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 世間はGWだが、アルバイトで生計をたてている者には関係ない、関係ない。
 9連休だって?
 サラリーマン時代は僕も何度か経験している。
 しかし、あっというまに連休なんて終わってしまうのだ。始まったときはワクワクするものの、明日から仕事かと思うと暗くなってしまう……。
 今は水、木曜が連休で、毎週火曜日になると心ウキウキ、なんである。まあ、木曜の夜は……であるが。

          * * *

2001/02/18

 「父・鶴田浩二」(カーロン愛弓/新潮社)  

 鶴田浩二を知ったのは僕が小学5年か6年の時、片手を耳にあてて「傷だらけの人生」を歌う歌手としてだった。特攻隊の生き残りでその昔映画スターとして一時代を築いたことはそのあと知ったと思う。  
 役者として注目したのはNHKで放映された山田太一脚本の「男たちの旅路」の警備員役だ。素顔そのままに元特攻隊の堅物の、しかし人情味ある中年男を演じ、部下役の桃井かおりや水谷豊に何かと説教する姿が堂々としていて頼もしかった。いい役者だなと思った。
 ドラマ自体、70年代を代表するものだと思う。当時夢中で観ていた。NHKから出版されたシナリオも全巻揃えたほどだ。
 山田太一が鶴田浩二をイメージして「男たちの旅路」を書いたのはよくわかった。
 戦争で死んだ仲間たちへの悼みをいつまでも忘れずストイックに生きている真面目な人、というのが僕の、というか世間一般の鶴田浩二のイメージだったのではないか。

 鶴田浩二なんて偽善者だと言ったのはかみさんだ。
 一緒に働いていた友だちがいわゆる<高級売春クラブ>に所属していて、ある時鶴田浩二の御指名で京都の宿に東京から呼ばれた。何泊だか忘れたがギャラが10万円。TVで偉そうなことを言っている男が陰で女を買っている、それも10万円というのもしみったれているというのがかみさんの弁。
 いくら堅いイメージがあっても下半身が女を求めないわけがない、だいたい素人の女性をもて遊んだわけじゃなく、芸能人の立場があるからそういう高級クラブを使うのだし、ちゃんと金を払ってやることやっているのだから問題ないだろうというのが僕の弁。それより鶴田浩二との関係を手紙にしたため山田太一に送る彼女の方がプロとして失格じゃないかと。
 特攻隊出身が偽りではないかと週刊誌を騒がせたこともあった。死後隠し子の遺産騒動でワイドショーを賑わせた。

 鶴田浩二とは何者なのか、娘の目をとおして語られたのがこの「父・鶴田浩二」である。3人娘のうち長女の著者を一番愛し、著者も父を誰よりも愛した。まさにファザーコンプレックス。その仲は母親との確執、軋轢を生む。
 そんな家族模様を含めて鶴田浩二の人生は絵に描いたような虚飾の人生ではないかとまず思った。こと芸能人に対して色分けするのはまだいいとして、自分につくす役者志望の付き人をけっして引き上げようとしない態度には失望した。ハングリー精神旺盛なのは認めるけれど。

 私生児として生まれ家族の愛にも恵まれず、極貧生活を強いられた。そんな何もないところから成り上がった男は何を糧に生きてきたのか。
 「雲ながるる果てに」に主演した彼は、学徒出陣で海軍航空隊に入り、特攻隊員として終戦を迎えた経歴を大切にしていた。その真偽がマスコミの話題になった時も黙して語らず、死の直前になってやっと著者に嘘だったと語る。しかし「雲ながるる果てに」に主演したこと、「そういう映画が俺を一人前にしてくれたんだ。俺は戦争で死んでいった人たちに、生かされたっていう思いなんだ」。

 感情に溺れず、冷静に父および家族を語る著者の姿勢に好感を持った。
 ただ、冒頭で語られる鶴田浩二の躁鬱について、著者は業みたいに書いているが、たぶんに鶴田自身の演技が強いように思える。躁鬱病の経験者がいうのだから間違いない。


2001/02/20

 「くすだま日記」(中野翠/毎日新聞社)  

 年末に上梓される中野翠の社会時評その他雑多コラム集(サンデー毎日連載の「満月雑記長」の1999年12月~2000年11月をまとめたもの)を読まないと年を越した気分になれない。  

 昨年2000年もいろいろな事件が起きた。  
 西鉄高速バス乗っ取り事件、愛知の17歳少年による殺人事件、奈良の長女薬殺未遂事件等々、中野翠がこれらの事件で何を感じたかはとても興味あるところ。  
 世の知識人、専門家が唱える「心の闇」にうんざりと切り捨てる。ああ、やっぱりと思う。僕自身、少年たちが犯罪に走ったことに対して、家庭の問題、親との関係が深く関係していると考える。  
 小学生の娘を通して同級生の性格、その親のその子への対応などを見聞すると無視することなどできないことがわかる。
 しかし、だからといって少年たちの犯罪を許すことなどもってのほかだ。少年法についても何かと言いたいこともある。そこらへんの問題をずばり指摘している。  
 奈良の長女薬殺未遂事件では、犯人の母親と和歌山の保険金殺人事件の〈平成の毒婦〉が互いにどう感じているのか聞いてみたいと書いていて、自分と同じこと考えているとニヤリ。  
 他人様には迷惑かけていない、自分の子どもに手をかけて金にする奈良の母親と、他人を殺して愛する子どもといい生活をする〈平成の毒婦〉。  

 元スチュワーデス失踪事件の容疑者・織原城二の読みについて〈オハラ〉なのか〈オバラ〉なのかこだわる。オハラと読めば〈オハラ・ジョージ〉、つまりジョージ・オハラになるわけで、容疑者の欧米志向を物語るのではないか、と著者らしい分析。  

 最近のTVバラエティについても〈三大バカ演出〉と1.盛り上げナレーション2.いちいちテロップ3.プライドなき再現ドラマをあげ、一般大衆をバカ扱いしているのかと怒る。ホント、これには参る。特に2.のいちいちテロップの急増は何とかならないものか。ただ一般大衆はそれを受け入れていると思う。盛り上げナレーションで泣き、いちいちテロップで笑い、再現ドラマで内容をよく理解する。でなければ、こうも流行するとは考えられない。  

 趣味が違う映画評はどうか。有名どころの作品についてはほとんど同じ感想だったが、バーホーベン監督の「インビジブル」を妙な愛敬がある、豪快さがある、パワーがある、人体が透明化していくプロセスにわくわく、一大スペクタクル的面白さ、グッドバッドムービーだと持ち上げている。同監督の「スターシップトゥルーパーズ」をあんなに嫌悪していていたのに。根本的に同じ映画だと思っている、映画としては「スターシップトゥルーパーズ」の方がよっぽど面白いと思う僕には理解できない。  
 一大曲者女優としてペット・デービスを取り上げ「何がジェーンに起こったか」「誰が私を殺したか」を解説している。この映画小学生か中学生のときにTVで観て非常に面白かった覚えがある。僕ももう一度観てみたい。  

 連載時にも読み、印象的だったのは著者が電車に乗っていて隣に薄汚い男が坐った際の心の揺れの問題。すぐに席を立つのは相手に申し訳ない。かといってそのままいたくない。気づいたとたん車輌を移ってしまった女子高生をうらやましいと思いつつ、実行できない。本音と建前に揺れる気持ちを正直に書き綴る。  
 僕自身同じような体験をしているのでこの気持ちはよく理解できる。だから中野翠コラムはやめられないのだ。




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プロフィール

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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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