今日は本の紹介をさせてください。
 毎週月曜日の夜10時から日本テレビで「永遠の仔」が放送されています。今夜は3回めですが、天童荒太の原作は、昨年年末に発表された数々のミステリーベストテンで第1位を獲得しています。
 私はまったく内容を知らずに読んだのですが、「永遠の仔」はミステリというジャンルを超えて、これまでの私のオールタイムベストファイブに入ると言ってもいい、心が揺さぶられる小説でした。
 最近、ニュース等でいろいろ報道されている、児童虐待をテーマにしたとても重い内容の、最初は読み進むのがつらい小説です。

 親からの虐待でトラウマを持った1人の少女と2人の少年の精神病棟における、17年前の物語と、その後再会して事件に巻き込まれる3人の現在の現在の物語が交錯しながら、彼らがつらい現実にぶちあたりながら、なんとかトラウマを克服して生きていこうとする姿、生きていくことの尊厳を謳いあげた傑作だと私は思っています。

 最近は本でも映画でも泣けるということが1つのお薦めの意味を持っていて、どうにも納得がいきません。安易なお涙頂戴ものは昔から嫌悪の対象でした。何も感動だけに人は涙を流すわけではありませんから。悲しい現象にも涙を流すんですから。むしろその方が多いでしょう。
 ですから、泣けるということで、「永遠の仔」を紹介したくはないですが、後半は泣きどおしでした。それは目頭が熱く熱くなる、涙が頬を伝わるなんてものではなく、ほとんど号泣に近い。嗚咽を漏らしながら読んでました。

 想像してください。隣の部屋でカミさんと子どもが寝ている夜中、わんわん泣きながら本を読んでいるいい歳をした男の姿を。
 とにかく、後半は明日が仕事でもう寝なくてはと思いながらもやめられなくて、ほとんど一気に読んでしまいました。
 上下巻がそれぞれ約500ページあって、二段組ですが、ぜったい読んで損はしないと思います。
 ということで、今日はお薦めの本の紹介でした。

     ◇

【参考】

2000/02/07

 「永遠の仔」上下(天童荒太/幻冬舎)

 下巻を一気に読了した。
 ラスト近くになるにつれ3人の主人公たちの台詞の一つひとつが胸にしみた。涙腺がゆるみ、涙が頬をつたわり、鳴咽がもれ、終章になってやっと平静さをとりもどしたかに思えたら、ラスト3人が互いに励ましあうために言いあったという言葉を目にするにいたってまた大泣きだ。
 「マークスの山」の時も読書が深夜に及び、泣きながら読み終えたのであるが、あの時以上に魂が揺さぶられた。
 「永遠の仔」は昨年末に発表された数々のミステリベストテンで1位を獲得し、いったいどんな作品なのか注目していた。図書館に予約はしたが、人気が高くて当分借りられないだろうと思っていたら、割と早く連絡がきて驚いた。

 まさに現代を象徴する重いテーマである。親の児童虐待、育児放棄、裏切り。親の愛を受けられず、心を喪失した子どもたちの悲惨な毎日。裏切られ、傷つけられ、ねじまげられる幼い精神。それでも親に愛されたいと願う、切なく哀しい子ども心。
 ここに描かれていることはフィクションであるが、似たようなことはまぎれもなく現実に起こっていて、その犠牲者は確実に存在することを思うと何ともやりきれなくなる。

 トマス・ハリスの「レッド・ドラゴン」には残虐非道な精神異常の殺人者が登場する。最初彼の犯罪に怒りを覚えるが、両親に虐待された生い立ちを知るにつれ、彼が犯罪に走るのも仕方ないかもしれないと同情してしまったことを思い出した。
 日本中を震撼させた神戸・酒鬼薔薇事件の加害者の少年、9年間少女を監禁したゲス野郎、小学生刺殺事件の犯人とおぼしき自殺した21歳の青年あるいはウサギを惨殺したり、小犬の足を切断して歓喜にしたっているであろう名もない人たちにも(どんな事情があろうとも、絶対彼らの犯罪は許されないけれど)精神を歪めた残酷な幼年、少年時代があったのだろうかと考えてしまうのだ。

 本作は少年少女時代のトラウマをかかえてもがき苦しみながら生きる3人の男女の過去と現在を交叉させながら、「いま生きているということ」の尊さを高らかに謳いあげた物語である。
 重たすぎるテーマだから上巻は読むのがつらかった。ミステリの要素がなかったら読み進められたかどうかわからない。しかし、下巻において少女のトラウマの原因が提示されてからは、3人が再会してから巻き込まれる殺人事件の解明なんてどうでもよくなってしまった。逆にラストですべての謎が解き明かされた時など、あまりの着地のよさに「現実はそんなものではないだろう」と不満を持つ始末だ。

 3人が出会った1979年と再会した1997年を季節の移り変わりとともに章立てで交互に描く。過去と現在が微妙に関連しあう構成が見事である。
 3人の過去を描いた部分は名作「スタンド・バイ・ミー」を彷彿させる。3人の少年少女たちが愛しくてたまらない。過去の体験が現在の生活に深くかかわってくると言う点では「スリーパーズ」か。安易に映画化なんてしてほしくないが、もし完璧に映像化できたとしたら、人間の尊厳に迫った深く重いテーマを持った名画が誕生するだろう。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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