1999/11/02

 「ワイルド・ワイルド・ウエスト」(試写会 東京厚生年金会館)

 月刊「スターログ」誌新創刊号に砂漠の谷から巨大なクモみたいなロボットが出現し、それを見上げる小さな人間の写真が掲載されていた。それが今度お正月映画として日本で公開される「ワイルド・ワイルド・ウエスト」で、最近では珍しい西部劇と知り、興味がわいた。別に西部劇だからというわけでなく、西部劇とSFXの融合に新しい作劇を感じたのだ。監督が「MIB」の人で、主演はウィル・スミスということも期待は大きかった。
 その試写会があるってことで東京厚生年金会館へ行ってきた。

 タイトルバックは凝った画面構図と西部劇らしいテーマ曲でなかなかの始まりであったが、その後はちっとも盛り上がらない。チラシには主役ふたりのジョークの連発とあるが、客は全く反応なし。僕自身はそれなりに笑えたけどその声がむなしく劇場内に響くのだ。
 肝心のローテク風SFXはやけに合成が目立ち、今いちノレなかった。いや、メカの出来、動き自体はよくできている。たとえば昔のアクション映画なので、列車の上、飛行中の機内なのがロングではスタントの実写、アップではリアプロジェクションを使用して、暗い背景をバックにして役者が演技することが多々あった。その場合、暗い背景がいかにも嘘っぽくて、白けたものだ。同じことがこの映画のSFXに言えるのである。
 随所に映画のパロディがみられた。「駅馬車」、「スピード」、「ET」、憶えているだけでとりあえずこれだけ。他にもたくさんあった気がする。(まっ、パロディなのか単なるパクリなのか)  クライマックスもそれなりのもので興奮も高揚感もなかった。そんなわけでエンドタイトルに流れるウィル・スミスの主題歌につきあう気にもなれず、足早に劇場を後にしたのであった。本当にこの映画がこの夏、アメリカで大ヒットしたのだろうか?

     ◇

1999/11/03

 「リトル・ヴォイス」(シャンテ・シネ)

 「ブラス!」の監督マーク・ハーマンによるある種<スター誕生>的ストーリー、ヒロインがスタンダードナンバーを熱唱する音楽映画だと知り、興味がわいた。
 映画サービスデーということもあるのだろうか、やはり人気がある映画はすごい。1時間前なのにすでに列ができていた。

 予告編が終わり、本編が始まった。タイトルが「デザイア」と出て、原題と邦題がずいぶん違うなと思った。海辺にユアン・マクレガーが歩いてくる。浜辺になぜかエクレア(?)が置いてある。手にとって、ながめるユアン。クリームをなめてみる。一気にそれをほうぶるとなんと針がユアンの頬を突き刺す! 針には糸がついていて、ユアンはそのまま海にひきずられていき消えてしまうそこでキャスト・スタッフのクレジットが流れる…。「人間釣り」のオチというわけか。???状態でいると今度はちゃんと「リトル・ヴォイス」が始まったのだった。 後で知ったのだが、これは同時上映の短編映画でした。

 この映画はイギリスで大ヒットしたミュージカルの映画化だという。ヒロイン・LVを演じるのは舞台と同じジェイン・ホロックス。全く知らない女優でだからこそ役柄そのものを素直に受け止められ、最初に登場した時の内気でほとんど人と会話ができない様と一夜だけのワンマンショーでお得意のナンバーを<なりきり>で歌う様のギャップが激しく、こういうのを鳥肌がたつ状態というのだろうか、あまりの感動で涙がでてきた。この瞬間に立ち会えただけでもこの映画を観る価値があったと言うものだ。
 映画は単純なスター誕生物語ではなかった。確かにこの内気な娘がショービジネスの世界で生きていけるとは思わない。にもかかわらず彼女の才能に目をつけた母親や二流のマネージャー(ブレンダ・ブレシン、マイケル・ケイン、ともに好演。巧い!)が一攫千金を夢見て<売り出し>にやっきになって、はかなくも夢やぶれるところはあまりに急な展開だが映画というメディアを考えれば仕方のないことか。
 一体どんな結末になるのだろうかと息をのんだ火事のシークエンス後の、LVが母親にくってかかるシーンは圧巻。LVに恋心を抱く純朴な青年役のユアン・マクレガーもいい味だしている。
 サウンドトラックが欲しくなった。

     ◇

1999/11/19

 「黒い家」(丸の内プラゼール)

 森田監督の前作のサイコミステリ「39 刑法三十九条」が佳作だったので、この「黒い家」は原作の秀逸さもあり、とんでもない傑作になりそうな予感がしていた。
 今回も森田監督流の裏切りがあるのだけれど、僕にとってそれは納得のいかないものなってしまったのがつらい。
 決してつまらない作品ではない。たぶん原作を知らない人が観れば、文句なしの面白さかもしれない。

 映画化に対して一番期待していたのは物語の要となる性格異常の夫婦を大竹しのぶ&西村雅彦がどう演じるかだった。実際ふたりは異常ぶりを楽しむかのように演じていて、それはそれでいい。ただ、冒頭、大竹しのぶが最初に主人公に電話をかけてきた時からいかにも性格異常です、といった感じで、そこから僕の映画「黒い家」に対する違和感が生じてしまった。
 当初夫が異常で、妻の方は夫に虐げられている存在という印象を主人公にも、観客にも与えないとクライマックスの圧倒的な恐怖に至るまでのサスペンスが成り立たないと思う。それが第一の不満。  第二の不満はあまりにもケレン味たっぷりなカメラワークに対して。「39」は(静)で本作は(動)を狙ったと森田監督が公開前に新聞のインタビューに答えている。だからなのか「39」では抑制が効いて、効果的だった森田流の映像の遊びが逆にくどくなって少々目障りだった。
 もしかすると原作そのものの怖さは映像で表現できないと意識した結果なのかかもしれないし、それを見越して役者たちに過剰な演技をつけたためか、全体的にブラックユーモアの味わいに包まれ、笑える映画に仕上がっている。
(保険契約のつぶし屋・小林薫と大竹しのぶの会 話の中で、大竹が約款を(やかん)と聞き違えるシーンがある。主人公が恋人を救うため黒い家に忍び込み、床をあけると小林の死体の横にひときわ大きいやかんがちゃんと置いてあるのだ。緊迫したシーンで、思わず笑ってしまった)
 森田芳光をあれこれ語れるほど彼の映画を観てきたわけじゃないけど、2作続けて鑑賞して思うのは、テーマよりテクニックを重要視して、素材を選定する姿勢だ。市川崑の系列に入るかもしれない。
 風景の切り取り方に独特のものを感じる。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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