●表現するということ 2007/03/15

 私のネットデビューは某特撮ファンサイトだった。平成ウルトラマンが人気を呼んでいて、ちょうど「ウルトラマンダイナ」が終了し、「ウルトラマンガイア」がスタートしたころだ。
 当時、このサイトのBBSを読むのが日課になっていた。あくまでも読むのが楽しみ、書き込みなんてする気はまったくなかった。

 そんなある日、常連の某さんの書き込みに反応した。「ガイア」にナレーションがないことの不満を述べていた。
 シリーズの第1作「ウルトラQ」は、内容もさることながら、まるで呪文のようなナレーション(石坂浩二)も話題を呼び、以後、シリーズのなくてはならない存在になった。平成ウルトラマンまでこの伝統は受け継がれてきたわけだが、「ガイア」で初めてナレーションなしでドラマが構築されたのだった。
 これは新しい試みだと個人的に思っていたものだから、早速反論を書き込みした。これがネットデビュー。
 一度書き込みすると、不特定多数の人たちに向けて自分の意見を発信する喜びが芽生えた。それからというもの、毎日、特撮絡みの何かしらの話題を見つけては書き込みした。
 
 2000年3月。天王洲の劇場アートスフィアで画期的なイベントが開催された。実相寺昭雄監督の事務所(映像制作会社)の〈コダイ〉の創立15周年を記念して、実相寺監督(とその仲間たち)の作品を二週間に渡って一挙上映するというのである。題して「ファンタスマ 実相寺昭雄・映像と音楽の回廊」。
 日替わりのプログラムは胸騒ぎするものばかりだった。

 このレビューをBBSに書き込みしたことから、次第に日記にしたためていただけの小説や映画の感想も書くようなり、自分の意見を発表する場の必要性を感じはじめた。こうしてこの年HP「夕景工房」を開設するのである。
 レビューという形で自己表現することの出発点となったこの文章、手元に残っていないと思っていたら、昨日、ひょんなことから出てきた。
 
 【追記】

 反論相手の某さんとは、オフ会で実際に会ってからというもの、平成仮面ライダーや平成ウルトラマンの、一人ではちょっと気が引ける映画を一緒に観に行くようになった。
 最近は定期的に新橋の某所で特撮を肴にして飲んでいる。特撮に関する基本的思考が同じというところが大きい。


 ●in ファンタスマ 2007/03/16

 そんなわけで、記念すべきレビュー(って大げさな!)を転載。誤字脱字は訂正しています。2日めは2回に分けて。この項続きます、なんてもうやっているんだ。苦笑。
 少々長くなるけれどおつきあいください。

     ◇         

 ドラマの森へようこそ in ファンタスマ

 アートスフィアに行ってきました。入口で巨大なウルトラマン(の顔)およびウルトラマン、帰マン、ティガが出迎えてくれます。
 ロビーには実相寺監督が手がけた映画、舞台のポスターや直筆のイラスト(「ウルトラマンの東京」所収)が飾ってあって興味津々。ATG映画の「無常」や「曼荼羅」のポスターが拝見できるなんて!
 会場に入るとほとんど誰もいません。12:00からの回は観客10名弱。巨大なホームシアターって感じでじっくりドラマが鑑賞できました。

 「波の盆」

 故国を捨てハワイに渡った日系一世(笠智衆)の、今は亡き愛妻(加藤治子)との心の対話を通して、終戦時に勘当し音信不通のまま先に逝ってしまった息子(中井貴一)と和解するまでの物語です。
 まるで笠智衆の一人芝居を観るような趣きで、中盤以降は涙があふれてしかたありませんでした。でもまわりに誰もいませんから、ティッシュで鼻かんでもちっとも恥ずかしくない……。
 実相寺監督らしいカットがいろいろありますが、全体の印象はやはり倉本聰の世界です。
 孫役で出演している石田えりの眩しいくらいピチピチしたビキニ姿が拝めます。 

 「青い沼の女」

 これはもう「屋根裏の散歩者」「D坂の殺人事件」に通じる世界です。全編にわたって実相寺テイストが味わえるミステリホラー。
 5年前に親友である画商(中山仁)の妻(山本陽子)と心中して、一人生き残った画家(田村亮)が、死んだ妻とそっくりな女と再婚した画商の家にわけあって寝泊りしていると、夜な夜な亡き妻が訪れて…という泉鏡花原作の幻想的な物語です。
 もっと淫靡でエロティックを期待したところですが、火曜サスペンス劇場枠ではこれが限度なんですね。
 執事役の堀内正美が不気味でいい味だしてます。(以上、敬称略です)


 発掘! 蔵出し作品(1) in ファンタスマ

 今日も行ってきました。
 12:00から21:00過ぎまで、途中何度か休憩が入りましたが、一度にこれほどの作品を観るのはちょっと体力が必要ですね。学生時代のオールナイト通いを思い出した。

 今日のお目当ては実相寺監督の幻のハイビジョン作品「東京幻夢」と「不思議館」シリーズの川崎郷太監督のティガ前の2本の作品「プーキィ」&「人をいじめてはいけない」。
 「東京幻夢」は感激しました。
 まさしく、エロスとクラシック音楽に彩られた幻想的な作品でした。ベートヴェンのヴァイオリンソナタに完全にシンクロした映像が快感。ラストは「京都買います」を彷彿させてくれます。以前シナリオは読んだのですが、やっぱり本物(映像)はすごいです。
 堀内正美さん(と志水季里子さん)が全く台詞なしで主演してます。
 「春への憧れ」はモーツァルトのピアノ曲にのって奈良、京都の自然をスケッチした映像詩でこれもまた素敵でした。

