2010/07/01

 「アウトレイジ」(丸の内ルーブル)

 特に映画監督・北野武ファンではない。初監督作品「その男凶暴につき」と2作目「3-4×10月」をビデオで観て、あとはまったく追いかけなかった。まあ「座頭市」は劇場で観ているが。一昨年の「アキレスと亀」は画家が主人公ということで、僕の職人フェチを刺激してくれるのではと期待するものがあったのに、懐事情その他でパスしてしまった。DVDもいまだに未見。

 北野ブルー(全体的に青みがかった映像)とかバイオレンス描写が評価されていると知ったときにこう思った。村川透(監督)+仙元誠三(撮影)+松田優作(主演)の遊戯シリーズ(「最も危険な遊戯」「殺人遊戯」「処刑遊戯」)の後追いではないか。
 青みがかった映像はTVドラマなら「ケイゾク」「ハゲタカ」が取り入れている。その原点は遊戯シリーズだと考えているのだが、どうなのだろう?
 遊戯シリーズ、あるいは「蘇える金狼」「野獣死すべし」はアクションや映像のほかに効果音も斬新だった。東宝特撮の効果音に慣れた者には、とてもリアルに聴こえたものだ。

 たとえば遊戯シリーズを、手持ちカメラの長廻しではなく、フィックスで淡々と撮ったら、バイオレンスシーンの合間に詩情豊かなカットを挿入したら、「ソナチネ」や「HANA-BI」になるのではないか? 観ていないから偉そうなことは言えないな。

 やくざ映画もバイオレンス映画も興味ない。にもかかわらず「アウトレイジ」を観ようと思ったのは予告編に注目したからだ。主要キャストの怒鳴り合いだけを繋げたところに諧謔味があった。

 予想ははずれなかった。
 大親分(北村総一朗)の無理難題により、子分(國村隼)の組とライバル(石橋蓮司)の組、子分の子分(ビートたけし)の組が右往左往して一大抗争になだれ込む群像喜劇。いや、ほんと、やってることはマンガなんだから。真面目な顔してみんなコントやっている。手榴弾でレストランが爆破されるシーンなんてその昔の「ドリフ大爆笑」ではないか。
 そんなバカな! ありえねぇ! 
 
 人間関係が複雑に絡まり、味方が敵に敵が味方にコロコロ変わって、殺戮を繰り返す様はまるで「仁義なき戦い 代理戦争」(&「同 頂上作戦」)のようだ。まあ「仁義なき戦い」はDVDで一度しか観ていないので、これまた偉そうなことは言えないけれど。
 北村総一朗が金子信雄、ビートたけしが菅原文太、石橋蓮司が加藤武だとすると國村隼は誰だろうか? 
 北村(総一郎の)組、若頭役の三浦友和が竹脇無我に見えて仕方なかった。
 有名どころから無名にいたるまで、配役の妙を楽しめる。

 そのものずばりの残虐描写は、ビートたけしの稚気、無邪気さ、か。わざと「うんこ」「キンタマ」と大声で叫んで母親の顰蹙を買い喜んでいる幼児みたい。
 歯医者のシーンも、タンメンのシーンも直視できなかった。思わず目をふせてしまう。しかし、一番の衝撃は乗用車を使った処刑シーンだろう。あれを考えた時点でしてやったりの気分だったのはではないか。
 そのシークェンスの、ロングで捉えた道路と海(遠くに発電用だか何だかのプロペラが見える)のショットがいい。特に海の荒れ模様が。
 
 「唐獅子株式会社」をこのタッチで映画化したらどうだろう?




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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