17、18日と久しぶりに郷里に帰る。
 薮塚温泉で疲れを癒した。
 もちろんお目当てのへびセンター(正式名称はジャパンスネークセンター)で、リアル・ジュラシックパークを楽しんだ。今回は三日月村にも行こうとしたら、休みで断念。

 20年前の劇場(映画館)、今ほとんどなくなっている。
 唯一現在もあるシャンテシネだって、新しいTOHOシネマズが完成すれば、お役目御免になるのだろう。

          * * *

2000/03/31

  「雨あがる」(日比谷 シャンテシネ)

 今日で上映が終わると知って、あわてて観てきた。それほどのキャパシティではないけれど、客はかなり入っていた。やはり最終日だからだろうか。

 観終わって、初監督の小泉氏には悪いけど、黒澤監督の演出で観たかった、というのが率直な感想。
 開巻、どしゃ降りの雨に濡れるかやぶき屋根の堂々としたたたずまいに心洗われる。「羅生門」の迫力と「赤ひげ」の静寂さを兼ね備えたオープニング。
 木賃宿で繰り広げられる旅人たちの飲めや唄えやのシーンは「どん底」、雨上がりの朝、主人公が一人森に入って剣術の稽古をする姿は「七人の侍」の久蔵、若侍たちのけんかに割って入るのは「椿三十郎」と、黒澤映画のワンシーンを思わせる引用はその後もたびたび出てくる。
 だからというわけではないが、黒澤監督だったらどう撮るだろうか、とカメラワークが気になって仕方なかった。

 黒澤監督の遺作(脚本)を黒澤組のスタッフが結集して製作された映画だから、映像のテイストは過去の黒澤映画そのもの。ただ違うのが画の切り取り方(とらえ方)だったように思う。カットの構図とつなぎの間が微妙にずれているようで、始終違和感を抱いていた。黒澤監督の場合、カットの一つひとつにもっと重みが感じられる、というのだろうか。

 まあ、しかし、ほのぼのとした雰囲気の時代劇もいいものだ。こういう世界は大好きだ。
 寺尾聡が人のいい剣の達人を好演。柔と剛を巧みに使い分けていた。
 「御法度」同様、この映画でも刀の持つ気品、重厚さがちゃんと表現されている。殿様がさやから抜いた刀を手にしてうんちくを述べるところは何ともいえない心持ちにさせる。僕はこういうシーンにうっとりしてしまう。
 殿様役の三船史郎は演技はへただが、その豪快さ、のぶとい声が魅力。この映画においてはまさに異彩を放つキャラクターになっていた。
 従者役の吉岡秀隆は時代劇調台詞の滑舌が悪く、ミスキャストに思われたが、ラスト近く、殿様の「浪人を連れ戻せ!」の命に満面の笑みで応えるあたり、彼自身の持つキャラクターが生きた。
 藩への取りたてを断りにきた家老に対して、宮崎美子演じる妻の毅然とした態度、夫への信頼を強く感じさせる台詞に目頭が熱くなる。

 ラスト、また旅に出た夫婦が山道を歩きながら、海を望むその絶景に思わず立ち止ってしまう。映画のテーマを画として凝縮した名シーンである。
 キャメラがパンして観客に見せるこの風景、高台から見る海や空の青さがもっと鮮やかで目にしみるような美しさったらもっともっと晴れ晴れした気持ちになっただろう。


2000/03/30

 「ボイスレター」(渋谷東急)

 パトリック・スウェイジ主演のミステリ映画という認識しかなかった。最後まで犯人がわからないと某映画評にあったので、「L.A.コンフィデンシャル」「交渉人」みたいな謎解き(犯人当て)の面白さが味わえるのではないかと思ったもののあまり期待していたわけではない。
 それほど話題になっている映画でもないのに、渋谷東急最終回は多くはないけれどそれなりのお客さんでびっくり。

 4人の女性とボイスレターのやりとりをしている無実の死刑囚が、看守のイタズラによるテープの入れ替えで、4人のうちの誰か(嫉妬深い女性)から恨みをかってしまうというのが発端。
 その後、無実が証明され、晴れて出所した主人公が、お詫びと釈明のために、女性たちのもとへ訪ねることになるのだが、最初に訪ねた女性が何者かに惨殺される。無罪を勝ち取ってくれた女弁護士も同じ手口で殺され、直前に被害者に会っている主人公はまたもや殺人の容疑で警察に追われるはめにおちいってしまうのだ。
 果たして主人公は真犯人を探し出すことができるのか?