 まだまだ書きたいことがあるのですが、とにかく疲れちゃって。この項続きます…

     ◇

 発掘! 蔵出し作品(1) in ファンタスマ その2

 「不思議館」シリーズは各編バラエティに富んでいて、とてもおもしろく観られました。全作品の感想を書きたいところですが、ここでは特に印象に残った作品について記してみます。(また敬称略です)

 「電エースに死す」(監督:河崎実)

 〈電エース〉をデンエースと読むのを知って笑ってしまいました。このタイトル、寺山修司の「田園に死す」のもじりなんですね。
 快感を得ると2000(!!)mの超人「電エース」に変身して怪獣と戦う人気ヒーロー番組の製作現場を舞台に、業界の中で一段低く見られる特撮番組にまつわる人間模様をカリカチュアライズして描くサイコホラー。
 題材は違いますが、一部で話題になったアニメーション「パーフェクトブルー」的世界と言えましょうか。
 出演している俳優(特に女優)たちに華がなく(失礼)、まさに学生の8mm自主映画のノリなんですが、いろいろと諷刺がきいていて笑わせてくれます。
 劇中ぬいぐるみ役者がギターをつま弾きながら歌うヒーローの歌は必聴。ラストのクレジットに流れる歌はまさに「怪奇大作戦」です!
 黒部進が重要な役どころでゲスト出演してます。

 「喰う女」(監督:岸田理生)

 「ウルトラQザ・ムービー」「アリエッタ」「ラ・ヴァルス」「ディアローグ」等、一時実相寺作品に必ず主(出)演していた加賀恵子主演の不条理劇(観念劇?)。
 主演女優と全体の雰囲気がダイナの「怪獣戯曲」に似ていたので最初実相寺監督作品かと思ったのですが、やはりタッチが違いますね。
 インポテンツの男と生肉しか食べられない女のラブストーリーとでも言うのでしょうか。
 自分の局部を切り取って、女に食べさせるシーンがあるのですが、ここで 男「どうだい?」女「おいしいわ」 の台詞のやりとりが延々繰り返されます。これって男女のアノ場面の典型的なパターンじゃないかと思ったら、おかしくておかして。

 「プーキィ」(監督:川崎郷太)

 冒頭からスターウォーズばりの宇宙空間のドッグファイトシーンが展開され、驚きました。低予算ですから特撮は合成にしろセットにしろ、とてもチープですが、その志の高さが感じられます。細部に神経がゆきとどいているんですよね。
 敵にやられた正義の宇宙人が、地球に不時着。少女と彼女のペット(?)の小動物(名前がプーキィ)に助けられて…という「スターウォーズ」「イウォークアドベンチャー」「未知との遭遇」を足して文部省推薦児童劇風ナレーションで味付けしたようなSFドラマです。主演は「ウルトラマンレオ」の真夏竜(吾)。
 
 「人をいじめてはいけない」(統括:川崎郷太)

 映画「トワイライトゾーン」の第1話のようなお話。
 新人シナリオライターになんだかんだと言いがかりをつけ、いじめるプロデューサー。ライターの「(プロデューサーの)くそったれ!」の声を聞いた謎の修道女の策略で、別の次元(?)に放り込まれたプロデューサーが、なぜかあたりを徘徊する一人の日本兵に命を狙われ、悪戦苦闘するお話。
 冒頭、200字づめ原稿用紙を使うな、あてつけみたいに表紙に第四稿なんて書くな等々、ねちねちいじめる(?)ところはプロデューサー役の役者さんの名演技でかなり笑えると思うんですが、会場はシーンとしてました(業界の人、関係者が多いからでしょうか?)。
 昔、早稲田大学の学祭で観た「まぼろしの市街戦」という自主制作映画(街を歩いていると、突然赤紙をもらい、戦争に駆り出される男の物語、確か原作がいしいひさいち)を思いだしました。
 
 「受胎告知」(監督:実相寺昭雄)

 これも加賀恵子主演。パンフレットに実相寺監督が「一目ぼれした」と書いているように、加賀恵子ってほんと魅力的な女優です。芝居がうまくて、脱ぎっぷりがいい(AV女優だからあたりまえだけど)。とにかく演技がナチュラルなのでさまざま役になりきってしまうのです。
 プロポーションもいわゆるナイスバディというのでなく、人並みよりちょっといいって程度。だからよけいに身近に感じてそそれられるのかもしれません。
 ここではなかなか子宝に恵まれない専業主婦の奥さんを演じていてとてもリアルです。途中までは、突然の何人もの訪問者にあたふたする奥さんの多忙な1日を描き、観ているこちらはまるでストーカーになった気分でした。
 これがタイトルの「受胎告知」とどう関係するのか、と思っていると、クライマックスで突然SFに転調し、××の女性を実験台に×たわらせて××りまわすという、男なら一度は想像したことがあるようなスケベ心を刺激するシーンがあって、ラストで一気にホラー色を強めます。かなり怖いですよ。
 ゲスト出演者が豪華。新聞勧誘員の豊川悦史、警察官の佐野史郎、銀行員の嶋田久作が顔をみせます。
 そうそう佐野史郎に同行する実直そうな警察官には川崎郷太監督が扮していました。その他、クレジットを見るとコダイのスタッフがたくさん出演しているんです。

     ◇




 
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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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