2010/08/20

 「インセプション」(MOVIX川口)

 KinKi Kidsの堂本剛がどうにも苦手だ。デビュー当時はそうでもなかったが、いつのまにか芸能界ズレして、それが売りのようなふてぶてしい(かったるそうな)態度が癇に障る。レオナルド・ディカプリオを好きになれないのは、見た目〈ハリウッドの堂本剛〉だからだろう。
 なんて冗談だけど、どこかズングリムックリのとっちゃん坊やぶりがどうにも受け入れられないのは本当のこと。

 これまでも面白そうだなと思ってもディカプリオ主演ということでパスしてしまった映画はいくつもある。前作「シャッターアイランド」がそうだった。マーティン・スコセッシ監督がなぜ何作もコンビを組むのかわからない。ヒットするからか。
 実際に映画をみればなかなかいい役者なのである。「タイタニック」のときにそう思った。たぶん他の映画もそうなんだと思う。日本だと田中裕子みたいな存在。スチールだと特に何も感じないのに、実際の演技に触れてみると魅力的になる、といった。

 「シャッターアイランド」はパスしたけれど、続いて公開された「インセプション」はぜったい劇場で押さえようと思った。その差は、予告編のインパクト。監督が「ダークナイト」のクリストファー・ノーランということもある。あれだけ話題になって好評をもって迎えられた映画を結局劇場で観なかった。DVDで鑑賞して大いに後悔したものだ。

 もう何年も前になるが、友人からあるDVDを渡された。火星(?)を舞台にしたミステリホラーだった。映画はシリアスなのだが展開に笑ってしまった。映画の冒頭、回想シーンになってドラマは進んでいく。あれっと思ったのは回想シーンの人物がまた回想すること。その回想シーンに回想シーンが挿入されて……いやはや回想シーンの何重もの入れ子状態になっていく。構成上、こりゃまずいだろう、やってはいけない見本ではないか。
 そんな映画の、いくつも重なり合う回想を夢に置き換えたのが「インセプション」といえる。逆に入れ子状態になっているところが売り。
 それぞれの夢の中で、時間に間に合うか否かが描かれるのだから、観客はいつもの映画より何倍もハラハラドキドキする。か、どうかわからないけれど、個人的には「そんなバカなぁ」と叫びながら(もちろん心の中で)興奮していた。

 自分でもいろいろな夢を見て、夢に興味を抱いている人なら、劇中で描写される夢の現象に惹きつけられる。
 何かというと主人公の前に現われる亡き妻、妻殺しの汚名をきせられ会うことが叶わなくなった愛児たちの幻影、突然道路に出現する機関車とか、回り続ける独楽の原理とか。特にトラウマと夢の関係なんて自分でも何度も経験しているから興味津々。

 自分の夢への侵入を防ぐシステムが、謎の男たち、というのも面白い。要は「マトリックス」の夢バージョンだ。
 サスペンスがいくつもの階層になって同時に描かれ、また途中にさまざまな注釈も入ってくるから、わけがわからなくなりそうだが、それほど複雑ではない。さまざまな階層のスリリングを、その階層ごとに楽しみ、また一緒くたになって迫ってくるダイナミックさに圧倒されればよいだけのこと。

 そう自分に言い聞かせながらクライマックスの怒涛の展開に身をゆだねていたら、最後で梯子をはずされた。おいおい、この夢って、あいつのなのか! ってことはいったいどこから続いているのか?
 そしてラストの思わせぶりなカット。「ブレードランナー」ディレクターズカット版みたいな幕切れ。
 一人だから、誰とも確認しあえないじゃないか!

 映画を観ながら途中からずっとワクワクしていた。
 このカットはどうやって撮影したのだろう? 後半、そんな映像のラッシュだった。
 予告編で何度も見せられた垂直に折れ曲がる街だとか、激しい浸食を見せる海岸だとかいったものではない。あんなことはCGでなんとでもなるものだろう。ホテルの無重力状態、川に落ちるクルマの中の衝撃(G?)……。無重力なんて、本当に人物が空中に浮かんでいて、まさしくホンモノって感じ。まさか吊りなんていう原始的な特殊撮影ではないだろう。
 メイキングビデオが見たい。




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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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