1999/07/05

 「新幹線大爆破」(ビデオ)

 公開当時、国鉄に撮影協力を得られなかったということや日本の特撮で初めてシュノーケルカメラを使用したことで話題になった。同じ新幹線を扱ってやはり国鉄に協力を無視された同時期公開の「動脈列島」(東宝)より内容的に評論家に評価され、その後フランスで大ヒットした1975年の東映作品である。
 当時から観たいと思いつつ、結局今回初めてのビデオ鑑賞となった。

 「ウルトラQ 地底超特急西へ」と「スピード」を足したような内容で、時速80km以下に減速すると爆破する爆弾を新幹線にセット、乗客1,500名の身代金を奪おうとする犯人側、事故を回避しようと努力する国鉄側、犯人の検挙に奔走する警察側と、それぞれの話がきちんと描けていて、ストーリーそのものはとても面白かった。

 しかし演出のセンスを疑ってしまうところが何ヶ所もある。
 たとえば冒頭の犯人グループの一人、山本圭が夜間、北海道の夕張で機関車に爆弾をセットするシーン。バックには女性スキャットの甘い、なかなか印象的な曲が流れるのだが、これが画面にちっともあっていない。ここは音楽なしに第1の犯行を丹念に描写すべきではなかったか。
 それから国鉄側の人物紹介があって、新幹線操作システムの解説がナレーションで入るのだが、これも唐突な感じがする。台詞で説明できなかったのだろうか。
 音楽に統一感がない。その場その場に合わせて適当に作られている気がしてならない(1曲1曲は印象深いのに)。
 ズームイン、ズームアウトを多用するカメラワークも気になる。

 この映画、タイトルの新幹線が爆破されるかどうかのサスペンスより、主犯高倉健と警察とのやりとり、爆破回避後の逃亡劇の方がメインの物語なのであった。さすが健さん、どの映画でも同じ健さんだけど、存在感が違う。
 ラスト、追いつめられた高倉健が射殺されるシーンでストップモーションになって音楽が…当然冒頭のスキャットが流れるかと思いきや、これまでに聞いたことがない、そこだけに用意された音楽が使用されるのだ。やはりセンスがない。
 今、リメイクしたら面白いんじゃないかと思うのだが。

 豪華キャストの誰もがみんな若かった。そしてみんな熱い。暑苦しいほどだ。70年代の映画(TV映画を含む)の特徴と言えるかもしれない。

     ◇

1999/07/06

 「催眠」(キネカ大森)

 優待券を利用してキネカ大森で「催眠」を観る。
 監督・落合正幸の前作「パラサイト・イブ」は最低な出来だった。「パラサイト・イブ」は原作自体が傑作であり、とても映像的なので読んでいる最中も映画(映像)化についてあれこれ想像していた。葉月りおな主演で一気に興味をなくし、ビデオになっても手にとらなかった。TVで放映されて初めて観たのだが、小説のクライマックス前でエンディングをむかえてしまう作りに唖然としてしまった。売りである特撮(CG)も葉月のバーチャルヌード、疑似乳首のために使われたようでなんとも哀しい。

 ただ小説を先に読んでいなければどうだったかと最近思うようになった。先に小説を読んでしまうとどうしてもイメージを限定されてしまう。どんなにピュアな気持ちで望んでも原作と映画化作品を比較してしまうのだ。
 落合監督の第2弾は新進作家・松岡圭祐のサイコミステリの映画化である。今回は原作を読んでいないから、何の先入観もない。原作の良さを活かそうが殺そうが知ったことではない。要は映画として面白いかどうか、である。

 映画自体はホラー映画として最後までだれずに観られた。それなりに恐いし、物語に引き込まれた。
 しかし、全編にただようグロテスク趣味に辟易する。骨が飛び出し異様に折れ曲がった足、バックするトラックと壁に挟まれて砕かれる顔、釘に打ち抜かれた額、ピストルの弾が貫通する頭、そのものずばりを特殊メイクで再現させる。何とも趣味が悪い。
 ホラーっぽいサイコミステリという認識でこの映画を観たので何の解決もされないラストはどうかと思うし、あまりにも後味が悪い。
 オープニングタイトルも最近のTVドラマのそれが凝った作りで眼を見張るものが多いというのに、いつの時代?と思わせるほどのダサさなのである。TV出身の監督でしょうに。

 それから、これは意識してだと思うが、背景から日本的なものを排除している。屋内、屋外、すべてにおいて欧米風。街の風景も、ロケは都内なんだろうが、全く東京を感じさせない切り取り方。看板までなるべく日本語を使わせない。
 洋画しか観ない若い観客への配慮なのだろうか。それとも単なる監督の趣味か。

     ◇

1999/07/07

 「あの、夏の日 とんでろじいちゃん」(丸の内シャンデリア)

