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2001/11/06

  「ロードキラー」(中野ゼロホール 試写会)  

 ホラー映画という以外何の予備知識もなかった。監督のジョン・ダールも出演者も聞いたことがない。ただ、この手の映画には掘り出し物があるので喜び勇んで会場に足を運んだら、ひどい混雑で1階席はほぼ満杯。何とか席を確保できた。皆同じ考えなのか。  

 夏休みに自家用車で帰省することになった大学生(スティーブ・ザーン)は、途中で恋人(リリー・ソビエスキー)と合流する前に、警察につかまった問題児の兄(ポール・ウォーカー)を引き取ることになってしまう。給油所で勝手にCB無線を取りつけて見知らぬドライバーと交信して遊ぶ兄は顔の見えないこといいことに〈キャンディ・ケーン〉なる美貌の女性を創造、作り話をでっち上げる。まんまと餌に食いついてきた〈ラスティ・ネイル〉と名乗る男に対して、女声のうまい主人公を使いその夜宿泊するモーテルに誘惑する。自分たちの部屋の隣室ナンバーを教えると、その夜男は本当にやってきて、実際の宿泊者と言い争い後立ち去っていった。翌朝、2人は宿泊者が何者かによって瀕死の重傷を負わされたことを知る。  
 単なるイタズラが大変な事件を巻き起こしてしまった。恐怖におののく2人はそのまま現場を立ち去るのだが、男の運転するトラックが執拗に彼らを追いかけてくる……。  

 前半はスピルバーグ監督の出世作「激突」だった。本作と比べると「激突」がいかに傑作だったかよくわかる。単に邪魔なタンクローリーを追い抜いただけの理由で、執拗に追いかけられ攻撃される乗用車ドライバーの恐怖。シンプルな設定で緊張感がラストまで持続する。タンクローリーの運転手は最後まで姿を見せず、まるでタンクローリー自身がキャラクターを持っているような、見事なワンアイディア映画だった、と今さらながら思う。
 
 「ロードキラー」は「激突」の〈何者かに追いかけられる〉設定のほかにさまざまな仕掛けを施してあり、迫力も申し分ないにもかかわらず、肝心の緊張感がない。というか、簡単に先が読めてしまうのが難点なのだ。  
 たとえば、最初のサスペンスにこんなシークエンスがある。兄弟の車がガソリンを補給するため、ハイウェイを降りて近場のスタンドに立ち寄った際、すぐ後からトラックがやってくる。棍棒を持った運転手が降りてきて、主人公が警察に電話をかけるために立ち寄った隣接のドラッグストアに入ってくる。カードでちょっとしたものを買って、あわてて逃げ出す主人公。追う運転手。車を発車させると、相手もトラックで追いかけてくる。逃げ道がなくなり万事休す!
「ストアに何か忘れ物して善意の運転手が届けてくれたんだな」  
 案の定運転手はカウンターに置き忘れたカードを主人公に手渡す。トラックにもどって来た道をバックしていく。
「犯人のトラックがあのトラックをぶち破ってでてくるぞ」
 トラックが進路変更して真横になったとたん、荷台を突き破って登場する大型トレーナー! これではスリルもへったくれもない。  
 恋人が犯人に連れ去れてからもまるで定石どおりの展開。中でもドアを使ったトリックが「羊たちの沈黙」で使われたアイディアそのままというのはがっかり。現場にやってきた警察の捜査が逆に恋人を射殺してしまうサスペンスを生み出すくだりが唯一新鮮だった。
 ラストの不気味さも、最近のホラー映画では常套手段という感じ。

     ◇

2001/11/07

 「トゥームレイダー」(日比谷映画)  

 ゲーム会社に勤めているにもかかわらずまったくゲームに興味がない。会社から贈与されたゲーム機はまだ一度も箱から取り出したことがないのだから始末におえない。
 子どもが小学校の低学年だった時は、子どものために会社からいろいろなソフトを持ち帰っていたこともあった。日曜日などいっしょに「ぷよぷよ」などを対戦したものだが、ある時から子どもに全然歯が立たなくなった。父親の威厳なんて保てるわけなく(もともとないのだけれど)、頭きてやめてしまった。不器用なんだから仕方ない。その昔インベーダーゲームで5,000点以上取ったことがなく、恥ずかしくていつも眺めているだけだった。以来ゲームを楽しんだことがない。
「お前にはRPGが向いてる、ぜったいはまるから」なんて言われて人気ソフトを貸してもらったけれど、コントーラーを操作してコチョコチョ動かすなんてうざったい。本を読んでいた方がよっぽど面白い。  
 そんなわけで「トゥームレイダー」なるゲームがあるなんて知らなかった。世界中で売れている人気ソフトだとか。  