 主人公があっけなく出所するまでは事件に巻き込まれる段取りでしかないから、殺人事件の目撃者がでてきて、安易に判決が覆されるくらいのものなら、そもそもどうして無実の主人公に死刑判決がくだったのかなんて考えてはいけないのだろう。
 当初4人の女性から犯人を探しだすのかと思っていたら、二人は中盤までに殺されてしまって肩透かしをくった感じ。
 残った二人の女性、一人は「出所したあなたに興味はない」と早々に主人公に別れを切りだし去っていき、もう一人は主人公の不実に怒り狂いながらも犯人探しに行動をともにする。

 この展開なら〝映画の法則〟からいっても犯人はわかったようなもの。だが、クライマックスにむけいろいろとひねりをきかせてこちら判断をぐらつかせる演出が心憎い。
 当てがはずれた僕は終盤一気呵成にラストまでなだれこむ展開に犯人外部説まで唱えしまう始末。 
 やはり真犯人は最初に思ったとおりだったが、窮地に追い込まれた主人公の救われ方にかなり驚いた。序盤に張られた伏線がこんなところで効いてくるとは!すっかり忘れていました。「お見事!」と唸るしかない。
 バッドエンドを予想していた僕としては、納得のいく決着のつけ方になった。

 渋さの増したオールバックのパトリック・スウェイジは一見スティーブン・セガールみたい。


2000/03/24

  「スペーストラベラーズ」(試写会 新宿東映)

 19:00開場の試写会に30分も早く着いたにもかかわらず、会場前から横道へすでに行列ができていて、裏道まで続いていた。お客さんはというと、中にはカップルもいるけれど、ほとんどは女性の二人連れだ。さすが金城武人気。
 「踊る大捜査線-The Movie-」の本広克行監督の満を持した劇場用映画第2弾ということで一人で行った僕はほとんど場違いという感じ。

 銀行強盗の話なのになぜ「スペーストラベラーズ」なんてSFドラマっぽいタイトルかというと、強盗3人組の一人が大のアニメファンで、彼が今ハマっているアニメが「スペーストラベラーズ」という番組。これが後で物語に大きくかかわってくるのである。そのオリジナルアニメも挿入されてなかなか興味をひくオープニングとなっている。

 孤児院出身の3人組(金城武、安藤政信、池内博之)が用意周到のもと銀行強盗を企てるが、行動が次々と裏目にでて、人質をとってたてこもらざるをえなくなる。銀行を包囲した警察も情報が錯綜して犯人を特定できない。そこで3人組はたまたまその場にいあわせ人質になったテロリストの指示を受けて、他の人質たちも仲間に引き入れ、偽の情報を流し、警察を混乱させる計画にでる……というハチャメチャコメディ。「踊る大捜査線」の世界を犯人側から描いたと言えようか。
 芸達者な役者(筧利夫、鈴木砂羽、甲本雅裕、武野功雄、深津絵里)を揃え、その絶妙なコンビネーション、ドタバタぶりに会場は爆笑の渦だった。爆笑の後、拍手まで飛びだすのだからかなり大受けだ (ロングラン中、2番館で観た「踊る大捜査線」の観客の反応を思いださせる)細かいところでいろいろと不満はあるがクライマックスまでは、とにかく笑わせてくれて大いに楽しめた。
 ところがSAT(特殊急襲部隊)の強行突入で仲間一人を失った二人が「明日に向って撃て」よろしくピストル片手に警察に立ち向かって行く姿(俯瞰のストップモーションで捉えた彼らの引きの絵は印象的)の後のエピローグには失望してしまった。

 人質の一人で3人組に特にシンパシーを抱いた女子銀行員が、警察隊に突入していった二人(その後どうなったかは全く語られない)に想いをはせる感傷的なシーンがかなり長く続く。観客を感動させようという意図がありありだ。
 本広監督は笑いの後に必ず感動(泣き)を入れないと作品として成り立たないという信念があるのだろうか?「踊る大捜査線」も事件が解決してからの長い長い感動エピローグに辟易したもんだ。
 感動とか泣かせがいけないというわけではなく、とってつけたような展開だからとても残念に思うのである。今の若い人はこういうのが好みなのだ、これがヒットの要因さと言われてしまうと返す言葉がないけれど。

