2017/05/25

 「追憶」(新宿ピカデリー)

 最初に予告編を見たとき、「ミスティック・リバー」の翻案、日本版リメイクかと思った。
 幼なじみの少年たちがある事件にかかわって、離れ離れになって25年。一人は刑事になっていて担当した殺人事件の容疑者がかつての幼なじみ……。プロットがよく似ている。

 監督が降旗康雄、撮影が木村大作。かつて高倉健主演の映画を撮っていた名コンビだ。
 このコンビが岡田准一、小栗旬、 柄本佑といった若手(でもないか、中堅)人気俳優を起用してどんな映画を魅せてくれるか?
 大学生のとき、「駅 STATION」の予告編を初めて観たとき涙がこぼれた。いしだあゆみが列車に乗って、見送る高倉健に敬礼する際の泣き笑い。そのしぐさと表情。内容も状況もまったくわからないというのに。
 昨年、木村大作と金澤誠の共書「誰かが行かなければ道はできない 木村大作と映画の映像」を読んで、木村大作が撮影を担当した作品を立て続けにDVDで鑑賞した。

 だからだろうか、この「追憶」という映画、監督とカメラマンが昔とった杵柄でそれこそ撮った作品という印象を受けた。
 タイトルバックの冬の日本海は素晴らしいのだが、どこか既視感があった。
 コンパクトにまとめられていて、役者陣も皆がんばっているのだが、もろ手を挙げて拍手喝采できない自分がいる。
 まとめられすぎているのだ。
 少年時代の回想シーンは銀残し(?)、現在はカラーという区分けもテクニックが際立つだけのような感じがした。いや、映像は良いのだ、確かに。

 話も出来すぎている。というか、展開に違和感をあった。
 信じられなかったのは、刑事の岡田准一が昔の幼なじみと再会し旧友を暖めた翌日にその幼なじみが殺されたことを知り現場検証に行くシークエンス。
 普通の感覚なら、自分の知り合いであること、昨日会ったこと等、同僚に伝えるのではないだろうか。
 岡田准一が率先して事件を捜査していると、容疑者がかつての幼なじみだとわかり、苦悩、葛藤の末、ある種の隠蔽工作を行い、警察機構の中で孤立していく……なんていう展開になるのではないか。
 前日に会ってないのなら、まだわかるのだけれど。

 岡田准一と小栗旬の関係も腑に落ちない。
 同じ町に住んでいて、まったく関係を絶てるのだろうか。
 どんなに絶っていても、仲間からの情報で何をしているかくらいわかりそうなもんだ。
 岡田准一が故郷を捨てて上京し、逆に柄本佑が同じ町に住んでいるという方が展開に不自然さがないと思う。
 最後に明かされる真相もそんなことできるのか? という思い。
 どこか作り物感が鼻につく。

 役者が頑張っていると書いたが、岡田准一は少し肩に力が入りすぎていないか。
 女優陣が印象的だった。
 りりィ、長澤まさみ、西田尚美。
 木村文乃の身重姿は、知り合いの女性(30代)が結婚して妊娠するとこんな感じかなと微笑ましかった。
 ただ、安藤サクラだけはミスキャストではないか(あくまでもこの映画において、ということで)。 血だらけの床に伏せながら台詞をいうところなんて蛇女みたいでそこだけホラーになっていたような。
 老け姿も、いまいち。

 感動的に締めくくられたあとのエンディングクレジット。
 縦書きの文字が左から右に流れる。
 原案脚本が青島武と瀧本智行。では脚本は誰なのか、注意深く見ていると最後まででてこなかった。
 どういうこと?
 帰宅して公式サイトを調べてみると、原案・脚本となっている。
 単に・を省いただけか。まぎらわしい。

 「犯人に告ぐ」で注目した瀧本智行は最初から脚本だけの担当だったのか?
 当初は監督も担当する予定だったのか、途中で交代になったんではと邪推する。
 瀧本監督ならどんな作品に仕上がったのだろうか。
 



 
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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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