9日(金)、「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」出版記念と銘打って、「新井啓介〈昔撮ったキネマ〉蔵出し上映会Ⅱ」を開催した。おかげさまで好評で、「楽しかった」との感想をいただいている。
 19時に開始して2時間が上映、1時間が歓談(自己紹介)という流れで、予定の22時にぴったり終了した。

 今回、軽食のメインとなった寿司は自腹で用意。会費3,000円(書籍代700円を含む)以上の満足感を与えたいと考えたからだ。実は〆でごった煮汁(白菜、大根、人参、しめじ、なめこ、豆腐、厚揚げ等々の入った味噌汁)もあったのだが、話に夢中になってしまい、出すのを忘れた!

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 プログラム最初の作品「某オープニングビデオ」に続く「1973 バラキの夏」、ミュージッククリップ「今は偽りの季節」、「ミニミニアニメーション」の3作品。
 すべて、00年代前半にインディーズ映画の上映会に足繁く通った賜物である。上映会(懇親会)で知り合った映像作家の皆さんに、未完成のまま眠らせていた学生時代の作品を何とか蘇らせようと、編集をお願いして完成させたからだ。

 インディーズ映画製作の団体との出会いについては、かつてこんな風に書いている。夕景工房にUPしたレビューを「夕景工房 小説と映画のあいだに」に転載した。

     ◇

●僕はこうして朝めし前プロジェクトと出会った

 僕が勤めるゲーム会社では毎年年のはじめに〈初出式〉という恒例行事がある。企画、運営を担当する僕は、21世紀を迎えるにあたって、オープニングにどうしても『2001年宇宙の旅』のテーマ曲として有名なR・シュトラウス「ツラトゥストラはかく語りき」を流したかった。単に曲を流すのも芸がないので、「19世紀は小説、20世紀は映画、21世紀はインターネット+ゲームの時代」という内容の英文を音楽にあわせて加工した映像をでっち上げた。
 
 翌02年は赤字決算が続く会社が今年こそ蘇るという願いを込めて、本社ビルから〈火の鳥〉が宇宙に飛び出す絵コンテを描いた。社内のCGを制作する部署で映像を制作してもらった。出来上がったものは絵コンテのイメージとはかけ離れた、ゲーム画面とシンセサイザー音楽が組み合わさったデジタル感覚あふれる内容だった。これはこれでいい。でも次回(03年)は逆にアナログ感覚の映像にしたいと思った。  
 若手の社員一人ひとりにスポットを当て、スチール構成で会社の一日を描写する。BGMはビー・ジーズ初期のヒット曲「In the morning」。ちゃんとフィルムで撮影したスチールをビデオで撮影して、生の楽器を使用した〈暖かい〉音楽を当てる……なんて要は「小さな恋のメロディ」のオープニングをパクって自分なりの世界を作りたかっただけのこと。
 
 当初社内で制作するつもりが、いろいろわけあって外部に発注することになった。かといって予算はあまりない。そこに登場したのが友人紹介による自主映画出身の棚木和人氏だった。今は東映でカラオケの映像を演出している。アマチュアなら〈お友だち価格〉でお願いできるのにと思いながら、とりあえずお会いし、絵コンテを交えて製作意図を説明するともうその場でカメラマンのスケジュールを押さえる仕事の速さ。日の出を狙った早朝からの撮影も快晴にめぐまれ無事終了。音楽にあわせてカットを積み重ねる編集もお手のもの。こうして構想一年のオープニングビデオは完成したのだった。
 
 そんな棚木氏から自主映画上映会の案内をもらった。短編2編。〈朝めし前プロジェクト〉という棚木氏が参画している製作集団が制作した作品で、そのうちの『武士道/一期一会』に脚本、監督、出演しているという(棚木氏はプロの役者さんでもある)。  
 いくら短編でもSFと時代劇は無理があるのではと観る前は思っていた。どちらも舞台設定に金がかかる。貧弱な設定だともうそれだけで引いてしまう。自主映画の世界ではいかんともしがたい。  
 ところがこれが杞憂、余計なお世話だった。2作品ともこちらの抱いていたイメージをいい意味で裏切る内容なのだ。入場料500円(ということは1本あたり250円)の価値は絶対あると断言できる。アイディアにおいては制作費ウン十倍(?)の『Jam FilmS』の各作品と肩を並べるのではないか。
 
