離婚したことについては、すべて自分が悪いのだから仕方ない。
 昨年12月に娘が入籍した(と元かみサンから報告をもらっている)。そのとき祝い金を渡そうとかみサンに連絡をとった。縁を切られたといえ、父親は父親だ。娘はかわいい。それなりの祝儀をはずまなければと考えてのこと。
 まだ結婚式を挙げてないから急がなくていいという返信。

 年が明けてから、再度連絡をとった。一応金はとっているけれど、最近金遣いが荒くなっているので、手をつけてしまう前に渡しておきたい。会えないか?
「〇〇(娘の名)は、お父さんには(大学卒業後)専門学校に行かせてもらったから、そのお金はお父さんが使って、と言ってる。私もそう思う」という返信。

 あなたは元気になったからいいけど、わたしはまだ立ち直っていないの。
 そんなメールをもらったことがある。

 離婚したことは仕方ない。でも、なぜもっとかみサンに優しくしてやれなかったのか。最近そればかり後悔している。

     ◇

2004/07/30

 「白いカラス」(新宿武蔵野館)  

 ロードショー最終日に劇場に駆けつけた。  
 その肌の白さゆえ白人と偽って生きてきた黒人男性の過去と現在を描く物語。重たいテーマで、普通ならパスしてしまうシロモノなのだが、白い肌を持つ黒人というところに反応した。  

 世の中に〈アルビノ〉と呼ばれる人がいる。色素欠落症。透きとおるような白い肌、髪や眉毛、睫なども同様。ごくたまに街でみかける。うちのかみサンもその一人だ。ただかみサンの場合、髪や瞳の色から一見北欧の白人っぽく見える。よく外人に間違えられた。
 つきあっていた頃、居酒屋でふたりが日本語でしゃべっているにもかかわらず、隣の男性(グループの一人)から英語で話しかけられた。そんなことが何度かあった。いかに肌が白く、髪が金髪風でも、顔はどうしようもなく日本人なのだから、わかりそうなものなのに、日本人の外人崇拝主義が感じられとても腹立たしい思いをしたものだ。ちなみ僕が初めてかみサンと出会ったとき(ある講座で同じクラスだった)は「ったく、髪なんか染めちゃって」というものだった。小学校や中学校時代は黒髪ではないということで、髪を黒く染められたり、黒髪のかつらをかぶされたりと何かと大変だったらしい。茶髪、金髪当たり前という現在では信じられない行為である。
 
 まあ、そんなことがあって、当時、ふと黒人でもアルビノの人はいるのだろうかと思ったことがある。いるとしたら、彼(彼女)のアイデンティティはどこにあるのか。  
 「白いカラス」に興味を抱いたのはそんな経験があったからだ。  

 大学教授のコールマン(アンソニー・ホプキンス)は講義を欠席した黒人学生に対して差別用語を使ったと教授会で弾劾され辞職するはめに。ショックで妻は急死。その憤懣を吐き出すべく、コールマンは今や世捨て人となっている作家ネイサン(ゲイリー・シニーズ)を訪ね、自分の半生を本にまとめてくれと申し出る。ネイサンは断る。とはいえ、お互い何か共通するものを感じたのか、その後二人は友情を深めることになる。  
 やがてコールマンはフォーニア(ニコール・キッドマン)と恋に落ちた。悲惨な家庭環境で育ち、自分の過失により愛児を失い、今は夫(エド・ハリス)の暴力から逃れて掃除婦として孤独に生きる女。ネイサンの忠告を無視し、ファーニアとの逢瀬を楽しむコールマン。今でもファーニアをつけまわす夫と対峙し追い返したコールマンは、この人生最後の恋の相手にすべてを投げ出す決意をする。これまで誰にも明かしたことがない自分の出自を語りだす……  

 つまりコールマンは肌が白い黒人で、学生時代に黒人であることによって、深く愛し合っていた恋人に去られた辛い過去を持つ。以来白人として生きる決意をし、家族を捨てた。  
 回想シーンでは、コールマン青年(ウェントワース・ミラー)が恋人を家族に紹介し楽しい時をすごして家路についた電車内での恋人の一言が印象的。愛する人の母親と笑顔で会話していたとは思えないような残酷な仕打ち。コールマンがその後白人と生きる決心をする要因となるのだが、恋人の態度は男からするとまるで理解不能。絶対女性不信になるだろう。
 なぜコールマンが白い肌に生まれたのか、映画は特に説明していない。家族も皆、いわゆる黒人顔をしていない(アフリカンではないということ)し、肌もそれほど黒くない。だからこそ恋人の態度というものが信じられない。アメリカではそれほどまでに黒人差別がひどいということなのか。本当のところ、日本人の僕には映画に宗教と人種問題がでてくると本質的な部分でお手上げになる。

 フォーニアが初めてコールマンと出会い自宅でベットに誘うシーンはかなり〈くる〉。ニコール・キッドマンの美しさが際立っていた。映画の見どころの一つ。
 ストーカーのごとく妻を追いかけるエド・ハリスがその性格とは裏腹に見た目はとても頼もしく、重厚だ。最初はエド・ハリスだとはわからなかったほど。
 ラストのネイサンとこの夫の会話の真意はどこにあるのか。それが一番の謎だ。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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