(敬称略)

 今週の月曜日、朝刊には、この日発売の「週刊ポスト」「週刊現代」の広告が掲載される。「週刊現代」のそれには「がんばれ、松方弘樹」の見出しがあった。
 ということは、相当容体が悪いんだな、と真っ先に思った。

 案の定だった。
 午後、お店の常連、Iさんが、いつものように喫煙スペースの個室で〈仕事〉をしていて、少しお邪魔して映画談義に花咲かせた。
 厨房(カウンター?)に戻って、少ししてから、Iさんが個室から飛び出してきた。
「松方弘樹が亡くなったよ!」

 俳優、松方弘樹を意識したのは、NHKの大河ドラマ「勝海舟」である。
 当時、脚本を担当すれば、必ずチャンネルを合わせた倉本聰の初めての大河ドラマだ。主演は渡哲也。個人的は、人斬り以蔵役のショーケン、坂本龍馬役の藤岡弘に興味津々だった。
 第1回にえらく感動して毎回日曜日の夜8時に視聴するようになった。
 早い段階で、渡哲也が病気降板した。代演が松方弘樹だった。
 当時は、主役交代に残念な気持ちがあった(その後、倉本聰もスタッフとの軋轢があって降板してしまう、なんてこった!)。しかし、今、この交代は良かったのではないかと思っている。
 何より口跡が心地よかった。江戸弁だったなあ、と思うのだ。
 交代しなければ、仁科明子と出会うこともなかったろうし、ということは結婚もなかったのだろう。

 本当いうと、小学生時代に松方弘樹主演の映画を観ているのである。
 「怪竜大決戦」。東映が製作した怪獣が登場する時代劇だ。怪獣というか、巨大ガマガエルと巨大竜がクライマックスで激突する。共演(ヒロイン)が小川知子だったことに、後年観直して驚いた。

 松方弘樹の巧さを思い知らされたのが「仁義なき戦い」5部作だ。
 このシリーズ、同じ役者がシリーズを通して違う役で登場している。松方弘樹もその一人で、第1作、第4作「頂上作戦」、第5作「完結編」に登場する。驚くのは、3作とも全くキャラクターが違うのだ。別人なのである。
「役者だの~」と拍手を送りたくなる。
 こんなこと、これまで「仁義なき戦い」が語られる際には、さんざ言われていることだろう。
 74歳。

 合掌




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Author:kei
新井啓介
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まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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