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 拙サイト「夕景工房」はこのレビューから始まった! 文字だらけのシンプルなHP。日曜を更新日と定め、週末になると、PCに向かい、読了した本と鑑賞した映画の感想を書き綴ったものだ。この習慣はmixiにハマり、やがてブログ「もうひとつの夕景工房」に移行するまで続く。5、6年は続いたのか。
 今、やろうとしてもできない、たぶん。

     ◇ ◇ ◇

2000/01/02

 「喜劇が好きなあなたへ」(向井爽也/演劇出版社)

 〈笑い〉が好きな者にとっては格好の入門書である。平易な文章で日本の喜劇の歴史が語られている。小林信彦「日本の喜劇人」と対で読まれるべき本だ。
 おもしろいのはこの本が入門書として新規に書かれたのでなく、これまで著者がさまざまなところに書いてきた文章を集めたものであること。
 といっても、「第一部 喜劇の世界」なんていくつか重複する部分があるにせよ、日本の喜劇の発祥から現在までの流れを順を追って語っているのだから恐れ入る。(あきらかに間違いだとわかる記述もある。たとえばポール牧はラッキー・セブン出身でギャグ088ではない)
 仁輪加と大阪喜劇の関係もよく理解できた。

 第二部は「懐かしの喜劇人たち」、第三部は「豊熟のコメディアン」と、日本のかつての喜劇人、現役のコメディアンたちを取り上げているが、注目したいのは中村メイコについてかなりのページを費やしていることだ。彼女の芸能生活五十周年記念一人芝居の公演プログラムに寄せた文章だから当たり前といえばそれまでだが、僕としては小さい頃から親しんできた声優(あるいは神津善好とのおしどり夫婦)としてのイメージしかなかった彼女の本当の芸の歴史(生き方)に触れた思いだった。

     ◇

2000/01/05

 「監督、撮らずに観る」(篠田正浩/ステレオサウンド)

 今年うちの会社の「新春講演会」の講演者の一人が篠田正浩監督だからというわけでもないけれど、いい機会なので読んでみた。
 篠田正浩の名前を記憶したのは中学生の時に観た「札幌オリンピック」のドキュメンタリー映画だった。あれは授業の一環で、クラスメートたちと市民会館に足を運んだのだった。
 オープニングから印象的な映像の音楽(確かアイヌの民族楽器を使用していたと思う)連続で、非常に感動したことを憶えている。
 松竹ヌーヴェルバーグの旗手時代を知らない僕は、篠田監督といったら、あくまでも「札幌オリンピック」を監督した人なのである。
 「心中天網島」「卑弥呼」といった映画も高校生の頃観たくてたまらなかったが未だに果たしていない。
 
 さて、本書であるが、やたらむずかしい言葉で語るので最初は慣れるまで辟易ものだった。実作者が映画を評論する時は自身の経験に基づいて具体的に作品の良さまずさを指摘するものだが、篠田監督の場合はより文学的に作品の本質に迫るのである。特に宗教的立場でモノを見る。あるいはアメリカ的楽天主義、ヨーロッパ的ペティシズムといったような区分け。アメリカ映画はあまり好みではないようだ。
 小林信彦や中野翠の映画評を読むとまだ未見の映画だと必ず観たくなるものだが、本書を読んでそういう気持ちになった作品が残念ながらあまりない。唯一ぜひビデオをあたろうと思ったのが「ブルースカイ」(監督トニー・リチャードソン、主演トミ・ーリー・ジョーンズ、ジェシカ・ラング)だ。

     ◇

2000/01/08

 「忠臣蔵 -赤穂事件・史実の肉声」(野口武彦/ちくま新書)

