一応、前項から続く

 映画「ミュージアム」の監督は大友啓史。NHKのドラマ「ハゲタカ」の演出で名前を知った。当然、チーフディレクターを務めた大河ドラマ「龍馬伝」は一年間視聴した。
 その後、NHKを辞めてフリーに。映画監督に転身したというべきか。局員時代に「ハゲタカ」の映画を撮って、映画の世界に魅了されたのか。個人的には少々残念な気持ちがあった。もう少しNHKでテレビドラマの可能性を追求してほしかったので。
 実際、映画「ハゲタカ」には、ドラマのようなカメラワークの切れが感じられなかった。

 手持ちカメラ、全体的にブルーの色調の世界というと、堤幸彦を思い出す。連続ドラマ「ケイゾク」にハマって、映画化されると真っ先に劇場に駆けつけた。が、期待に応えてくれる出来ではなかった。その後さまざまな映画を手がける人気監督になるのだけれど、個人的には「?」。らしくない作品ばかりで、足を運びたいと思えないのだ。

 昔からTVから映画に進出するディレクターはいる。実相寺昭雄や五社英雄が有名だ。五社英雄は映画界の巨匠になってしまったが、実相寺昭雄は、TVの音楽番組、CMのほか、オペラ等、さまざまなメディアを舞台にしていた。映画監督でくくるには少し違うと思っている。

 大友監督はNHK退社後、「るろうに剣心」3部作で大ヒットを放った。予告編を何度か見て殺陣の激しさに興味を持ったが、結局鑑賞しなかった。TVで放映された際に録画したのだが、まだ一度も再生していないテイタラク。
 「プラチナデータ」、「秘密 THE TOP SECRET」は全然興味がわかなかった。
 注目している監督ではあるのだが、映画だけにとどまらず、TVの世界でもっと頑張ってほしいと個人的には思っている。

     ◇

2007/08/24

 「ハゲタカ」(NHK総合)

 NHKの土曜ドラマは昔から秀作の宝庫だった。TVドラマにほとんど食指が動かなくなった今もこの番組だけはチェックを入れている。ところが「ハゲタカ」はノーマーク。いや違う、主演が大森南朋ということで興味はあったのだ。映画「カルテット」や「ヴァイブレータ」で注目した俳優。それに初の主演ではないか!
 にもかかわらず、題材がどうしても好きになれず初回チャンネルを合わせなかった。株や投資の話はわが家ではご法度なのだ。
 結婚した当初、かみサンが証券会社の営業ウーマンの甘い口車に乗って株を始めて痛い目にあったことがある。ハイリターンの説明ばかりでハイリスクについてはまるで触れなかった。事実を知ったかみサンが当の営業ウーマンに説明を求めても逃げの一手。会社ぐるみで電話口に出そうとしない。声を枯らして嘆くかみサンを「知識がなかったことが要因」と諭した。
 また、かつて証券会社に勤めていた同僚の、泥沼にはまった証券マンたちの悲惨な生活ぶりを聞いてからというもの、その手の話には一切耳をふさぐことにしていたのだ。
 ドラマが始まって、いろんなところから評判が聴こえてきた。最初から観ていないので追いかけることもしなかった。後の祭りとあきらめた。

 再放送で評判が嘘でないことが確認できた。
 まず映像にしびれた。
 1970年代の後半、村川透監督、松田優作主演の〈遊戯シリーズ〉と呼ばれた映画があった。優作扮する一匹狼の殺し屋が活躍するアクション映画3部作だ。ディティールがリアルなストーリーはもちろん独特のカメラワーク(撮影:仙元誠三)に夢中になった。この世界観に角川映画が注目し、同じトリオを起用して「蘇る金狼」、「野獣死すべし」が製作された。ブルーを基調とした硬質なトーンがハードヴォイルドの世界をより際出させていた。
 90年代末になって、ビデオでこの世界を構築することができることがわかり歓喜した。堤幸彦監督の「ケイゾク」である。「ハゲタカ」はこの路線をしっかり継承しているのだ。

 始まりは一話完結風、進むにしたがって一つの物語に収束していくのは「踊る大捜査線」を意識したのだろうか。原作(真山仁「ハゲタカ」「バイアウト」)を読んでいないので、小説世界がどうなのか知らないけれど。実際にさまざまな企業のTOBがメディアをにぎわせてしているから、ドラマに緊迫感がある。似たような出来事を勤めている会社で経験しているし、株主総会なんて数年前まで毎年事務局の一員としてその時期慌しい毎日を送っていたから余計にそう感じるのかもしれない。
 大森南朋は若手役者(中堅役者?)の多良尾伴内だ。映画の中で本当に七つの顔を持つ。出演するたびにイメージが違う。このドラマでは非情な投資ファンドマネージャーを演じている。内にガラスの心、トラウマを持つ……。ライバルになる柴田恭平はいつもながらの恭平節(批判ではない)に深い思慮を滲み出していた。いつもうっとりしてしまうのが頬から顎にかけてのライン。あの鋭角は昔も今も変わらない。大森南朋に家族を崩壊させられ、やがて同じ道を歩みだす松田龍平はかつて父親が「野獣死すべし」で表現しようとしていた爬虫類キャラクターを好演。聞くところによると、某件で降板せざるをえなかった俳優の代演だという。これも何かの縁だろうか。
 しかし何といっても田村泯だろう。圧倒的な存在感だった。上手さというよりその人になりきってしまうというのか、台詞の一つひとつに含蓄がある。
 いやもっというなら、最初に映像ありきのドラマがNHKで生れたことに快哉を叫びたい。個人的なことといわれればそれまでだけど。


