その6から続く

 特撮に目を瞠った。
 本当の街に巨大な怪獣が出現した。それもまっ昼間だ。CGだから、デジタルだからと言うのは簡単だが、たぶん一部はミニチュア撮影もあるのだろう。鎌倉に上陸したときの瓦の描写。しびれた。
 こちらに向かってくるゴジラを移動カメラで捉えたショット。「ガメラ2 レギオン逆襲」の応用だが、ゴジラの巨大さを的確に表現していた。
 自衛隊(ヘリ、戦車等)の対ゴジラ戦のなんというリアル感。ゴジラが通常の兵器にびくともしない様子が見事に描かれている。
 そして、『ゴジラ』のオマージュでもある、夜の大都会を炎で焼き尽くすシークエンス。これまでのゴジラのイメージを打ち破るショットの数々。
 ゴジラの口が横に開くのは、アメリカ映画のクリーチャーを意識してのことだと思う。
 口から吐く白熱光のイメージも大胆だ。口からだけでなく背中からもいく筋ものの光線が飛び出す。
 その圧倒的な映像に涙がでてきた。
 たぶんに音楽の影響があると思う。僕が勝手に「ゴジラ 憎しみと怒りのアリア」と名づけた曲だ。
 蒲田の街を蹂躙するシーンに流れた曲も素晴らしい。これは購入したサントラCDを聴いてからわかったことだが、弦楽四重奏で同じ旋律をチェロ、ビオラ、第二ヴァイオリン、第一ヴァイオリンと順に弾いていくところなんてゾクゾクしてしまう。
 とにかく鷺巣詩郎の音楽が特筆できるのだ。
 だからこそ、この映画では伊福部昭の音楽を使ってもらいたくなかった。もう完全に過去のゴジラとの関係が切れたのだから。まあ、大方のゴジラファンには同意してもらえないだろうけれど。
 特撮は、ギャレス版『GODZILLA ゴジラ』と比較しても、まるで遜色なかった。ドラマは凌駕してるわけだから、そりゃ3回以上劇場に足を運びたくなるさ。

 劇場鑑賞3回目から、一番の楽しみはヤシオリ作戦のシークエンスになった。作戦開始が宣言されると、「宇宙大戦争」のマーチに乗って新幹線がゴジラに向かって走っていき大爆破するショット。まさに〈新幹線大爆破〉!
 伊福部昭の音楽は使ってほしくなかったと書いた手前、気が引けるのだが、燃えるんだからしょうがない。
 しかし、ここからドラマはマンガになる。
 ヤシオリ作戦の前線基地が科学技術館の屋上。庵野総監督、どこまで『太陽を盗んだ男』が好きなんだ!?
 映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の、第3新東京市が朝を迎えるシーンで『太陽を盗んだ男』の音楽(「YAMASHITA」)が効果的に流用されている。見事に映像に合致していたのだから何も知らなければこのシーン用に作られたオリジナル曲だと思うだろう。
 『太陽を盗んだ男』は中盤まで実にリアルに進展する。ところが警察の手に渡った原爆を主人公が取り戻すところから一気に展開がマンガになってしまうのだ。
 『シン・ゴジラ』も同様の展開になっていて、ヒロインにまるでリアリティがないところも似ている。まあ、石原さとみ演じるカヨコ・アン・パタースンは、『新世紀エヴァンゲリオン』(ヱヴァンゲリヲン新劇場版)の惣流(式波)アスカ・ラングレーの実写版だと認識しているのだが。
 マンガといって、別に批判しているわけではない。前述したとおりヤシオリ作戦のシークエンスは、特撮も含めて大好きなのだから。何度も観ても興奮できる!
 人間が、科学技術を結集してゴジラを倒す展開、それも非常にアナログな方法に手に汗にぎるのだ。突然のように新兵器が登場したのではしらけてしまう。
 『ゴジラ(84年版)』との違いはいくつも指摘できる。
 旬の俳優(女優)たちがカメオ出演しているが、きちんとドラマに溶け込んでいて嫌味にならない。

 米国との核爆弾をめぐる攻防、主要人物の一人、政治家の赤坂(竹野内豊)が言う「アメリカはもしゴジラがニューヨークに現れたとしても核を使用する」云々とは、「クローバーフィールド/HAKAISHA」のラストを指してるのではないか。あのとき米軍は謎の巨大生物殲滅のためセントラルパークに核爆弾を投下したのだ。
 東京都心への核爆弾投下に猶予を与えることにフランスが同意したのは、エメリッヒ版「GODZILLA」で、イグアナを巨大化させた核実験を断行した国にされてしまったことに対する意趣返しなのでは?

 観客の感情を高揚させる描写も秀逸だ。
 都心を焼き尽くされて怒り狂う主人公の矢口(長谷川博己)。仲間の政治家(松尾諭)に「まずは君が落ち着け」と諭されて水のペットボトルを手渡す。僕が矢口だったら、水は飲まず頭にかけるか、顔にぶちまけただろう。

 様々な人物が登場するが、まさに適材適所といったキャスティングだ。
 特に印象的だったのが、巨災対メンバーの高橋一生、市川実日子、塚本晋也。そして、内閣総理大臣臨時代理の平泉成。前述の松尾諭を含めて助演賞ものだ。
 紅一点の大臣、余貴美子はもろ小池百合子のイメージだ。化粧の仕方といい、ぜったい狙っている。

 これまでのゴジラシリーズ(平成、ミレニアム)はどんなにヒットしたとしても観客は限定されていた。いわゆるジャンル映画であり、対象は往年の特撮ファン、親子でしかなかった。『シン・ゴジラ』の客層はこれまでゴジラシリーズには足を運ばなかった年齢層が目立った。年配の男女、若い女性。一人で観る若い女性もいた。
 デートムービーになったといってもいいだろう。快挙である。
 大ヒットしたからといって、続編なんて期待していない。何やら意味深長なラストカットだったが、何、庵野さんのことだから、何も考えていないのではないか。
 続編を作るなら、別の怪獣映画、特撮映画を企画してくれないだろうか。
 個人的には『MM9』の映画化を期待する。




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Author:kei
新井啓介
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まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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