築地から歩いて有楽町に向かっている最中、ある喫茶店を見かける。店名にピンときた。雨が降っていた。時間もあることだし、読書のために入る。昔ながらの喫茶店を利用するなんて何年ぶりだろう。スポーツ新聞が何紙もおいてあり、むさぼり読んだ。
 トイレに行ったとき、ウルトラマンAコーナーに気がついた。やはりこの店、「ウルトラマンA」でTACの美川隊員を演じた西恵子さんの店だった。

 お昼は「TOKYO GRAPHIC PASSPORT 2010」へ。写真家スズキマサミさんから案内いただいて。スズキさんが応募した写真が選出されて出品の運びになったらしい。街の風景を切り取る「寂然の響み」と板の上の芸を記録する「舞台」の2種類。「一回こっくり」の表紙にズシンときた者には「舞台」の一枚々は胸に来る。いや、「寂然の響み」が悪いというわけではないが。スズキさんは60年代半ばの生まれ。他のアーティストのほとんどは80年代生まれということに愕然。展示にPCがかなり利用されている。時代だよね。

 15時からポレポレ東中野で「アイ・コンタクト」。先月の「シネマdeりんりん」のゲストだった中村和彦監督の最新ドキュメンタリー。この映画についてはまたあとで。

          * * *

2010/08/11

 「ぶれない男 熊井啓」(西村雄一郎/新潮社)

 熊井啓監督がぶれない人であることは「黒部の太陽」製作のドキュメント 「黒部の太陽 ミフネと裕次郎」(熊井啓/新潮社)を読めばわかる。
 リアルタイムで「朝やけの詩」を観て感銘を受け、数年後、名画座で「忍ぶ川」や「サンダカン八番娼館 望郷」を押さえた。にもかかわらず、その後、まるっきり無視してしまったのはどうしてだろう? 「海と毒薬」「ひかりごけ」なんて興味あったのに。最期の作品になった「海を見ていた」は熊井監督だから封切時に劇場へ足を運んだわけではない。

 映画は監督のもの、というが、最近、あくまでもプロデューサーからオファーを受け、「演出の仕事をしっかりやりました」という監督が多いような気がする。いや、かつての黄金時代だって、会社側からあてがわれた企画はいっぱいあっただろう。昔も今も変わらないかも。
 そんな中にあって、熊井監督はいつも自分で企画を考えた。作りたい映画を作ってきた。
 熊井監督が熱狂的な黒澤映画ファンであることは知っていたが、自作映画に必ず黒澤映画へのオマージュがあることをわかった。

 時系列で語られる著者の熊井映画評も真摯に映画と向き合っているなと実感できる。


2010/08/13

 「愛すればこそ スクリーンの向こうから」(香川京子 勝田友巳編/毎日新聞社)

 香川京子の若いころの姿は黒澤映画で拝見できるので、東宝所属の女優さんとの印象がある。個人的にだけれど。デビューしたのは新東宝だけれど、すぐに退社してその後ずっとフリーで活躍してきたんですね。本書は週刊文春連載の小林信彦「本音を申せば」で取り上げられていて、機会あれば読んでみたいと思っていたところ図書館の棚で見つけた。
 小林さんも書いていたが、香川京子は数々の名匠、巨匠の映画に出演している。そのフィルモグラフィは驚くばかりだ。
 黒澤明、成瀬巳喜男、溝口健二、小津安二郎、今井正……。
 本多猪四郎監督「モスラ」にも出演している。フランキー堺の同僚役だった。小学生のときにTVで観た「ひめゆりの塔」のラストの救いの無さに衝撃を受けたものだ。「男はつらいよ」シリーズではマドンナの一人を演じている。

 毎日新聞日曜版に連載されたものをまとめたものだという。香川京子はあくまでも取材される側で、編者としてクレジットされている勝田友巳という記者の方の仕事だと思う。良い仕事しています。偉そうな物言いだけど。


2010/08/19

 「コラムばか一代 産経抄の35年」(石井英夫/扶桑社)

 著者は昭和44年から平成16年までサンケイ新聞(産経新聞)の一面のコラム「サンケイ(産経)抄」を書き続けた。僕が小学生から中学生にかけて家ではサンケイ新聞を購読していたので、新聞コラムといえば僕にとっては「サンケイ抄」だった。実際大学生になってから朝日新聞をとるようになるが、「天声人語」のどこが面白いのかわからなかった。「サンケイ抄」は面白いだけでなく、納得できたし共鳴もした。

 著者は、(巨人の)牧野守備コーチの新人への教え 
  一つ、バットを短く振れ。
  二つ、バットを鋭く振れ。
  三つ、バットを素直に振れ。

 から文章の極意をこう書く。

  一つ、ペンを短く書く
  二つ、ペンを鋭く書く
  三つ、ペンを素直に書く

 〈ペンを〉を〈文章は〉にするとわかりやすい。
 実践しているんですけどねぇ。




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Comment
No title
ご来場ありがとうございました。
アートを取り巻く世界にちょこっと足を踏み入れてみました。
色々思う事、感ずることがありました。
写真を褒められることより、被写体に興味を持たれることのほうが
私は嬉しい、ということを再認識した次第です。
アーティストには向かないみたいです(笑)
 
スズキマサミ さん
招待券ありがとうございました。
でも、イベント開始する前に電話したのは、招待券欲しさではなかったんです。会場がもう一つあって、本当にここで良かったのかという疑問がわいたもので。
だって会場内で働いていた人たち、皆若いんだもの(笑)。

アーティストになるなアルチザンになれ。
手塚治虫の言葉です。
No title
「アーティストになるなアルチザンになれ」
名言、肝に銘じます。
 
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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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