梅雨が明けたころから朝の電車ラッシュが少し緩和した気がする。7月の第4週あたり。学生たちが夏休みに入ったからだろう。
 今朝はもっと空いていた。サラリーマンが夏季休暇の時期になったのだ。今年は今週と来週がピークとなる。
 週末がお盆だから休暇の最後をお盆にするか、最初にするか。会社が一斉休暇でない限り、お盆は出社したいものである。電車はガラガラ、仕事はほとんどない。まさに天国ではないか!

 空いているということもあって、すぐにつり革のあるスペースが確保できた。いつもはつり革(の乗客)とつり革(の乗客)の間でしばらくの間肩身の狭いを思いをしているのだ。
 目の前に座る中年男(恰幅の良い50代後半)が何やら右足(こちらからだと左)を気にしている。僕の隣の痩せこけた男(30代?)が右手にぶらさげた折りたたみ傘が足にぶつかるからだ。ぶつかるのが嫌なら、足をもっと閉じればいい、大股開きしているから傘がぶつかるのだ。にもかかわらず、50代男は自分の権利はあくまでも主張する。非は傘をぶら下げている男にありと、足はそのままに何度も折りたたみ傘男をにらむ。傘男は立ちながら寝ているのか、いっこうに気にする気配がない。たまらなくなって50代男が手で傘をはねのけた。傘男、やっと気がつく。「すいません」と謝るのかと思ったら無言。傘をずらそうともしない。
 
 50代男の右隣の男(30代?)は居眠りしていた。膝の上に置いてあるバッグがはみだして50代男の腿にぶつかる(ようだ)。50代男、これも気になって仕方ない。バッグと隣の男の顔を見ていていた。繰り返し繰り返し。隣の男は熟睡中。しょうがないから手で押しやった。居眠り男が目を覚ます。「すいません」と謝るのかと思ったら、逆に「オレがいったい何をしたんだ?」という鋭い目つきで睨み返した。50代男、もとい神経質男は知らないそぶり。

 傘男が何度も後ろを振り返る。後ろに立っている青年(20代?)がこっくり、こっくり。背中にぶつかって気になるらしい。電車が某駅に着くと、怒りを全身で表しながら降りていった。青年は自分の行為に気づいていない。目の前の男がいなくなったので、すばやく移動する。

 自分が当事者だったら「すいません」3連発。なのに、ほんと、皆さんいい度胸しています。


 ついでに書いておこう。
 混雑した車内でリュックサックの類を背負ったままの人たちがいる。どういう神経なのかわからない。そりゃあね、自分は楽チンでしょう。でも、まわりの人はたまったものじゃないんですよ。自分で迷惑した経験がないからなのか。別に若者だけじゃないのだ、いい大人、老人までいますからね、背負っている人には。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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