某ゲームメーカーには二十数年勤めた。
 最初は某出版社から新設の映像事業部へ出向の立場、転籍したとたんに子会社に出向、戻ってきたら受け入れる部署がなく、リストラ用の部署(の先駆となる部屋)に入れられた。後から来た人はほとんど辞めていったが、何とか食いしばって、アミューズメント機器の販売部にもぐりこんだ。だか、すぐに使えないとの烙印を押され、総務部に移った。

 総務部では毎朝朝礼があって部員が司会を担当する。月曜日は司会が1分間のスピーチをしなければならない。
 自分が担当のときは、出社してすぐにパソコンで原稿書き(打ち)に精出した。話題は読んだ本、雑誌、あるいはTVから仕入れる。仕入れたエピソードを紹介して、仕事に結びつけるところがミソで、これで、私のスピーチは評判がよかった。
 その原稿(プリントアウトした用紙)が出てきた。

 適度に紹介していきます。
 このスピーチをアレンジして誰か有効活用してくれないかなぁ、なんてと淡い期待を抱いています。

     ◇

 先日、久しぶりにビデオで「ブレードランナー」を観ました。
 リドリー・スコット監督のカルト映画として人気の高いSF映画なんですが、別にこの映画についてあれこれお話するわけではありません。
 実は映画の冒頭で、主演のハリソン・フォードが日本人が経営する立ち食いソバ屋でうどんを注文するシークエンスがあるんですね。画面ではわからないのですが、たぶんその上に乗せる天ぷらをハリソン・フォードが4つくれと言うんですね。すると日本人の主人が「4つじゃ多すぎる、2つでいい」と。それでもハリソン・フォードは4つ欲しいんだ、4つくれと言うと、なお「2つで十分ですよ、わかってくださいよ」と食い下がります。職人肌のこだわりともとれますが、お客さんサイドに立った気遣いの一言だとも言えないでしょうか?

 それで思い出したのは、もう何年も前に家族3人で渋谷のイタリア料理のお店に行ったときのことです。
 パスタを私とカミさん用に2種類、それから2品ほど注文しました。出てきたパスタを見て驚きました。何と量が3人前くらいあるんです。それが2つですから女性を含む大人2人と子どもで食べきれるわけがありません。当然大量に残しました。
 なぜ注文を受けた際、ウェイターは当店ではパスタの量がこれくらいだから1つでいいんじゃないかと説明してくれなかったのでしょうか。
 まあ、客から注文をされたからそのとおりにオーダーをとっただけでしょう。マニュアルにもないことだから、余計なことは言いたくないのかもしれません。
 あるいは、理由を話せば注文の数が減り、売上に影響すると考えたのかもしれません。
 しかし、客は夫婦とその子どもですから、どう考えても食べられる分量でないことは一目瞭然なんです。ちょっと気をきかせて、やさしさを見せてくれたら、なんて良心的なお店なんだろうと、また渋谷に行った際に立ち寄るかもしれないのです。
 こうして、その店は客を1組、永遠になくしてしまったのでした。

 こういうちょっとした一言を言えない、言いたくない、それで信用をなくしてしまう、ビジネスチャンスを失う、ということは私たちの仕事でもよくあることではないでしょうか。
 こういうと、じゃあ、お前はちゃんとやっているのか、と反論された場合、自信をもってイエスと答えられないのがつらいところですが、少なくても代表電話にかかってくるお客様に対してはできるだけの対応をしているつもりです。私の一言で当社のファンが消えてしまうというのはけっこう怖いことです。
 東芝の事件が、ホント、他人事には思えない今日この頃、サービスということについて思いをめぐらせた映画の1シーンでした。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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