 久しぶりの大林映画だ。尾道3部作以降、いくつかの作品を観て、大林映画は卒業だと思っていた。
 新尾道3部作も別に興味はなかったのだが、この最終作「あの、夏の日…」は某サイトの映画批評で絶賛されていて、原作が山中恒ということもあって劇場まで足を運んだ。
 相変わらずの大林調で懐かしいやら、うんざりするやら。映像以外でやたら饒舌なのが気になった(尾道市市制100周年に対する監督の言葉とか、病魔と戦う少年(少女だったか?)への励ましの言葉とか)が、物語自体はよくできていた。
 冒頭から快調な語り口。小学生の一夏の冒険、異文化との出会い、年上の少女へのほのかな想い……。これはまさしく「ぼくがぼくであること」ではないか。
 小林桂樹と菅井きんがうまい。
 病床のじいちゃんと少年との会話、特にじいちゃんの孫へ生きることに対する喜びを伝える言葉に目頭が熱くなった。これまで反感ばかり覚えた松田美由紀もお母さん役がぴったりはまって好印象。

     ◇

1999/07/14

 「スターウォーズ エピソード1 ファントムメナス」(日本劇場)

 ついに観たぞ!スターウォーズ最新作。1作目が日本で公開されてから21年目に新シリーズが観られるなんて思っていなかった。まさしくサーガ。
 アメリカ公開直後の批評が賛否両論なんで、少々心配だったが全くの杞憂だった。
 一番うれしかったのは海底王国が登場したこと。SWでは砂漠、「帝国の逆襲」では氷の惑星、「ジェダイの復讐」ではジャングルや森の惑星が舞台になっていたから、次のシリーズでは水や炎の惑星が描かれるにちがいないと勝手に想像していたのだ。

 この20年の技術の進化はすさまじい。主要キャラクターの一人がCGで描かれているのには驚きだ。全編目を見張る映像の連続ではあるが、哀しいかな、前シリーズの時のような「この絵はどうやって撮影したのだろう」というドキドキ感、わくわく感はなかった。すべて「CG、デジタル合成」の合い言葉で納得してしまうのだ。本作の賛否両論ってたぶんにこんなところにあるのではないだろうか。
 ポッドレースは「ジェダイの復讐」のスピーダバイクに優るとも劣らない血沸き肉踊るシークエンスだ。

 アナキンと母親との別れ、その時母親が言う「運命は変えられない。夕陽を止められないように」は「帝国の逆襲」ハン・ソロとオーガナ姫の「Ilove you」「I know」に次ぐ名台詞。

     ◇

1999/07/12

 「ケイゾク」(ビデオ)

 現在のTV界ではテレビ映画というジャンルが確実に消滅している。
 80年代の後期、フィルムからビデオに変換する方式がテレシネからFtoT方式になって画像が飛躍的に鮮明になった。フィルムのような暗さはなく、かと言ってビデオの、美しいけれど、どことなく画像が薄っぺいというものでもない。そんな新しい映像で90年代はテレビ映画が生き残っていくのかと思われた。が、VTR機材すべての機能の向上で、あっというまにFtoT方式のドラマが ビデオに取って代わってしまったのだった。

 今、フィルム撮影によるドラマは一部の子供向け特撮番組と時代劇しかない。「水戸黄門」がビデオになった時は驚いたものだ。
 それに関係しているのかどうか、70年代の、たとえば「傷だらけの天使」「探偵物語」、「大都会」シリーズみたいなアクション系の番組がまったく作られなくなってしまった。
 しょせんビデオはビデオでしかない。フィルム特有の陰影のある映像、手持ち撮影による16mmカメラのブレ感覚等々VTRでは表現することができないのだろう、とあきらめていた。
 ところが最近ビデオであの表現をしようと試みているドラマがみられる。その発祥は日本テレビの「金田一少年の事件簿」から始まった一連の劇画原作のドラマだ。この劇画シリーズ(?)にフジの「踊る大捜査線」のテイストを加え、ミステリ仕立てにしたのがこの冬に放映された「ケイゾク」だと思う。

 描かれる事件の設定は稚拙だが、何より中谷美紀と渡辺篤郎演ずる柴田&真山のキャラクターが出色である。
 中谷美紀は鶴田真由の後釜として日石のCFで登場したとき、長い髪と整った美顔、箒を使ったダンスが印象的だった。しばらくは本当に鶴田真由の二番煎じみたいな感じでCFで活躍していたが、女優として確固たるイメージを作りたかったのか、出演するドラマ、映画で濡れ場のシーンが多かったような気がする。そんな彼女が痛々しかったが、「ケイゾク」で一皮むけたと思う。
 渡辺篤郎はヒロインが柴田純という名前からか、ちょっと「大都会パート2」の松田優作を意識したようなツッコミ役を楽しそうに演じていた。
 二人のボケ&ツッコミも愉快だが、捜査過程におけるレギュラー陣の会話がむちゃくちゃおかしい。
 フィルムの陰影を思わせる映像にも酔える。捜査二課の蛍光灯の青を基調とした色彩設計は村川透+松田優作コンビの「遊戯」シリーズを彷彿させる(撮影:仙元誠三)。最終回の銃撃戦ではビデオでもアクションが撮れるのかと驚愕したものだ。

 映画化に期待したい。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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