ミュージシャン、コメディアン、俳優。
 いくつもの顔を持つ谷啓については、小林信彦の著作によって教わったといっていい。
 芸名の由来はアメリカのコメディアン&映画俳優のダニー・ケイ。デビュー当時は谷敬と表記した由。

 最初の教示は「定本 日本の喜劇人」(晶文社)のクレージーキャッツの章だったか。
 続いて、「キネマ旬報」別冊として出た「テレビの黄金時代」。責任編集・小林信彦、編集協力・大瀧詠一。
 フロントページに「この一冊は、日本におけるテレビ・ヴァラエティの歴史を関係者の証言によって辿ったものである。」とある。日本テレビの「しゃぼん玉ホリデー」を中心に取り上げ、井原高忠(元日本テレビ局長、プロデューサー、ディレクターとして数々の伝説の番組をつくった)や、ハナ肇、植木等にインタビューしている。谷啓、小林信彦、大瀧詠一、三氏による座談会も。
 巻頭グラビアでは〈ガチョーン!〉の復活と題して、正しい〈ガチョーン!〉のやり方が連続写真で説明されている。併せて〈ビョーン〉〈ムヒョーッ〉。
 
 何度も読み返したのは、「クレージーキャッツ・スクラップブック」だ。中原弓彦時代に雑誌に書いた文章を集めたもので、当時としては単行本未収録だった(今は新潮社の「定本 日本の喜劇人」の「これがタレントだ」で読むことができる)。
 当然谷啓個人についても書いている。
 「笑学百科」(新潮社)にもその変人奇人ぶりが書かれていた。

 とてもシャイな方だったとか。大昔のこと、あるステージではずかしいのでサングラスをして演奏したらメンバーの中で一番目立ってしまった。
 自宅が火事になったとき、見舞いに来る人に心配かけないよう焼跡で麻雀をしていた。
 メンバーの中で一番ギャグがわかる人だった。楽譜にギャグを書いていたとか。芸名はダニー・ケイに由来するが、目指していたのはオリバー・ハディやルウ・コステロだとか。
 ホラ話も好きで、「おま○こ鳥」は有名だ。

 トロンボーンの名手でもあり、日刊スポーツの人気投票で2位になったこともある。
 中学時代だったろうか、それとも高校時代だったか。TBS土曜お昼の番組で、谷啓をリーダーとするバンド(ビックバンド風)が演奏するコーナーがあった。バンド名は何だったか。ザ・スーパーマーケット! ピアノが近田春夫なので驚いたのを覚えている。まだユニットという形態を知らなかったころだ。

 最近は俳優としてTVドラマや映画で活躍していた。「釣りバカ日誌」の佐々木課長役が有名だが、個人的には市川崑監督「幸福」の刑事が印象深い。矢口史靖監督「スウィングガールズ」では、ジャズの講師に扮しながら一度もトロンボーンを吹かなかった。

 今日、山田洋次監督「喜劇 一発勝負」(DVD)を観た。主演がハナ肇だが、クレージーキャッツのメンバーも共演している。谷啓、犬塚弘、桜井センリの3人だ。山田洋次・ハナ肇コンビの「馬鹿」シリーズより、この映画の方がより「男はつらいよ」のプロトタイプといえる、なんてことはあとにして、まず谷啓追悼で鑑賞した次第。

 あらためて合掌


 【追記 0914】

 記憶だけで書いてはいけません。
 谷啓氏の変人奇人ぶりは「笑学百科」だったと思い出し、調べてみたら将棋ではなく麻雀でした。文章を訂正追記します。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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