2017/01/28

 「唐獅子株式会社」(小林信彦/フリースタイル)

 僕が小林信彦を読み始めたのは高校時代、キネマ旬報で「小林信彦のコラム」が始まってからだ。もちろん、中学時代は「オヨヨ大統領」シリーズが話題になっていて、高校時代は「唐獅子株式会社」がブームだった。とはいえ、それほど興味がなかった。
 中学時代に所属していた陸上部の同級生がさかんに「オヨヨ大統領」シリーズの面白さを吹聴してくれたのだが、NHK少年ドラマシリーズのドラマ化に幻滅していたので、原作を手にしようとは思わなかった。
 ところが、キネマ旬報のコラムがすこぶる面白い(なにしろ連載中に読者賞を2回受賞したほどだから)。大学時代に1冊にまとまり、すぐ購入した。ここから小林信彦のこの手の本を集めるようになった。
 コラムやエッセイ、評論集をすべて読破して、新潮文庫の小説をあたるようになった。その最初が「唐獅子株式会社」だったと思う。
 面白かった。笑った。こりゃ話題になるわと得心した。第3話「唐獅子生活革命」で組グループの社内報に掲載されたダーク荒巻の新マザーグース「誰が駒鳥いてもうた?」で、赤い鳥の「誰が鳥を」の元ネタを知った。後藤さん、そういうことだったのね!

 「スター・ウォーズ」と「レイダース」、「スーパーマン」のテーマ曲が似ていること。当時よく仲間と遊んだっけ。
「『スター・ウォーズ』のテーマ曲は?」
「(口ずさむ)」
「『レイダース』は?」
「……(何とか口ずさむ)」
「じゃあ、『スーパーマン』!」
「(わけがわからなくなる)」
 
 このシリーズは、70年代後半から80年代前半、日本がバブルに突入する寸前までの文化、風俗が描かれていて、それが、著者一流のギャグに結びついている。当時を知っていれば、大笑い間違いなしだ。若い人はどう思うのだろうか?

 これまで「唐獅子株式会社」は2度映画化されている。1983年と1999年。
 小説が話題になって、映画化希望の話が次々と版元に押し寄せた。前田陽一監督、岡本喜八監督、長谷川和彦監督。
 松竹の前田陽一監督が特に熱心だったが、会社が反対してポシャった。長谷川監督も映画化に積極的だったが、いつのまにか「太陽を盗んだ男」にシフトしてしまい、著者を呆れさせた。最終的に岡本喜八監督に映画化権を2年間預けることになった。
 そこらへんの顛末は、「小林信彦のコラム」に書いていて、最初にまとめられた「地獄の観光船 コラム101」(集英社)に収録されている。

 「小林信彦のコラム」の書籍化第二弾は筑摩書房から「コラムは笑う エンタテインメント評判記1983〜88」と改題されて出版された。集英社文庫になっていた(で、絶版になっていた?)「地獄の観光船 コラム101」は「コラムは踊る エンタテイメント評判記1977〜81」となってちくま文庫に入った。「地獄の観光船」以降、シリーズとして出版された「地獄の映画館」(76年以前の映画に関するコラムがまとめられていた)は、「コラムは歌う エンタテインメント評判記1960〜63」と改題されてやはりちくま文庫の1冊になった。
 以降、筑摩書房から「コラム」シリーズが刊行されることになる。

 「コラムは笑う」には125のコラムが収録されているのだが、2つめのコラムが「唐獅子株式会社」映画化にまつわる話題だった。
 前田陽一監督が松竹で映画化を試みた際に、脚本を担当した某が映画雑誌に「なぜ映画が挫折したのか」と恨み節を綴っていて、その反論になっていた。挫折の理由「会社が悪い、原作者が悪い、外野が悪い」のうちの、〈原作者が悪い〉に反駁したのである。
 某は著者からのクレームがあったと書いている。
「私の原作は、チンピラライターが手がけるものでありません。書くなら東映の大御所K・K氏か、テレビの巨匠S・K氏のような人にお願いします」
 K・K氏は笠原和夫 S・K氏は倉本聰のこと。
 こんな言葉をいつ、どこで、ぼくが吐いたのか! と激しく怒りながら検証し、結局、某が書いたことは、デタラメ、捏造、虚偽、甘え、非礼、であり、すべてを他人のせいにして、自分の才能を疑うことがない、自称脚本家と罵倒する。
 著者の筆誅の激しさを思い知らされた。

 この項続く




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Comment
No title
こんばんは(*^-^*)

小林信彦のエッセイや唐獅子シリーズは、ある意味読者を選びますよね。そこがたまらない魅力なんですけど。
あの「笑い」の質の高さと敷居の低さときたら、何年たっても古びることが無いような気がします。
若い人にはもうわからないのかもしれませんが。

そういえばカラオケの歌のリスト、面白かったです!
タイトル即歌い手の名がほぼ100%出てくるのがまた何とも・・・。
私は最近ストレス解消に「アナと雪の女王」の映画に合わせて歌っています。セリフまで覚えてしまいそうでちょっとコワイんですけど(^^)
mikaidou さん
こんばんは!

小林信彦って、好きな人はとんでもなく好きで、書いていることについて、持ち上げるだけ持ち上げる、嫌いな人にとっては完全に嫌悪の対象って感じですかね。
ある時期、小林信彦で検索すると必ずヒットするブログがあったんです。見に行くと、著作の感想が述べられているのですが、必ず悪口なんですよ。
だったら読まなければいいのに……何度コメントしようかと思いましたが、他人様が自分のブログで何書こうが自由ですから、私が見に行かなければいいだけのことと無視することにしました。
今はツイッターで検索すると、文春の連載エッセイに対する感想で、老いを指摘する人がいますが、そりゃ当たり前のことじゃないですか。いくつだと思っているんでしょう。

カラオケ、お恥ずかしい限りです。本当はもっとレパートリー(?)はあるのですが、書き出すと、際限がなくなるもので、あのへんでやめました(笑)。
カラオケはまさにストレス解消ですよね。一人だとマイク必要ないし。
追伸
カラオケの歌ですが、肝心の赤い鳥(や紙ふうせん)の曲がありません。うたいたい曲はいっぱいあるのですが、メジャーじゃないので、カラオケにないんです。
「尺取虫」とか「らくだちゃん」とか、知らないでしょう、誰も(笑)。
No title
こんばんは。

カラオケ、確かに昔の曲が少ないというか、偏ってますよね。私は小林旭の「ダイナマイトが150屯」がカラオケになくて、悔しさのあまり家に帰ってyoutubeでリベンジしました。
甲斐バンドバージョンも好きなんですけど(#^^#)
mikaidou さん
えっ、そんな有名な曲もないのですが?!
自動車ショー歌(でしたっけ?)は入っているのかな。

実は、昨日も仕事で西川口に着いたのは23時過ぎだったのですが、そのまま歌広に行ってしまいました。
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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
私家本「僕たちの赤い鳥ものがたり」
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」

神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。遊びにきてください。

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