先週の土曜日(4日)、長野県の下諏訪にぶらり一人旅。今日はそのことについて書こうと思っていたのだが、予定を変更する。

          * * *

 今朝のTBS「朝ズバッ!」、芸能ニュースのコーナーだった。アシスタントの女子アナが沈痛な面持ちで「訃報です」。画面にはスポーツ新聞の第一面が映し出された。大きく〈急死〉の文字が。いったい誰が亡くなったのか? 思わずTVの前に駆け寄った。
「俳優の緒方拳さんが亡くなりました……」

 何だと! 怒気を含んだ声で叫んでしまった。
 この数年、70歳を越えた著名人の訃報には、なかば達観してその死を受け入れてきたところがある。自分の年齢を鑑みれば、仕方のないこと、「そういう年齢だから」と。
 日本は長寿国といわれているが、それは明治時代の人が長生きしているだけのこと。昭和の、それも成長期に戦争でひもじい時期をすごした世代はあまり長生きできないのではないかという思いがある。彼らの子ども、孫の世代になれば、ジャンクフードばかりを食しているから、もっと平均寿命が短くなるのではないか。しっかりした根拠なんてないけれど、僕自身はそう考えている。
 緒方拳も71歳。変な言い方になってしまうけれど、そういう世代になっているわけだが、なぜか、この人は80歳を過ぎても活躍すると信じていたので、訃報は衝撃だった。

 新国劇出身、NHK大河ドラマ「太閤記」の豊臣秀吉役で人気俳優の仲間入りした、なんてことは後で知ったこと。
 僕らの世代だったら「必殺仕掛人」が最初の出会いではないか。藤枝梅安。坊主頭の好色な鍼灸医。裏家業の仕掛では得意の鍼で人を殺める。強烈のキャラクターで人気を博した。
 中学2年のとき、隣の市から転校生がやってきた。当時でも珍しい坊主頭だったので、ただそれだけの理由でクラスで〈梅安〉と呼ばれ、あっというまに他のクラスに広まった。中学の陸上大会、高校のラグビー部、その後長いつきあいとなる。今でも会えば〈バイアン〉だ。本名を言われてもピンとこない。
 リアルタイムの「必殺仕掛人」(TBS)は、裏で「木枯し紋次郎」(フジテレビ)が放送されていたので、きちんと観たことがなかった。8年前に、再放送があって、夢中になった。それをきっかけに原作をあたり、緒方拳の梅安が原作と少々イメージが違うことに気がついた。原作者の池波正太郎もある時期まで緒方拳を認めていなかった。

 「砂の器」の、善良さが仇になって殺されてしまう元警官役も忘れ難い。松本清張原作の映画作品では、「砂の器」と正反対のキャラクターで「鬼畜」に主演している。名画座で併映されれば表裏の緒方拳が楽しめる、なんて誰かが言っていたっけ。
 1970年代の終わりから80年代にかけて、今村昌平監督とコンビを組んで、問題作を連発した。「復讐するは我にあり」「ええじゃないか」「楢山節考」。85年にはポール・シュレイダー監督「MISHIMA」に三島由紀夫役で主演し、三島文学ファンだった僕は大いに期待するが、残念ながら日本では未公開。とにかく今村監督以外でも数々の話題作に主演、助演してきた。ある時期の日本映画の顔と言っていいかもしれない。
 この数年は脇役で拝見すること多くなった。黒土三男監督「蝉しぐれ」、山田洋次監督「隠し剣鬼の爪」「武士の一分」、どれも藤沢周平の原作だ。
 今夏公開された「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」には妖怪(ぬらりひょん)役で出演していて(TVスポットで知ったのだが)驚いた。孫に喜ばれるなんて理由でオファーを受けたのではないか。孫がいるのかどうか知らないけれど。
 なんだか、日本のドラマ、映画でなくてはならない太い幹がポッキリ折れてしまったような感覚だ。悲しいというより非常にショック。出演しているTVCMなんてどうなるのだろう?
 倉本聡が最後の連続ドラマだと宣言した「風のガーデン」(フジテレビ)が遺作だという。
 
 
 今朝の朝日新聞の訃報欄に福田和禾子の名があった。NHK「みんなのうた」ファンならお馴染み。「北風小僧の寒太郎」の作曲者だ。ということを、この訃報記事で知った。堺正章が歌う「北風小僧の寒太郎」は大好きだが、作者を意識したことがなかった。
 では、なぜ福田和禾子の名前を知っているかというと、同じ「みんなのうた」で流れた「いかつり唄」の編曲者としてインプットされたのだ。和禾子の禾の読み方がわからず、あくまでも字面としてだが。ワカコと読むのか。ちなみに「いかつり唄」は紙ふうせんのデビュー曲。「みんなのうた」では五木ひろしが歌っていた。
 享年66。まだ若い。
 
 合掌




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Comment
早朝の緒方拳の訃報、私にもとてもショックでした。
その時点では死因を発表せず、ただ急死というようなニュアンスだったので、一瞬あらぬことを考えてしまいました。だって、元気にコマーシャル出てるし、まだまだ(亡くなるには)若いし。
納得できないまま暗い気持ちになっていたところ、夕方のニュースで二人の息子さんのインタビューで原因は肝臓だったと聞き、やっと納得できた次第です。
好きな、そして立派な俳優さんでした。
合掌
追記
映画「陽暉楼」で容赦の無い女衒役だったのですが
娘役の浅野温子との父娘の情が心に響きました。
一番好きな彼の出演作です。
Alex さん

朝のニュース、ショッキングでしたよね。緒方家としては、葬儀等すべて終わってから公にしたかったのでしょうか。それが、途中でマスコミに知られることになって、だから死因もなかなか発表されなかった。

ところで、何を歌いますか? 「翼をください」にしますか? って、変換間違えをあげつらってはいけませんね。いつもは私が指摘されてばかりいるのですから(笑)。
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新井啓介
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神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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