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1999/12/07

 「金城哲夫ウルトラマンの島唄」(上原正三/筑摩書房)

 発売前に特撮雑誌等での宣伝、告知といったものがなく、突然上梓されたという感じ。「ウルトラ時代」を買いに秋葉原の書泉に行ったら、特撮本コーナーに本書が置いてあった、内容を確認することもなくタイトルと著者の上原正三の名前で衝動的に手にとってレジに向かっていた。「ウルトラマンティガ/ウルトラの星」のシナリオを手がけたときから、金城哲夫の本格的な評伝を手がけるのだろうと期待していたのだ。
 早く読みたかったが、先に読破しなければならない本が続いて、やっと今読んだというわけだ。

 内容は上原昭三版「月の林に星の舟」といったところか。
 「月の林…」は円谷プロゆかりの人たちが実名、仮名で登場し、実相寺氏の体験をもとにした特撮TV映画に夢中になった当時の若者たちの青春小説だった。当然、大枠は事実なのだろうが、細部のエピソードは創作であり、物語自体、フィクションとしてしてとらえた方がいい。
 それにくらべ、本書はあくまでもドキュメントである。登場人物はすべて実名であり、その中で金城氏の「Q」「マン」「セブン」の絶頂期、「MJ」の失敗、沖縄への帰郷、そして事故死までを小説風にまとめたものだ。

 特に沖縄に帰ってからの金城氏を丹念に追いかけているが、それもそのはずで上原正三が描きたかったのは帰郷後の金城氏だったとあとがきに本書ができた経緯が述べられている。
 帰郷後の金城氏を描く映画の企画があってシナリオの依頼が著者のところにきた。第1稿を書き上げ金城家にも了承をもらったが、この企画が資金難でストップしたままになってしまった。後の映画化のためにも本にまとめてみないかとすすめられて出来上がったのが本書だという。
 本にするにあたって分量的に円谷時代も追加しなければならず、関係者に取材したが、各自の記憶が違っていて苦労したという。

 特撮ものにほとんど興味を示さず、デビュー作は沖縄をテーマにした社会派ものにしたかったという上原氏がその後「帰ってきたウルトラマン」のメインライターに起用され、やがて特撮ものの大家になるのと対照的に、沖縄問題を感じさせない明るくのびやかな作風で特撮ヒーローもののヒットを連発させた金城氏が沖縄返還前後に沖縄と本土を結ぶ掛け橋となるべく孤軍奮闘し、それが自分の人生を短くさせてしまったことを思うと、運命だったとは言え、何ともやりきれない。「MJ」の失敗の責任をとって、円谷プロを辞任し、沖縄に帰った金城氏であるが、創作上の壁が「怪奇大作戦」にあったと記されている。
 天性の明るさと沖縄をテーマにしたドラマは相容れないものなのか。
 
     ◇

1999/12/12

 「青の炎」(貴志祐介/角川書店)

 成績優秀な17才の高校生による完全犯罪。それは家族(母、妹)を守るためにどうしてもこの世から排除しなければならない男を殺すことだった。綿密な殺人計画はやがて実行に移され、殺された男は不慮の死として処理される。しかし予期せぬ事態から第二の殺人を犯すことにより、緻密と思われた完全犯罪が破綻していく……。

 倒叙法によるミステリである。前半はいかにして証拠を残さず、殺人をするか、後半はどんなミスで完全犯罪があばかれるのか、読者は主人公とともに一喜一憂することになる。
 作者はそんな定番なミステリを高校生という未成年の殺人者を主人公にして、なおかつ主人公に感情移入しやすいような状況を作り、今を感じさせるロードレーサー、インターネット等の<絵になる>小道具を使って、斬新な青春小説に仕立て上げた。
 前半、主人公がインターネットや書籍を駆使し、必要な道具を買い揃え、殺人を実行する様子は実にスリリングで、映像が浮かんでくる。

 「刑事コロンボ」でコロンボが追う犯人が17歳の高校生と思えばよい。コロンボ(小説には神奈川県警の山本警部補が登場する)の執拗な追求を主人公がかわせるかどうか見物なのである。コロンボの場合、犯人側に感情移入させない作りになっているが。
 当初は沈着冷静な、少々冷酷さを漂わせていた主人公が、警察に追いつめられるにつれ、17才という年齢の脆さがでてきて、彼女に救いを求めれる様に、かつて高校生だった僕は共鳴する。

 殺人事件が露呈すれば、自分が罰せられるのはいいとしても、愛する家族に被害が及ぶのは避けたい。ゆえに決定的な証拠をつかまれる前に死を選ぶ姿は、予想していたとおりだが、印象的なラストとなった。それにしても一生証拠を隠し続けなければならなくなったガールフレンドの心情を思うと切なくてたまらない。
 自転車で疾走する主人公がむかえる衝撃的なラストというところから、中学時代に観た映画「早春」(主演ジョン・モルダーブラウン)を思い出した。

 映画化するなら、ファーストシーンはロードレーサーを駈る主人公だ。バックには主人公の心情を吐露した強烈なロック(主題歌)。回想シーンに入って、完全犯罪の顛末が描かれる(特に実行に移るまでの準備は詳細に)。殺人は義父殺しのみ。二度目の殺人はカット。後半に刑事が登場、執拗な捜査で主人公を追いつめていく。外堀を埋められ、絶体絶命になる主人公だが、警察側でも証拠が見つからない。任意の取り調べで、あとは主人公の自白を待つだけの状況になるが、主人公はあと1日猶予をくれと言う。美術室での彼女との会話、トリックのために彼女を利用しただけのはずなのに、彼女を愛していることに気づく。くちづけ、抱擁、初体験。彼女の「あなたは悪くない、逃げて」という言葉。
 ロードレーサーを駈る主人公(ファーストシーンにつながる)、猛スピードで海岸線を走り、海に飛び込むところでストップモーション。主題歌が流れジ・エンド。

     ◇


1999/12/21

 「忠臣蔵大全」(勝野真長 監修/主婦と生活社)

 昨年暮に購入した忠臣蔵本の一冊で、「元禄繚乱」が始まったのを契機に、ドラマの進行に合わせてちょびちょび読み進めてきた。辞典的活用法で読むのもたまにはいいだろう。

 本書で新たに知った事実は、吉良討ち入りに手本があったということ。
 30年前に起きた通称「浄瑠璃坂の仇討ち」といわれるものがその手本だという。奥平源八が父((内蔵助)の仇・奥平隼人邸に討ち入りした。源八は伊豆遠流の処分に付されたが、6年後、恩赦で罪を許され、その後彦根の井伊家に召しかかえられた。
 大石と参謀役の吉田忠左衛門はこの仇討ちを参考に討ち入りをしたのではないかと書かれている。 もしかした赤穂浪士たちも源八と同じ処分を期待していたのだろうか(本書は否定しているが)。

 で、思うのだが、その浄瑠璃坂の仇討ちの事件は世の関心を呼ばなかったのだろうか、芝居になって一世を風靡しなかったのだろうか。




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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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