永井豪が「激マン」の第2弾「マジンガーZ」編の連載を始めてからというもの、「漫画ゴラク」を立ち読みするようになった。実際は隔週連載なのだが、毎週金曜日、出勤前の近くのコンビニでページを繰っている。

 巻末の記事の中に北川れい子の映画評(一頁)がある。主に邦画が取り上げられていてけっこう参考にさせてもらっている。
 ただ、この方、映画に仕掛けられたトリックに無頓着で、何気なく紹介してしまうので困ってしまう。

 以下、ネタばれあり。

 たとえば、昨年公開された「ピンクとグレー」。監督が行定勲というので興味を持っていたところにこの映画評を読んだ。原作がジャニーズのアイドルが書いた小説であることもはもちろん、どんな物語なのかも知らなかった。
 映画評で「ピンクとグレー」の概略がわかったわけだが、映画を観て驚いた。
 冒頭からの約1時間は映画中映画で、その後、主演の菅田将暉と中島裕翔の役柄(立場)が逆転するのである。映画にどんでん返しが仕掛けられていたわけだが、映画評では、このトリックを明かしているのだ。いや、読んでいてトリックだなんて意識していなかった。あたかもアーバンタイトルのごとく書いていたので、それほど重要だとは考えておらず、だから映画を観て驚いたというわけ。
 映画鑑賞後に知るのだが、ポスターには「開始から62分後の衝撃」とあった。その衝撃が何なのか、北川れい子は書いているのである。
 いいんですか? それで。
 まあ、ポスターに書いてしまうことで、観客は身構えるから、本当の意味でどんでん返しになるのか疑問だが。

 同じことは「ミュージアム」でもあった。
 「ミュージアム」は「ピンクとグレー」と違い、劇場で何度も予告編が流れて興味を持っていた。予告編では、主演が小栗旬であること、刑事に扮し、謎の連続殺人(それも残忍な)事件に家族ともども巻き込まれてしまうということしか紹介していない。犯人は蛙のマスクをかぶった男なのだが、誰だかわからない。
 「犯人は誰か?」が映画の謎解き、重要なポイントになるのだろうと推測できる。

 にもかかわらず、北川れい子は、映画評の最後の1行にこう付け加えた。
「犯人役は妻夫木聡」
 おいおい、である。読まなきゃよかったと思ったが、後の祭り。
 実際、映画の冒頭にはクレジットタイトルはなく出演者の詳細はわからない。ポスターにも蛙男は?になっていた。やはり犯人が誰かという推理は展開の主軸になっているのである。
 だからこそ、小栗旬が別居した女房・子の居場所を訊きに女房の友人が働く病院を訪れたシーンで極上の恐怖を味わえる作りになっていて、個人的にはこの映画の一番斬新なところだったと思っている。ホラー小説「黒い家」で、精神科医が犯人が子ども時代に書いた詩を分析し、この人には心がないと結論づけたくだりに似た恐怖だ。
 ところが、こちらは犯人が妻夫木聡だと知っているから、その前にあるエピソードがあって、映画の中で唯一本人だとわかるショットがある。「ああ、こいつが犯人だと」とわかってしまい、つまり展開が読めてしまって全然怖くなかった。
 どうしてくれるのよ、北川れい子さんよ。

 なぜ、最後に「犯人役は妻夫木聡」なんて書くのだろう。せめて、共演は、として、二人ほどの役者名を記し、その中の一人を妻夫木聡にしてほしかった。
 思うに、北川れい子って、ミステリとか謎解きに興味がないのだろう。あくまでも人間ドラマが重要であって、映画に仕掛けられたトリックなんて眼中にない。でなければ、最後の1行で犯人役を明かすなんて愚行を犯すはずはないのだ。

 映画「ミュージアム」は賛否両論があるが、個人的には面白く観られた。何より鑑賞後の充実感があった。
 突っ込みどころはいくつかある。
 連続殺人の犠牲者にはある共通点があった。皆ある殺人事件の裁判の裁判員だったのだ。その一人、引きこもりの若い男。裁判員の要請を了承するだろうか。身重の女性も同様。
 また、犯人だが、あんな短期間、短時間で、大胆奇抜な殺人を実行できるものだろうか。それもたった一人で。誰にも目撃されないというのもどうにも腑に落ちない。
 ここでつまずくと、この映画が受けつけなくなる。僕は「そういうもの」と受け流したので、その後の展開を楽しめた、のかも。
 開巻から雨模様が続く。まるで「ブレードランナー」のようだなと思っていたら、後半で単なる雰囲気作りではないことが判明する。ちゃんと意味があったのだ。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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