 人質も仲間に引き入れ、互いの友情も芽生えたことだなんだから、人質と強盗団が最後まで力を合わせ、いかに何もなかったように警察の包囲網から逃げ出すか、そのスリルとサスペンスをクライマックスにもってくるべきではなかったか。テロリスト役の渡辺謙が途中退場してしまったり、金庫の中に退避してしまった支店長(大杉漣)と警備員(ガッツ石松)が最後まで主役にからまないうなんて、全くもってもったいない。
 「踊る大捜査線」を知っていればもちろんのこと、知らなくてもかなり楽しめる映画ではある。

     ◇

2000/03/20

  「ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer」(ニュー東宝シネマ1)

 TVシリーズ「ケイゾク」が正式に映画化されるのを知って、一番期待したのは、方向性もタッチも全く違うけれど「L.A.コンフィデンシャル」みたいな上質なミステリ映画の誕生だった。
 柴田と真山の凸凹コンビ(および捜査二課メンバー)によるギャグの応酬、独特な映像テクニックはそのままに本格的な(本格派ではない)ミステリ映画になったら、日本映画史に残る斬新なものになるんじゃないかと思ったのだ。

 タイトルに「Beautiful Dreamer」なんておよそ「ケイゾク」に似つかわしくないサブタイトルがついてがっかりきた。「コナン」や「金田一少年の事件簿」みたいなストーリー(南の島に関係者が集まって一人ひとり殺されていく)も期待をしぼませるのには十分だった。
 堤幸彦監督は自身が演出したTVドラマ「金田一少年の事件簿」の映画化作品でも舞台を香港にして一大ロケーションを敢行したのは記憶に新しい。TV出身の監督にすれば、映画はやはり〝お祭り〟<フルコースメニュー><見栄えがいいもの>という認識なのだろうか。装飾を豪華にすればいいという問題でもないと思うのだけど。
 映画だからこそ、日常(「ケイゾク」の舞台は都会がよく似合う)に潜んだミステリアスな犯罪とその解明の模様を二転三点する練り込んだ脚本と独特な映像でフィルムに構築して欲しかった。
 クスクス笑いあるいは大爆笑の中で、クライマックスに向けての謎解きの伏線を見逃(聞き)さないように、一時もスクリーンから目が離せない。で、あっというドンデン返しがあって真犯人がわかる仕組み。僕はそういう展開をのぞんでいた。
 真犯人がわかってからはハードボイルドタッチ(かつての遊戯シリーズみたいに)で警察VS犯人の戦い(銃撃戦)を描いてもいい。

 映画は昨年末に放映された「ケイゾク/特別編」の後日談として始まる。
 上映時間約2時間の3/4(1時間30分)は映画用に新たに設定された事件がTV同様柴田のボケと真山のツッコミで笑わせながら描かれる。犯罪のトリック自体は稚拙なもので、始まっていくらもしないうちに犯人がわかってしまったのはちょっと残念だが 「ケイゾク」の雰囲気はうまく表現されている。これはこれでいい。ただこれだけのエピソー ドでラストまでひっぱるのは無理というもの。当然事件が解決してから大きなひねりがある。

 問題なのはそのラスト30分だ。TVシリーズから執拗に続いている殺人鬼・浅倉と真山の対決が描かれ、やっと戦いに終止符をうたれた(らしい)。が、これが、どうにもよくわからない展開なのだ。
 このエピソードはそれまでの物語を拒否するかのような形で追加され、TVシリーズを知らない観客はもちろん、観ていた人だって、朝倉が何者で何をしたかったのかわからない。
 観客に媚びたあまりに説明過多な浪花節ラストもイヤだけれど、監督の一人よがりなわけのわからないものも困ったもんだ。TVシリーズ、スペシャル、映画と観てきて、何よりスタッフがなぜあそこまで浅倉に固執するのか僕にはわからない。