 これまでも人気ゲームの映画化作品はいくつかあったけれどまったくの興味の対象外。当然「トゥームレイダー」もそうなるはずだが、これは少々違った。ゲームが原作だろうがなんだろうが、とにかくヒロインの魅力にひきつけられたのだ。  
 男勝りの女性が主人公になって大活躍するアクション映画が好きだ。女性が身体の線を強調した衣装をまとったりしていたら文句ない。「エントラップメント」のキャサリン・ゼタ=ジョーンズとか「キャッツアイ」の三姉妹とか…(峰不二子にも通じるあの身体にぴったりフィットした黒装束、何ていう名称なんでしょう?)。「マトリックス」ではキャリー・アン・モスの走りっぷりに惚れ惚れした。  
 ヒロインのララ・クロフトに扮したアンジェリーナ・ジョリーは写真で見る限り僕の好みではないのだが、黒いタンクトップとパンツを身にまとい銃を構える姿がたまりませんなぁ。  
 この手の映画に内容なんて求めない。しょせんは荒唐無稽のホラ話なのだから、どれだけヒロインが身体を張ったアクションを展開してくれるか。お話に夢中になれるか。上映時間中スクリーンに集中させてくれさえすればいいのだ。

 幼い頃行方不明になった考古学者の父が残した時計を発端に、適役の考古学者の妨害をものともせず秘宝探しに奮闘するトレジャーハンター・ララの活躍。いってみればインディアナ・ジョーンズの女性版ですな。  
 アンジョリーナ・ジョリーはかなり健闘していた。動きが機敏でアクションが様になっていた。スタントと本人の違いもほとんどわからない。  
 制作費が豪勢だから特殊撮影もかなり完成度が高い。  
 開巻のロボットとの戦いもいいが、一番興奮したのが中盤の洞窟シークエンス。人間大の石像が動き出すのはよくあるパターンだが、巨大石仏がゆっくりと立ち上がり、ララに襲いかかるシーンに怪獣映画ファンの血が騒ぐ。  
 スピーディーな演出に飽きはこなかったけれど、いわゆるハラハラドキドキ感はそれほどもなかった。
 クライマックスの敵のおどしは完全に「インディー・ジョーンズ 最後の聖戦」のパクリ。  

 ララ・クロフトの父役ジョン・ボイドは実際にアンジョリーナ・ジョリーの父親なのだそうな。  
 日本でもこういう映画ができないかな。水野美紀を起用してさ。

     ◇

2001/11/10

 「赤い橋の下のぬるい水」(丸の内シャンゼリゼ)  

 今村昌平監督の最新作。  
 人間の性や欲望を大胆かつ骨太、粘着質的に描写することで有名な今村監督の作品群のうち、特に昔の作品に興味がある。この手の作品はなかなかビデオレンタル店にないのだが、以前「赤い殺意」を発見してわくわくしながらブランウン管に魅入ったものだ。ところがリアルタイムで公開された70年代後半以降の作品については、なぜかまともに観た覚えがない。  
 「復讐するは我にあり」「ええじゃないか」「楢山節考」「女衒」など劇場に足を運ぶ気がしなかった。それでも「黒い雨」はビデオで観た。原爆症を患う田中好子の精神がおかしくなって池の鯉が何匹も飛び跳ねる妄想を見るシーンが怖かった。

 「うなぎ」は清水美砂見たさに借りたようなものだが、これがよかった。舞台となった佐原市の風景にも心がなごんだが、清水美砂の大胆な濡れ場シーンに目を瞠ったものだ。裸身をさらすような役をやる女優とは思っていなかったので、もうけというかなんていうか。裸がどうのこうのというより、絶頂感をむかえるまでの様がたまらなかった。
 「赤い橋の下のぬるい水」も清水美砂が主演、それも潮吹き女をやると知り興味をもった次第。助平オヤジだなあ、オレも。土曜日の午後、劇場はけっこう年配の男女で席がうまっていた。みんな助平なんだから、まったく。  

 リストラされ再就職活動にいそしむ主人公の男(役所広司)が親しくしていた博学なホームレス(北村和夫)が死んだ。生前ホームレスが話してくれた宝物の話。彼は若い頃盗んだ金の仏像を、能登半島の日本海に面した赤い橋のたもとの家に隠したという。「俺の代わりにあの家に行ってくれ、金の仏像はお前にやる」  
 妻子と別居し仕送りに困っている男は能登半島を訪れる。目的の家は今でもあり、耄碌した老婆(倍賞美津子)と女(清水美砂)が住んでいた。女には体内に水がたまる習性があり、たまりすぎると性欲がたかまり、情緒不安定になって万引きを繰り返していた。ひょんなきっかけで女と知り合った主人公は最初は手助けのため、やがて女に夢中になっていく。  