 【おまけ】

2000/03/20

 「ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer」(ニュー東宝シネマ1)

 TVシリーズ「ケイゾク」が正式に映画化されるのを知って、一番期待したのは、方向性もタッチも全く違うけれど「L.A.コンフィデンシャル」みたいな上質なミステリ映画の誕生だった。
 柴田と真山の凸凹コンビ(および捜査二課メンバー)によるギャグの応酬、独特な映像テクニックはそのままに本格的な(本格派ではない)ミステリ映画になったら、日本映画史に残る斬新なものになるんじゃないかと思ったのだ。

 タイトルに「Beautiful Dreamer」なんておよそ「ケイゾク」に似つかわしくないサブタイトルがついてがっかりきた。「コナン」や「金田一少年の事件簿」みたいなストーリー(南の島に関係者が集まって一人ひとり殺されていく)も期待をしぼませるのには十分だった。

 堤幸彦監督は自身が演出したTVドラマ「金田一少年の事件簿」の映画化作品でも舞台を香港にして一大ロケーションを敢行したのは記憶に新しい。TV出身の監督にすれば、映画はやはり〝お祭り〟〈フルコースメニュー〉〈見栄えがいいもの〉という認識なのだろうか。装飾を豪華にすればいいという問題でもないと思うのだけど。

 映画だからこそ、日常(「ケイゾク」の舞台は都会がよく似合う)に潜んだミステリアスな犯罪とその解明の模様を二転三点する練り込んだ脚本と独特な映像でフィルムに構築して欲しかった。
 クスクス笑いあるいは大爆笑の中で、クライマックスに向けての謎解きの伏線を見逃(聞き)さないように、一時もスクリーンから目が離せない。で、あっというドンデン返しがあって真犯人がわかる仕組み。僕はそういう展開をのぞんでいた。
 真犯人がわかってからはハードボイルドタッチ(かつての遊戯シリーズみたいに)で警察VS犯人の戦い(銃撃戦)を描いてもいい。

 映画は昨年末に放映された「ケイゾク/特別編」の後日談として始まる。
 上映時間約2時間の3/4(1時間30分)は映画用に新たに設定された事件がTV同様柴田のボケと真山のツッコミで笑わせながら描かれる。犯罪のトリック自体は稚拙なもので、始まっていくらもしないうちに犯人がわかってしまったのはちょっと残念だが、「ケイゾク」の雰囲気はうまく表現されている。これはこれでいい。ただこれだけのエピソードでラストまでひっぱるのは無理というもの。当然事件が解決してから大きなひねりがある。

 問題なのはそのラスト30分だ。TVシリーズから執拗に続いている殺人鬼・浅倉と真山の対決が描かれ、やっと戦いに終止符をうたれた(らしい)。が、これが、どうにもよくわからない展開なのだ。
 このエピソードはそれまでの物語を拒否するかのような形で追加され、TVシリーズを知らない観客はもちろん、観ていた人だって、朝倉が何者で何をしたかったのかわからない。
 観客に媚びたあまりに説明過多な浪花節ラストもイヤだけれど、監督の一人よがりなわけのわからないものも困ったもんだ。TVシリーズ、スペシャル、映画と観てきて、何よりスタッフがなぜあそこまで浅倉に固執するのか僕にはわからない。

 「ケイゾク」の凝った映像はTVドラマの中でも特筆ものだろう。ビデオでハードボイルドが撮れるというのは何とも心強かった。TVは名キャメラマンを生み出せなかったと言われて久しいが、堤幸彦の片腕として数々の作品に参加している唐沢悟はその範疇に入るのではないだろうか。
 かなりフィルムの質感に迫った映像設計で、「ケイゾク」の映画化はその点でも期待が大きかった。ところが、TVと同じカメラワークでもどうもキレが感じられないのである。「ケイゾク」の映像はビデオだからこそ堪能できるもの、逆の意味でフィルムとビデオの違いを思い知った。

 木戸彩(鈴木沙理奈)の元恋人に大阪弁で啖呵をきるところはゾクゾクきた。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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