて見たのは元旦のTV中継だった。ヨボヨボのハナ肇が長い長い意味のわからない台詞をしゃべり、それをピーナッツの二人が通訳する。それを聞いて第三者(見舞客?)が「あんな長くてそれっぽっちか!」。大笑いしたなあ。そんなわけで、オチはわかっていたけれど、ギャグの再生がうれしかった。

 クライマックス、幕が一瞬のうちに落ちる様に感動してしまった。もちろん幕が落ちた後の迫力は圧巻だ。まさに視覚と聴覚に訴える作り。迫力がそのまま心に響く。これも一つのアクションだ!

 芝居の後、森本さんのお店で飲み、帰宅。かみサンが録画していた「Dr.コトー診療所2006」を観ていた。このドラマ、個人的にはまったく興味がない。部屋着に着替えながら、何気なくTVを見ると、コトー医師が少女を診察している。その診断結果「特発性血小板減少性紫斑病です」に反応した。
「嫌な展開……」
 かみサンもひとりごちる。

 特発性血小板減少性紫斑病。簡単にいうと、血を凝固させる血小板が極端に少なくなり、全身に青あざができる症状だ。特定疾患の一つ。
 現在高校3年生の娘が、小学2年生だったとき、突然この病気に襲われた。
 あるときから足や腕に青あざが目立つようになった娘。原因がわからない。顔には血管の青い筋も見えてきて、何かおかしい。病院に行って、即入院となった。普通15万なければならない血小板が5千以下になっていると聞いたときは目の前が暗くなった。もし何か要因で出血でもしていたら……


●乱太郎とポケモンの日々 2006/10/31

 娘が特発性血小板減少性紫斑病で入院する前日だったと思う。家族でディズニーランドへ行った。
 確か2回めか3回めのディズニーランド。ピューロランドは初めてにもかかわらず、途中でもういいとゴネだした娘だったが、ディズニーランドは大のお気に入りだ。娘の満足顔に親もついつい夢中になってしまう。病気のことなんてまったくわからなかった。これまで同様大騒ぎしながら好きなアトラクションを駆け巡った。
 夕方、ビッグサンダーマウンテンを娘と二人で楽しんで、外で待っているかみサンのもとに駆け寄った。後にかみサンはこう述懐した。
「二人が手をつないでこちらに駆けてくる姿を見ながら思ったの、幸せってこういうことをいうのねって」

 夫婦は病室で囁きあった。もしあのときアトラクションに乗っている最中に何かあって、怪我をしていたら、取り返しのつかない事態をむかえていたかもしれない、と。あの日のことを思うと冷たいものが背筋に走る。

 入院して直ちに血小板を輸血した。これでとりあえず5千という極端な数値からは開放された。続いて、血小板の減少を食い止める、1本ウン万円する高価な、ガンマ・グロブリンの投与。特定疾患だから実際にはそれほど懐には響かないけれど。数値はすぐに正常にもどる。ところが翌日にはまた減少。毎日血液検査があり、血小板の数値で一喜一憂していた。
 同室には喘息を患っている子どもが多かった。普段は「どうして入院しているの?」という感じがだが、発作が起きると見ていられない症状になる。

 結局血小板の減少は止まらない。副腎皮質ステロイド剤投与に切り替えることになった。
 かみサンが浮かない顔をする。理由を聞くと「ステロイドには副作用があるのよ」と言う。顔が異様にむくんでしまうのだ。そういえば、中学時代、ネフローゼで長期入院していた同級生が退院してきたらまるで別人のような容貌になっていて驚いたことを思い出した。あれもステロイドの副作用だった。女の子なので、この点非常に心配したのである。
 ところが不思議なことに、副作用はほとんど見られなかった。確かに当時の写真を見ると、少し太ったかなという印象はあるのだが、驚くほどのものではなかった。娘の体質がステロイドにうまく適合していたのかもしれない。

 当時、娘はアニメ「美少女戦士セーラームーン」を卒業して「忍たま乱太郎」に夢中になっていた(脚本が、かの浦沢義雄なので父親もかなり楽しんでいたりして……)。TVだけではあきたらず、原作の「落第忍者乱太郎」(尼子騒兵衛)のコミックスも集めていた。新刊が発売されると、病院へ行く前に買い求めたものである。ポケモンもちょうどブームになった頃で、新しいソフトがでると、日曜日に街のおもちゃ屋、ゲームソフト販売店を探し回った。

 娘はその後何度か入退院を繰り返し、完治したのは中学1年だった。親としては血小板の数値による一喜一憂がなくなったことに心底ホッとした。

 特発性血小板減少性紫斑病というと、そんなわけで、娘の入院で右往左往した日々が乱太郎とポケモンとともに思い出されるのだった。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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