  『ハーレム エイジ』
 人類の大半を死滅させた〈細菌戦争〉後の24世紀、顔面を焼かれるという謎の連続女性殺人事件を追う女性捜査官の活躍を描く人見健太郎監督作品。  
 会場に到着するのが遅れて冒頭の5分を見逃している。一番の見せ場はこの5分に集中しているとのことだが、それでもかなりの面白さだった。ストーリーがどうのというのではなく、そのディティール描写にわくわくした。未来社会の小道具をCG技術を駆使して魅せてくれる。『ウルトラマン』シリーズの新作がまたTVでオンエアされるとして、レギュラー監督の一人になって、この感覚を生かせれば注目されるのに……。川崎郷太監督のテイストを感じる。

 『武士道/一期一会』
 明日の女優を夢見る若い女性(上村愛香)が主人公。ハリウッドでトム・クルーズ主演の時代劇『ラスト・サムライ』が製作されると知って、仲間たちでチームを作り、オーディション用のビデオを作るが、彼女だけが落ちてしまう。ハリウッドに飛び立つ仲間たちを空港で見送る傷心の彼女が遠く離れたメル友とメールのやりとりをしながら元気になっていくという棚木和人監督作品。  
 この中で紹介される2本のオーディション用ビデオが時代劇仕立てとなっている「武士道」と「一期一会」というわけ。  
 ヒロインと見知らぬ相手とのやりとりすべてが画面上にメール文字で表示されるのがユニーク。新種の無声映画とも言える。時代劇には英語のスーパーインポーズがつく。これがほとんど直訳の英文。  
 日本語と訳の英語のギャップに笑いはじけるかというとそうでもなく、ほとんどあり合せの衣装、小道具、セットで作った時代劇そのものがメインになるわけでもなく、でも何となく面白く、不思議世界に引き込まれ、ラストに鮮やかなオチがあって大いに納得させられた。

●『ボンネットバスブルース』のラストは『雨上がる』のそれより数倍よかった!

 朝めし前プロジェクト上映会第2弾。
 『ボンネットバスブルース』はプロジェクトの座長、佐久間孝監督作品。
 佐久間監督は長くカラオケ映像や歌手のプロモーションビデオを撮ってきた方。Vシネマも監督しているという。 
映画への夢絶ちがたく、ゆくゆくは長編映画を企画、制作したい、その前段階として短編映画の自主制作を、と仲間たちとプロジェクトを立ち上げた。それが朝めし前プロジェクトだ。  
 本来なら『ボンネットバスブルース』はプロジェクトのお披露目を兼ねた第一弾の上映会で上映される予定だった。しかし、納得のいく出来ではなかったらしくリテイクとあいなった。再編集と音入れを上映ぎりぎりまで行っていたとか。
 その埋め合わせに急遽制作されたのが『武士道/一期一会』だった。
 ハリウッド映画(トム・クルーズ主演の『ラスト・サムライ』)に出演するために仲間の俳優たちが作ったオーディション用ビデオ2本をちゃんとした劇映画にするべく、後撮の現代劇となかば強引に結びつけて1本の作品にしたのだとか。
あの奇妙な味はそういう事情があったのか。
 その『武士道/一期一会』の監督、棚木氏が『ボンネットバスブルース』の脚本を担当している。   
 妻に離婚を迫られているボンネットバスの運転手と、怪我によって野球生命を絶たれた男の邂逅と共感、再生を描く物語。いま流行りの〈癒し〉がテーマだろうか。  
 朝めし前プロジェクトの映画は、先の2本もそうだったが、事前にイメージしているこちらの想像をいい意味で裏切ってくれる。
この映画も絵ハガキチラシのポスターを見て、実はもっとクサい人情話を予想していた。ところが映画はほとんど台詞のない映像詩といった按配で、特に後半、その映像(夕焼け)の美しさに心洗われる(撮影・松尾誠)。
 台詞が少ない分、主役の運転手(町田政則)と男(村添豊徳)の顔(の表情)がモノを語ってくれる。うまいキャスティングだ。
運転手と男のやりとりはフランス映画『ヘッドライト』を彷彿させた。
……なんて『ヘッドライト』、観たことないんですけどね。
映像、カッティングから受けた印象は〈本格派〉というもの。佐久間監督、フィルムで撮りたかったのではないだろうか。  
 始めにボンネットバスありきの企画だから、仕方ないのかもしれないが、いやだからこそ、ボンネットバスの存在にそれなりの理由付けがほしかったと思う。
 映画ではなぜか運転手の目の前にバスがあって、勝手に運転してしまう展開。これはボンネットバスが走ってもおかしくない状況を考えるべきではないか。ボンネットバス自体が魅力的であるだけに、時代を昭和40年代に設定するなり、ボンネットバスが走る架空の田舎町を舞台にする等の工夫が必要だと思う。
 短編で予算に限りがあるから無理な注文かもしれないけれど。

