谷啓急死の報にショックを受ける。
 脳挫傷。階段を踏み外して、顔面を強打したという。
 信じられない。

 合掌

 小林さんの衝撃はいかばかりか。
 自宅で転んで怪我をした、なんてことを文春連載のエッセイに書いていたこともある。他人事ではないだろう。

          * * *
  
 高校時代、「キネマ旬報」連載の「小林信彦のコラム」を愛読するようになり、一冊にまとまる(「地獄の観光船 コラム101」)と購入した。ここから僕の小林信彦を読む日々が始まる。そのファン歴を、日記に綴った感想から追っていったらどうなるだろうと考えた。体験的小林信彦論になるだろうか。
 そんなわけで、一回目は1991年。最初に91年を取り上げることに意味はない。たまたま手元にノートがあったからだ。
 なお、ここにでてくる小説群、新作以外初読ではない。特にその旨ことわってはいけないけれど。

     ◇

1991/01/17

 今度の一人暮らしはあまりつらくない。
 夜は読書にいそしんでいるからか? 大学時代を思い出す。
 なんてノンキなことを言ってられない。ついにというかやっぱり湾岸戦争が今朝8時過ぎ(日本時間)勃発したのだ。
 出勤前のTVニュース(テレ朝「やじうまワイド」)では、まだ戦争は始まってなかった。
 直行したS本社宣伝部でニュースを聞いた。
 この戦争が第三次世界大戦の前兆あるいは1999年の地球滅亡の始まりでなければいいが……

 「小林信彦の仕事」を読んでいると、どうしても小説が読みたくなってくる。2、3日前から探していた「悪魔の下回り」が今日見つかってあわてて買う。

 (略)

 「小林信彦の仕事」読了。


1991/01/21

 (略)
 「悪魔の下回り」を読み終える。
 この小説は俺が週刊文春を毎週買い出す、ちょっと前に連載されていたものらしい。
 ニヤニヤゲラゲラ。笑いながらページをめくった。


1991/02/05

 電車の中でずっと「ビートルズの優しい夜」を読んでいて読了。
 「ビートルズの優しい夜」のタレント鳥羽邦彦は坂本九、「踊る男」のコメディアン風間典夫は萩本欽一、「金魚鉢の囚人」の中年DJテディ・ベアは今は亡き糸井五郎か……。
 いわゆる〈業界〉を舞台にした純文学。そして、放送作家、DJ、シナリオライターと姿を変えど、主人公の精神は作者、小林信彦のそれとオーバーラップする。
 この前読んだ「小林信彦の仕事」に入っていた「パーティー」という小説も、この連作の一編と思えばいい。


1991/02/26

 (略)
 遠出の時は電車の中の読書が楽しい。
 「紳士同盟」読了。
 映画化した作品を最後の方だけTVで観たことがあるが、全然小説と違っていた。
 小林信彦が得意とする世界(TV業界およびその周辺)、映画(あるいは芝居その他もろもろ)ウンチク話、世間一般からちょっと(あるいは大きく)ずれてしまった男の嘆き、ウィット&ユーモア。
 ラスト近くのドンデン返しはある程度予想はできた。

 Uと別れた後、続編の「紳士同盟ふたたび」が読みたくて駅前の本屋に飛びこんだが、ない。で、映画が観たくてたまらないスティーブン・キングの「ミザリー」を買った。
 読み始めて、ああ、また翻訳文体に悩まされるのかと思ったがすぐにストーリーに溶けこめた。


1991/03/19

 「世界でいちばん熱い島」を読み終える。
 小林信彦にはめずらしいエロティシズムあふれる描写がたくさんある。とても落ち着いた、乾いた文体なので、よけいそそるのだ。
 南の島のリゾート地での生活風景がまるで景山民夫的筆致だと思うのは俺だけだろうか。
 ラストになって、え、この小説って推理モノだったの? というドンデン返し。
 読み終えるのが惜しくなる昨日、今日だった。

 「カモミールでも飲んでお休み」


1991/03/30

 「紳士同盟ふたたび」を読み終える。
 あっとゆうまの読書だった。
 平易な文章で実に面白いストーリーだった。


1991/04/07

 小林信彦「イエスタディ・ワンス・モア」を再読していたが今日で読了。
 「小説新潮」今月号に、この小説の続編「ミート・ザ・ビートルズ」前編が掲載されている。


1991/07/16

 「背中あわせのハートブレイク」読了。
 瑞々しい青春小説で、特に終戦直後の高校生である主人公に感情移入できる。
 同じ作者の「イエスタディ・ワンス・モア」の高校生(現代の)にはイマイチノレなかったけれど。
 ラストのくだりなんて思わず電車の中で涙を浮かべてしまったほど。


1991/09/01

 天気予報は雨だったが、朝からいい天気。
 日曜日なのだが、早起きして9時に予約した散髪に行く。
 午後、「ミート・ザ・ビートルズ」後編を読みたくて図書館へ行くが、「小説新潮」は5月号だけ貸し出し中。
 そのまま帰るのもシャクだから同じ著者の単行本「Heart break kids」と「裏表忠臣蔵」の2冊を借りる。
 夕方近く、家族3人で28日引越し予定の西川口の××××に行き近所を見学する。
 夜、「Heart break kids」から読み始める。


1991/09/02

 「Heart break kids」読了。
 傑作青春小説「極東セレナーデ」に「紳士同盟」のコンゲームの要素を取り入れ、下町情緒と食通のうんちくをまぶした面白さ。


1991/10/22

 昨晩、「ミート・ザ・ビートルズ」読了。
 前作「「イエスタディ・ワンス・モア」の主人公が1959年にとどまったのもつかのま、ポール・マッカトニー暗殺を阻止するためビートルズが初来日する1966年タイムスリップ、一騒動が巻き起こる。
 タイムパトロール員の存在や父親のポール・マッカトニーを暗殺する設定などつまらないけれど、作者が真に描きたいこと…ビートルズ来日騒動の克明な記録としては価値あるもの、読後感もいい。
 キュートな小説だ。


1991/12/24

 クリスマス・イブ。
 しかし、ほとんどクリスマスを感じることなく1日が過ぎてしまった。
 (略)
 以前手に入れた「映画を夢みて」(小林信彦/筑摩書房)を読み出す。
 高校時代、学校の図書館で「われわれはなぜ映画館にいるのか」(和製B級映画はどう作られるかの章)を読んだことがあり、ずっと気になっていた本だった。古本屋に行くたびに探したものだった。
 その本の改訂版が「映画を夢みて」である。




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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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