 一度読んであまり面白くなかった印象があった。その後小林信彦の書評コラム(週刊文春連載)で取り上げられ、本書がもっと早く出版されていたら「裏表忠臣蔵」の執筆がもっと楽だったろう、というような感想を書かれていたので、もしかしたら僕の読み方が間違っていたのだろうかと思い直した。
 岩波新書の「忠臣蔵」同様購入してもよかったのだが、年末羽田図書館に寄ったら、幸いにも置いてあったので借りてきた。(以前もここで借りたのだ。)
 本書の特徴は完全なる資料第一主義という立場で赤穂事件の真実に迫っていることだろう。過去の資料文献でも信用していいもの、できないものを区分けして、当時の事件を推理していく。そして赤穂事件とは何だったのかを解き明かすのだ。だから史実の肉声なのである。昔の文献もむずかしいものは口語訳して読みやすくしてあるし、入門編としてはとても最適な参考書である。
 面白い。なぜ前回の時にはそう感じなかったろうか?

     ◇

2000/01/10

 「8時だよ!全員集合伝説」(居作昌果/双葉社)

 小学5、6年の頃、土曜の夜の楽しさといったらなかった。翌日が日曜ということもあったが、とにかくおもしろいTV番組にあふれていた。何よりの楽しみは夜8時のTBSテレビ「8時だよ!全員集合」それに続く「キー・ハンター」で、テーマソングを聴くだけで心ウキウキだった。
 実は「8時だよ!全員集合」を最初から見ていたわけではない。コント55号の大ファンでフジテレビの「コント55号世界は笑う」に笑いころげていた僕は全員集合の人気が高まるにつれて「世界が笑う」の視聴率が下がる様をしっかり憶えている。(裏番組に人気をとられているのをギャクに取り入れたりしていたのだ、「世界は笑う」の末期は。)

 全員集合に夢中になっていたのはどれくらいの期間だったろうか。萩本欽一が「世界は笑う」の仇をとるべく「ドンとやってみよう」でドリフに挑戦した時からアンチドリフになってしまい、それから「俺たちひょうきん族」へ笑いの興味が移ってしまったので放送された16年間のうちわずかでしかない。
 全員集合が最高におもしろかったのは、いわゆる僕にとっての黄金時代は小学5、6年の頃だったのだろう。

 この本はその全員集合のはじまりから最後までがプロデューサーの立場からつづられている。著者の居作昌果は番組クレジットでお馴染みだった人だがずっとどう読んでいいかわからなかった。たぶん違うと思いながら「キョサクセイカ」と読んでいた。「いづくりよしみ」と読むんですね。

 人気絶頂時になぜか番組がドリフからクレージーキャッツに代って「8時だよ!出発進行」になったことがある。当のドリフは日本テレビに移って日曜夜7時から「日曜日だよ!ドリフターズ」をやることになった。「出発進行」は「全員集合」みたいな笑いがはじけなかったし、日本テレビのドリフは全くもって元気がなかった。どうしてこんな奇々怪々な出来事が起きたのか長年疑問に思っていたが、渡辺プロ社長の「クレージーに最後の花を咲かせてやりたい」という親心だったというのがわかった。後にその横暴さで日本テレビに決別され、芸能界における威光も衰えてしまったが、この時はまだまだ元気いっぱいだったわけだ。その他、荒井注の脱退、志村けんの加入(加入当時の志村がちっとも受けなかったというくだり、よく憶えている、けっしてつまらなくはないだが、彼の出番になると客が引くのがわかり、見ている方としてもつらかった)、加藤茶の交通事故、三人ドリフ、興味深い事項がでてくる、でてくる。

 もう何年も前になるが小林信彦が「今の若い者は自分の笑いの原点がドリフの全員集合と平気で口にする」というようなことを書いており、ドリフを評価していない氏にとってみれば、その嘆きもわからないでもない。しかし、ドリフが原点のどこがいけないのかと反発したくもなる。小学生の時にドリフを見たらそれはその人にとっての笑いの原点になるのは当然ではないか。その後、ドリフ以前の笑いの先駆者たちの芸に触れるか、そのままで終わるかという違いはあるが。とまあ、そのドリフの番組も伝説となってしまったのか、と感慨深いものがある。




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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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