2010/10/20

 「七瀬ふたたび」(シアターN渋谷)

 2年前のちょうど今ごろ(10月)NHKで「七瀬ふたたび」のドラマが始まっている。1クール、毎週ビデオを録画してチェックしていた。NHKのドラマでヒロインを演じたのは蓮佛美沙子。70年代に少年ドラマシリーズで同じ役を演じた多岐川裕美とはイメージが全然違って、高校生といってもいい面影だった。

 某ビル内の一室。男がピストルで頭を撃ちに抜いている。捜査本部で上司(大杉漣)に対し死因を説明する刑事(平泉成)。ピストルを持つ手首が骨折していた。この状態では引き金を引けない。では他殺か? エレベーターの防犯カメラに写る若い女。犯人?
 粒子の荒いビデオに写る、 この女がヒロインの七瀬だ。

 七瀬が今何しているのかが同時に描かれる。
 北海道で知り合った女(前田愛)と一緒に羽田空港に降り立った。エスカレーターで降りる二人をスナイパーが狙う。何やら超能力(シャイニング?)を使ってどちらが七瀬か判断している。なぜか定めた狙いは七瀬ではなく女の方だった。銃弾一発。その瞬間女は身をかがめた。落とした何かを拾おうとしたのだ。後ろの男が倒れた。七瀬は異変を察知しあわてて女を連れてその場を去った……。

 ミステリアスでスリリングな幕開け。
 七瀬たち超能力者たちと彼らの抹殺を狙う謎の組織、指揮者(吉田栄作)。その人間関係と構図がわかる仕掛けとなっている。
 前田愛はその後ホテルで殺されてしまうのだが、七瀬はタイムトラベラーの藤子(佐藤江梨子)の力で過去へ飛び彼女を生き返らせる。つまり、彼女がまだ生きている数日前に戻り、そこで彼女と別れてしまうのだ。狙われているのは自分なのだから、別れてしまえばその後事件に巻き込まれることもない。死そのものをなかったことにするのである。

 確かに女は助かった。が、それでめでたしめでたしにはならない。なぜなら七瀬も藤子も過去に飛んでいるのだ。もとの世界に戻って、それでも女が生きているというのならわかるのだが。七瀬にそんな意識がない。
 映画はまったくそのことに触れずに進行していく。いいのか、それで?
 しかし、その問題こそが、この映画のテーマだったのだ。途中で藤子がその問題に触れタイムトラベラーのジレンマが提示され、ラストの映画オリジナルの展開で思わず膝を打った。エンディングロール前にもう一度「七瀬ふたたび」のタイトルが出てくるが、とても意味がある。

 特撮に新しさはない。昔ながらのローテクだが、表現の仕方を工夫していて好感を持った。他人の心を読む際のヴィジュアル等々。クライマックスのスチールを使った動画は大林監督「時をかける少女」へのオマージュか。
 残念なのは七瀬が敵に捕らえられた少年ノリオ(今井悠貴)を助けに湖を渡るショット。仲間のヘンリー(ダンテ・カーヴァー)の力(テレキネシス)で空中を飛ぶのだが、このショットが昔ながらの合成で何の迫力も感動もない。もっとこちらのエモーションをかきたてくれたら……。

 主演の芦名星は初代同様大人の魅力を持つヒロインを演じていた。いろいろな顔も持っていた。カットによって天海祐希に見えてくる。あるいは草刈民代や冨永愛とか。ロングで暗いと貞子にも(失礼)。調べてみたら「仮面ライダー響鬼」で魔科魍(敵の怪人)を統率する男女(童子と姫)の姫役だった。ええ!、である。

 「蒲生亭事件」は「時をかける少女」(「タイム・トラベラー」)に対する宮部みゆきのオマージュだと思っている。だとすると「七瀬ふたたび」のそれは「クロスファイア」なのか!

 タイトルデザインは洒落ていて好みだし、テーマ音楽も印象的だった。
 

 【追記】

 映画の後半、クライマックスあたりから画面の端部分に縦に走るギザギザの線がときたま写るようになった。左側は一瞬何箇所かだったが、右側はずっとそのままで消えることがない。
 演出のひとつだと思っていたが、エンディングロールになってもやはり消えない。映画が終わって場内が明るくなってもそのままだった。
 スクリーンの傷だったのだ! こんな経験初めてだ。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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