 まず男が訪れる赤い橋が最近になって作られた(というかリニューアルされた)風で情緒に欠ける。  
 期待していたエロティシズムもほとんど感じられなかった。スーパーで体内から流れでてできた水溜りにたたずむ女の行動に淫靡なものがあったが、主人公との最初の性交であふれでた水の量があまりに膨大でほとんどギャグの世界になってしまうのだ。この描写は回が増すごとに大げさになっていき、笑わすにはいられない。たぶんこれは狙いだろう。  
 撮影時妊娠中だった清水美砂の腹部が気になって仕方なかった。それほど目立つものではないが、でもやっぱりぷっくりとせりだしている(だから性描写が過激でなかったのかもしれない)。  
 だがこれも知らない人が見ると演出のうちと判断しているから何が幸いするかわからない。一緒に観た友人は清水美沙の腹部の膨らみを、水がたまる役柄のためわざと詰め物をしていたと思っていたと言うのだ。

 赤い橋にはがっかりきたが、能登半島のロケは効果的だった。女が住む2階の窓からのぞむ雄大な立山連峰の景色に目を洗われた。  
 役者たちもいい。  
 主演の役所広司は最近立て続けに映画に主演していて、少々食傷気味のところもあるが、監督が彼を起用するのもわかる気がする。この映画ではリストラされ、妻からも蔑まされているような男の役なのだが、素直にそう思えてしまうから不思議。実直なあるいは熱血サラリーマン、刑事、やくざ、風来坊、はたまた時代劇の侍まで皆それっぽく演じてしまうのは役所広司の巧さもあるのだろうが、体質というか、色に関係してくると思う。役所広司ってもともと白の画用紙って感じで、監督の思いどおりに色を塗りたくることができるのかもしれない。見てくれはいいし。  
 インテリホームレスの北村和夫の声質、口跡が耳に心地よい。料理ベタな坂本スミ子と釣好き中村嘉葎雄の夫婦のやりとりが愉快。飄々としたミッキー・カーチス、好色でいかにも海の男といった感じの勇ましい夏八木勲もいいが、何といっても北村有起哉のヤンキーあがりの漁師が出色。この人、NHKのドラマ「少年たち2」でも女房に逃げられた若い父親を演じていて印象に残った。北村和夫の実の息子であったとは。  

 エロチックではないけれど大人のファンタジー喜劇と観れば悪くない。

     ◇

2001/11/30

 「スパイキッズ」(徳間ホール 試写会)  

 またまた試写会招待状がまわってきた。子ども向けの映画ということで、お子さんとどうぞとのことだったが、うちの娘は小6の頃から音楽(J-POP)に夢中になってほとんど映画に興味を持たなくなった。おまけに中学生になるとブラスバンドのクラブ活動で忙しく、平日に親と試写会に行く時間なんてない(というか、父親と行動をしなくなった)。カミさんを誘ったもののこれまた興味なしと断られた。  
 仕方なく一人で行く。以前予告編を観た際けっこう面白そうだったのだ。    

 米ソの冷戦時代、名うてのスパイとして名を馳せた男女(アントニオ・バンデラス&カーラ・グギノ)が結婚し引退、一女一男をもうけごくごく普通の生活を送っているところにかつての仲間が敵に捕われた報せが入る。夫婦で救出に向うが逆に敵の罠にはまりつかまってしまうのであった。  
 両親の危機に子どもたち(姉弟)が奮起する。ふたりは最新メカを駆使して敵基地に潜入するや、機知を働かせて大活躍し、最後は敵を一網打尽にするという子ども向け大冒険映画。  
 小型潜水艇、一人乗り小型ジェット機、飛行用ボンベ等々子どもの想像心を刺激するメカニックが登場したり、敵基地の内部がびっくりハウスよろしく様々な仕掛けがしてあったり、敵ボスが粘土をいじくるだけで実験台の人間が改造されてしまったりと、子どもの視線に立って観るとなかなか楽しい内容になっている。  
 小学生時代に観た「ガメラ対バイラス」「ガメラ対ギロン」を思い出した。  
 この2作以降、昭和のガメラシリーズは完全に子ども向けになってしまったのだが、主役の小学生たち(日本人とアメリカ人)が宇宙船や基地の中で見聞したり体験する未知のメカニックが実際にあったらと、劇中の主人公たちがうらやましかったし、内容もちょっとした冒険ものだったのでけっこう興奮したものだ。
 活発な姉(アレクサ・ヴェガ)、少々愚鈍な弟(ダリル・サバラ)という組み合わせも、特に弟のキャラクターが前記の映画に登場するアメリカ人の男の子を彷彿させる。  
 そんな世界を一級のSFXを使って映像化したのが「スパイキッズ」といえようか。    

 「ターミネーター2」で印象深い極悪ターミネーターに扮したロバート・パトリックが敵のパトロン役で登場したり、ジョージ・クルーニーがゲスト出演したりとファンとしてはうれしい。敵ボス(カーク・グギノ)は何かで観た覚えがあるのだが、その映画が何であるか思い出せない。アントニオ・バンデラスの兄で発明家のダニー・トレホは一度見たら忘れられない風貌。日本でいえば伊藤雄之助みたいな男優だ。




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プロフィール

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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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