 「ケイゾク」の凝った映像はTVドラマの中でも特筆ものだろう。ビデオでハードボイルドが撮れるというのは何とも心強かった。TVは名キャメラマンを生み出せなかったと言われて久しいが、堤幸彦の片腕として数々の作品に参加している唐沢悟はその範疇に入るのではないだろうか。
 かなりフィルムの質感に迫った映像設計で、「ケイゾク」の映画化はその点でも期待が大きかった。ところが、TVと同じカメラワークでもどうもキレが感じられないのである。「ケイゾク」の映像はビデオだからこそ堪能できるもの、逆の意味でフィルムとビデオの違いを思い知った。

 木戸彩(鈴木沙理奈)の元恋人に大阪弁で啖呵をきるところはゾクゾクきた。

     ◇

2000/03/08

  「DEAD OR ALIVE 犯罪者」(ビデオ)

 深作欣二監督の「仁義なき戦い」シリーズはフォローしなければと思いつつ、ずいぶん前に第1作のビデオを借りて以来ご無沙汰している。やくざ映画が好みでないということもあるが、なにより出演者の顔ぶれに躊躇してしまうのだ。
 菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫…一人ひとりは好きな俳優なのに一緒になるとあまりに濃すぎて引いてしまう。

 70年代にブームを巻き起こした実録やくざ路線は劇場用としてはすたれてしまったが、中国マフィア、台湾マフィアとの抗争を描いたニューウェーブものがオリジナルビデオとして人気を博している。その手のビデオにおける2大俳優とも呼ぶべき竹内力、哀川翔が初共演し、バイオレンス描写に定評があって、現在邦画界で最もエネルギッシュ に作品を発表している三池崇史がメガフォンをとったのがこの映画である。
 竹内力、哀川翔と聞いただけで、胸焼けをおこしてしまいそうだが、公開されてから話題沸騰の衝撃のラスト見たさにさっそくビデオを借りてきた。

 新宿歌舞伎町を舞台に、地元やくざ、中国マフィア、中国残留孤児3世グループのギャング団の三つ巴の抗争に一匹狼の刑事がからむ。暗殺、報復、裏切り、そして殺戮。よくあるストーリーではあるが、最後は妻子を殺された刑事(哀川翔)と仲間を失ったギャングのボス(竹内力)の一対一の戦いとなって、ボルテージは一気にたかまり、衝撃のラストをむかえるところが新機軸だろうか。いつかどこかで観た映画の1シーンが様々に引用されている。
 海沿いの河口べりでうんこ座りした竹内と哀川がカメラ目線でカウントを数え、本編が始まってからのバイオレンスとエロスに満ち溢れた猥雑な映像フラッシュは、バックに流れるヘビメタとシンクロしてかなりの興奮もの。
 プロローグが終わると、逆にカメラは固定され、ほとんど1シーン1カットのような雰囲気で静かに役者たちの演技を凝視する。で、一癖二癖ある役者たちが各々楽しんで自分の役を演じているのが何とも愉快だ。
 冒頭だけの出演にもかかわらず印象度バツグンの麻薬中毒の中国マフィア・大杉漣。石橋蓮司のどこかぶちぎれたやくざの親分。ギャング団NO.2として確かな存在感を見せる小沢仁志。
 屋上で笛作りに精を出す警察署長の平泉成。本田博太郎のやくざとつながっている小心刑事(相変わらずの怪演ぶり!)。子連れの刑事が何とも情けなく生活感あふれる寺島進。
 中国マフィアの親分に扮した鶴見辰吾など、流暢な中国語を駆使して、途中まで誰だかわからなかったほどだ。刑事の、ちょっと疲れた妻をけだるそうにこれまたリアルに演じるのは杉田かおる。画面上で一緒になることはないが、この二人の共演は「金八先生」以外では初めてではないか。
 殺伐とした映像が続く中、ギャング団のボスの弟がアメリカ留学から帰ってきて、仲間たちとパーティーに興じる雨の降る干潮時の海岸風景に、やるせない詩情を感じた。

 マジで考えていけないのだろうが、ラストはの戦いは竜虎の決戦(あるいは「怪竜大決戦」)なのか? とすると竹内力の投げる球が説明できるのに、と思ったら、彼の名前は龍というのだった。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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