     ◇

 棚木さんには「1973 バラキの夏」を、人見さんには「ミニミニアニメーション」の編集をお願いした。
 知り合ったときは、二人とも独身、それが今や生涯の伴侶と生活をともにしている。
 立場が逆になってしまった。
 ちなみに人見さんの奥さんは上村愛香さん、棚木さんの奥さんはあの……まあ、いいや。
 

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乾杯の音頭をとっていただいた、フォトジャーナリストの新藤健一さん(左)
締めの挨拶をお願いした、映像ジャーナリストの原渕勝仁さん(右)

新藤さんとは、BC二十世紀のイベント(写真展&トークイベント)で
知り合ったのですが、実は著書を何冊か読んでいるんです。
原渕さんは「ショーケンという孤独」で、ショーケンを密着取材した方
また、「ALFA MUSIC LIVE」のWOWOW放送に併せて、
赤い鳥復活のドキュメンタリーを関係者に依頼されたとか。
実現しませんでしたが。




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Comment
No title
こんばんは。

とても良い雰囲気の上映会でホントに羨ましいなと思ってしまいました。私も16~33歳の時期に自主映画をやってまして、20代の頃はいつか自分たちがオッサンやじいさんになってもこの趣味は続けたい、そして各が妻や子供や孫を連れてきて一緒に撮影参加したり打ち上げかねた試写会やったりみたいなことが出来たら良いなと夢想していたことがありました。

しかし最後は意見の相違から(「方向性の違い」という便利な言葉もありますけど(^_^;))大げんかとなりチームは解散、以来自主映画という世界からは遠のいたままです。

60くらいになったらそのときのメンバー集めて上映会みたいなのが出来たら良いんですけどね(^◇^;)
白黒show さん
深夜の高速バスで今朝大阪に到着しました。今、サウナで休憩しています。

そうですか、自主映画やっていたんですか。8ミリですよね? もしかして、特撮映画なんてのも撮っていたりして。

私も、大学卒業して、映画グループを組織しようと思ったことがあります。ただ、私の場合、プロになりたかったので、思っただけで終わってしまいましたが。

の仲間との上映会、それが一番盛り上がりますよ!
No title
高校時代に8ミリで三本撮りましたけどジャンルは刑事アクションx2 と学園SFx1という、ベタなラインナップでした。特撮やりたかったんですが予算面でどうしても無理があって手を出すことが出来ませんでしたね。ただ30数年前にウチの高校のOBさんがゴジラ映画を8ミリで撮りまして、そこには戦闘機のパイロット役で2カットほど出演させてもらいました(^_^;)

それ以後はビデオ作品ばかりを4本(こちらはSFパニックx1、刑事アクションx1、密室バイオレンスx1)撮ってそれっきりです(T^T)

くわしいことは拙ブログの方で紹介しておりますのでまたお時間のあるときにお目通しください。

http://4696show.blog45.fc2.com/blog-category-16.html

記事の古い方からその話になっています。

>仲間との上映会、それが一番盛り上がりますよ!

何年先になるかわかりませんが、いつかは実現したいと思っています。
しろくろshow さん
私のコメント、慣れないPCで打ったものだから、いい加減になってしまって、申し訳ありません。
昨日の朝、バスで帰ってきて、そのまま仕事、イベントがあったので、帰宅は深夜で疲れてそのまま寝てしました。

そんなわけで、もう一度、コメントしますね。
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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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