この項の【おまけ】から続く

 大河ドラマ「元禄繚乱」が放送されたのは20世紀最後の年だ。
 市川崑監督「四十七の刺客」を観てから、自分の中で忠臣蔵への興味が芽生えた。史実としての赤穂事件を知りたくなって、図書館から関連書を借りては読み漁った。
 赤穂事件から背景となる元禄文化や大河ドラマ「八代将軍吉宗」で享保の改革、その時代背景に興味がわいて、やはり関連書をあたった。映画「写楽」や大河ドラマ「徳川慶喜」も同様。大河ドラマは江戸時代が舞台になると1年間つきあうようになった。ドラマ、映画の原作から、時代小説も読むようになった。
 こうして江戸時代がマイブームになった。
 江戸時代への興味は今も続いている。

 「元禄繚乱」は最近(この最近は数年前の意)までソフト化されなかった。1970年代は初期までのドラマなら、ビデオが保存されていないということもあるが、「元禄繚乱」は2000年の製作だ。
 なぜかというと、これはあくまでも僕の想像だが、NHKサイドがソフト化したくても主演の中村勘三郎(当時は勘九郎)の了承がとれなかったからではないか。中島丈博との喧嘩が尾を引いていたと解釈している。
 ソフト化されたのは、勘三郎が亡くなってからなので、そう推察するのだが。

 ちなみに「勝海舟」は総集編のみビデオが保存されていたらしい。だからなんとかショーケンの人斬り以蔵を観ることができる。


     ▽
2000/12/12

 「元禄繚乱 忠義の士」(NHK総合)

 「元禄繚乱」が終了した。
 討ち入りの回の時に書いた感想どおり、作者・中島丈博は〝幕府が討ち入りした赤穂浪士たちに対してどんなお裁きをするか〟をクライマックスに持ってきた。
 大石は吉良に復讐するためではなく、片落ちの裁定に対する幕府(綱吉)への異議申立て、あるいは「生類憐れみの令」等の庶民の生活を省みない政治を断行する将軍に対する批判のために討ち入りしたという解釈が今回の忠臣蔵には取り入れられている。この解釈は井沢元彦の「元禄十五年の反逆」で知って、討ち入りの真相が理解できた思いだったが、原作の船橋聖一「新・忠臣蔵」も同様なのか、それとも中島丈博のオリジナルなのか。

 大石の堂々たる将軍批判を、お忍びで面会にやってきた当の本人の前でさせるという掟破りのフィクションにはまさしく驚いたが、ショーケン演じる綱吉が怒りまくる姿を見ながら、世の忠臣蔵ファン、歴史家たちの批判を浴びるには違いないけれど、この展開は正解だと思った。こうしなければ(つまり大石の意見を直接綱吉が聞かなければ)本当の意味で大石が綱吉に一矢報いることができないからだ。
 大石が将軍に対する批判を幕府の用人に口にしても決して将軍の耳には届かない。それは絶対どこかでにぎりつぶされる。自分の裁定で運命を狂わされた人たちの嘆きなどお上が知る由もない。だからこそ中島丈博としては自分への批判で地団太を踏む綱吉を描きたかったのだろう。ショーケンはそれをコミカルに演じ、大河ドラマ四度めの忠臣蔵・「元禄繚乱」の新機軸(テーマ)が鮮やかに浮かび上がった。僕はこのフィクションを断固支持する。

 シリーズ初期だけでなく、最後もやはり「元禄繚乱」はショーケンのドラマだったと言える。製作が発表された時、数年前の12時間ドラマ「豊臣秀吉」で名演技を見せた中村勘九郎がこれまで歴代の役者たちが演じた大石内蔵助とは一味も二味も違うイメージを構築すると期待していたのだが、それほどでもなかった。打ち上げ時に中島丈博が「眼が死んでいる」と言って物議をかもしたそうだが(そこまでは言い過ぎだと思うが)、わからないでもない。
 ショーケンは従来の彼独特のアドリブをきかせた演技で、エキセントリックな綱吉を好演した。ショーケンファンにとってはうれしい限りだ。彼にとっては「勝海舟」のニヒルな人斬り以蔵とともに大河ドラマの歴史に名を残すキャラクターになるだろう。
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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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