「先輩、クリぼっちって知っています?」
「クリスマスひとりぼっちの略で、クリスマスを一人で過ごすことだろう」
「先輩、今年一人だったんでしょう?」
「当たり前田のクラッカーだ! イブの夜なんてチャルメララーメンをすすりながら『エンタの神様』見てたよ」
「淋しかったでしょう?」
「もう5年ほどクリスマスはひとりさ。昨年はどうしたんだろうと思って調べてみたら、阿佐ヶ谷のスナックで過ごしていた。昔の同僚がやっているところでね」
「ほら、淋しいから、にぎやかなところに出かけたんだ」
「たまたまだよ。昨年あたりから全然淋しくなくなったんだから。その前まではつらかったけど」
「で、どうしてたんですか?」
「一切の情報を遮断していた」
「はあ」
「カミさんと娘が家を出てから、TVで父親と子ども、特に娘との絆や夫婦愛の話題になるとすぐにチャンネルを換えた。クリスマスシーズンになると、もう地獄だよね」
「……」
「娘の小さかったころが思い出されてねぇ。あのころ、クリスマスって我が家にとって一大イベントだったわけだから」
「つらいですねぇ」
「でも、さっきも言ったけど、今はひとりが楽しいよ。そういう心境になったんだ」
「立ち直ったってわけですか?」
「立ち直ったというと、カミさんと娘から文句言われそうだけど。すべてあなたが原因でしょう! って」
「娘さん、12月に入籍されるって言ってましたよね?」
「ああ、12月のいつなのか、知らないけれど。記念だからクリスマス・イブとか、クリスマスとかなのかなあと思ったりしてね」
「連絡はないんですか?」
「ないよ。オレ、娘に縁切られたんだから。結婚も、子どもが生まれたとしても、お父さんには知らせないからって。もうお父さんじゃないからって」
「……」
「しょうがないよね。自分で蒔いた種だから。お父さんは覚悟がなかったのよ。この言葉、今でもたまに聞こえてくる」
「……」
「湿っぽくなったね。……黙られるとつらいから、なんか、言えよ」
「あのね、先輩、クリぼっちって言葉、女性が言うと、なんか淫靡じゃないですか? クリスマスじゃなくてクリ〇〇〇ひとりぼっちに聞こえません?」
「お前、それが言いたくて、この話題だしたのか!」





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Author:kei
新井啓介
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まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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