その5から続く

 樋口真嗣監督、庵野秀明総監督が発表され、ゴジラの身長がギャレス版ゴジラ(107m)を超える118.5mに設定されたことを知ってうんざりした。なぜゴジラをそこまで巨大にする必要があるのか。そこまでアメリカに対抗するのか。
 後で考え直した。身長118.5mは、初代ゴジラへのオマージュなのではないかと、と。54年版「ゴジラ」に登場するゴジラの身長はもちろん50mだが、品川に上陸したとき、映像上は100mを超えていると「円谷英二の映像世界」の中で実相寺昭雄監督が書いていたような気がする。

 予告編第一弾が劇場で流れるようになって、そのあまりの陳腐さに失望した。(ゴジラが出現して)街を逃げ惑う人たちを描写しているのだが、画が安っぽく感じたのだ。
 ところが予告編第二弾で印象ががらり変った。オリジナルの音楽をバックに激しいカット割りで綴られる群像劇に「これは叙事詩だ!」と膝を打った。

 期待は裏切られなかった。
 総監督が庵野秀明であることから、「エヴァンゲリオン」との類似点を指摘する感想を目にして少し不安を覚えた。主人公もしくはほかの誰かの精神世界を深く追求する内容になっているのかと思ったのだ。実際は構図やカット割りのことだった(一部音楽の流用もある)。
 TVシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」を観たとき、この感覚で怪獣映画ができないものかと願っていたから、うれしくてたまらなかった。長年の願いが実現したのである。快哉を叫ぶのは当然のこと。

 「シン・ゴジラ」は、ある意味84年版「ゴジラ」のリメイク、リボーンといえる。
 ゴジラ(と名づけられた巨大生物)が原発のメタファーであること。ゴジラが日本に上陸し東京を破壊すること。その都市破壊と人間との攻防がクライマックスになっていること、ゴジラが撃退されること。
 すべてのゴジラ映画に目配せしている点でも特筆に値する。(国内のシリーズだけでなくハリウッド版のゴジラ映画に対しても)
 冒頭の、ゴジラの幼体が上陸して進化しながら蒲田の街を破壊し海に戻っていくシークエンスは、もろ54年版「ゴジラ」に則っている。
 その進化を第一期~第四期に区分して、さももっとなことを劇中で解説しているが、なに、庵野さん流のお遊びじゃないのか。

 第一期 昭和ゴジラシリーズ
 第二期 平成ゴジラシリーズ
 第三期 ミレニアム(ゴジラ)シリーズ
 第四期 シン・ゴジラ

 というような。
 考えすぎか。

 冒頭の、プレジャーボートで東京湾に出て行方不明になった博士の名前が牧悟郎。写真は映画監督の岡本喜八。岡本映画の常連俳優だった岸田森は『怪奇大作戦』で牧史郎という人物を演じていた。し(四)の上はご(五)というわけでこれも庵野総監督の遊びだろう(と思っていたら、『ゴジラ(84年版)』で田中健演じる新聞記者の名が牧吾郎だとある人から教えられた)。

 幼体ゴジラが上陸するシーンはまさに東北大震災を思い出させる。進行方向のみ建物が破壊されている様は、ギャレス版『GODZILLA ゴジラ』からのイタダキだろう。あの映画で蘇ったムートーがラスベガスの街を破壊しながら進むショットは初めて見る光景で、まさに〈コロンブスの卵〉だった。

 『ゴジラ』が原水爆実験、太平洋戦争の災禍をバックに構築された怪獣映画だとすれば、『シン・ゴジラ』は、東北大震災、原発問題に真正面から切り込んだ画期的な怪獣映画である。
 会議シーンが長すぎるとの評を耳するが、個人的にはこの会議シーン、閣僚たちのやりとりがとても興味深かった。
 巨大生物の上陸はないと発表するやいなや、易々と上陸されてしまったシークエンスなんて、福島原発が津波で破壊された直後の政府発表の戯画そのもの。
 あのときもこんな風に議論されていたんだろうなとニヤニヤしていた。彼ら、本当に目の前の現実に真摯に対応していたのか否か(〈以下略〉のギャグは笑える)。

 政府御用達の学者3人は、アニメなら西部邁、宮崎駿、大槻義彦のソックリさんになるのではないか。役者でないことはわかるが、どこから連れてきたのだろうと思ったら、皆映画監督なんですね。犬童一心、原一男、緒方明の3氏。犬童監督、原監督の姿を初めて見た。(これも、富野由悠季、宮崎駿、高畑勲を意識してのキャスティングだとのこと。本当に?)

 この項続く




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こんな怪獣映画を待ち望んでいたんだ! 「シン・ゴジラ」 その7
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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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