10月27日(金)より「神田古本まつり」が始まった。
 27日は平日だったが、初日ということもあり、通りはすごい混雑で、BC二十世紀も大繁盛! 売上はいつもの3倍だ。
 28日、29日は生憎の雨だったが、それでも売上は右肩上がり。まあ、イベントのおかげなのだが。
 29日から「みなもと太郎 画業50周年 原画展」が始まったのだ。このため、29日は雨でもけっこうなお客さんがいらっしゃった。土砂降りになってから客足はぴたり止まったけれど。

          * * *

2000/01/15

 「新選組血風録」(司馬遼太郎/中公文庫)

 映画「御法度」に酔いしれて、原作を読みたくなり、運良く古本屋に文庫本があったので昨年の暮れに買っておいた。
 劇中、惣三郎が土方の「なぜ前髪を切らないのか」という問いかけに対して「願をかけている」と答えるのだが、その願とは何か、映画の中では何も語られていなかったので、原作で確かめたかったのと映画で気になった土方の独白が実際原作にあるのかどうか、もう一つの原作「三条磧乱刃」とはどういうものなのか知りたくなったのだ。

 新選組にまつわるさまざまな物語が15の短編として収録されている。どの話も独立した話であり、それぞれ主人公も視点も変わってくる。このあたりが巧妙ですぐに作品世界に引き込まれた。
 以前「忠臣蔵コレクション」を読んだ。大御所、新鋭等新旧の作家たちがそれぞれ書いた忠臣蔵にまつわる短編を集めたものだが、通して読むとまるで連作のような味わいがあって、時代小説の醍醐味を教えてもらったが、本書はその感覚に近い。
 映画で武田真治が演じた沖田総司がいかにイメージにぴったりだったかがわかる。近藤勇、土方歳三は読んでいる最中、特に役者の顔は浮かばなかったが沖田だけは武田真治が劇中で見せた笑顔やしぐさがついてまわった。
 「御法度」は忠実に原作を映画化している。台詞などもそのまま使用され、土方の独白もちゃんとある(とはいえ、あれは小説の独白だから意味があるのであって、そのまま音にしてしまうとみもふたもない)。
 「惣三郎の願とは何か」については原作にも出ていなかった。
 各編とも興味深い作品であるが、「前髪の惣三郎」「三条磧乱刃」の他に特に印象に残ったのが次の5編。
 長州のスパイとして新選組に潜り込んだ男の悲哀を描いた「長州の間者」、愛する女と夫婦になったばかりに意気地なしになった男の顛末「胡沙笛を吹く武士」、思えば敵に対しても仲間に対しても斬ることしか考えないある種殺人集団「新選組」の血が血を呼ぶような殺戮である物語の一服の清涼剤「沖田総司の恋」、サラリーマン世界の戯画ともいうべき「槍は宝蔵院流」、ラストを締めくくる「四斤山砲」。

     ◇

2000/01/22

 「深夜プラス1」(ギャビン・ライアル/菊地光 訳/ハヤカワミステリ文庫)

 奇妙なタイトルだけはだいぶ前から知っていた。
 コメディアン・内藤陳のゴールデン街にある有名なお店の名前として、そしてそれは読書家と知られる氏が海外ミステリの傑作からとったものだと。飲み屋の名称としては最適だが、これがミステリのタイトルということになるといまいちピンとこない。 何をもって深夜+1なのか、当然内容もタイトルだけでは想像できない。
 そんなこんなでずっと気になっていたミステリではあったわけだが、あまりに有名な作品なので、手をださないでいたところ、昨年、西川口駅改札口を出たところの臨時古書売場に100円で販売されていたので、とりあえず買っておいた。

 第二次世界大戦時イギリスの工作員で今はフランスの経営コンサルタントになっている主人公が昔の仲間に頼まれて、婦女暴行の容疑者として警察に、別の理由である組織から命を狙われている富豪を隣国に脱出させるスリルとサスペンスにあふれた物語。黒澤映画「隠し砦の三悪人」を彷彿させる、まさに「こっちに主人公がいて向こうにオタカラがある。このオタカラを取れるか取れないかのサスペンス、スリル…」を地で行く。行く先々で難問にぶつかり、八方ふさがりになるが知恵と行動をもって突破していく様はまさしく冒険ものの醍醐味であり、このミステリはまさしくその手の物語の先駆となったものなのだろう。
 主人公と富豪の他に彼を補佐するガンマン、富豪の女性秘書が行動をともにするが、ガンマンはアル中だし、秘書はどこか謎めいた行動をとって気がゆるせない。さらに彼らの行動は敵に筒抜けになっているのだ。果たして裏切り者は誰なのか、というミステリ本来の興味もあってラストまでボルテージは下がらない。

 表記で気になった点がある。
 株主会とは株主総会のことだろう。株主会なんて言い方があるのだろうか? ガンマンというのも西部劇みたいでピンとこない。ボディガードと書くべきではないか。

     ◇

2000/01/30

 「巷説百物語」(京極夏彦/角川書店)

 大ヒット作の「京極堂」シリーズで妖怪伝説をあくまでもミステリのうんちく話として物語に活用していた作者が満を持して本格妖怪小説を書いた、と読む前までは思っていた。
 昔、大映の特撮映画に「ガメラ」「大魔神」シリーズのほかに妖怪もののシリーズがあって、TVの「河童の三平」「ゲゲゲの鬼太郎」やこのシリーズで僕は完全に妖怪にはまっていった。
 妖怪好きで水木しげるファンである作者は僕よりいくつか下の世代であるが、たぶん似たような経路で妖怪に親しんできたと思う。当然、妖怪が大活躍する話を書きたいに違いないと確信していたのだ。

 全然違っていた。これは京極版「必殺シリーズ」ではないか。妖怪伝説を逆手にとって、依頼者の復讐を果たす、謎の集団(御行の又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平、考物の百介)の活躍を描く短編ミステリの連作集。この本の中でも妖怪は伝説でしかなかった。
 ミステリであるから、当然謎解きがあるのだが、あまり重きをおいていないようだ。ある程度オチが想像できてしまう。ケレン味たっぷりの文章は時代小説に合致しておもしろく読めた。もっと続編読んでみたい。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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