2010/10/22

 「日本映画[監督・俳優]論」(萩原健一・絓秀実/ワニブックス【PLUS】新書)

 本書が出版されると知ったとき「ショーケン」の影響だなと思った。「ショーケン」は自伝という触れ込みだったが、ショーケン自身が絡んだ70年代から90年代にかけてのTV映画・ドラマ、映画のうちあけ話という側面もあって実に興味深かったのだから。
 その部分にスポットを当ててショーケンに取材する映画評論家がいてもいい。
 しかしなぜ共著者が絓秀実なのか? 

 絓秀実は文芸評論家である。「それでも作家になりたい人へのガイドブック」の著者として、同じく文芸評論家の渡部直己とセットでインプットされている。上梓されたころ図書館で借りて読んだような。
 名前を覚えたといってもあくまでも字面。絓の読み方を知らなかった。〈すが〉と読むんですね。漢字の読みを知らないということは、「それでも作家になりたい人へのガイドブック」を読んでいないのではないか。まあ、いいや。

 なぜ? については冒頭で理由がわかる。キーワードは中上健次。ショーケンと中上健次の生い立ちが似ていて興味を持ったようだ。ショーケンはショーケンで中上健次の奥さんから小説の映画化作品の監督を依頼されたことがあったといい、もらったシナリオのあるシーンのすごさについて語る。絓秀実はすかさず「枯木灘」ではと答える。奥さん自身が二人の共通性を感じていたのでしょうと。
 ショーケンへのインタビューのあと、巻末に『百年の孤独を生きる、現代の「危険な才能」 ――つかこうへい/神代辰巳/中上健次とショーケン』と題する文章をしたためことでもそれはわかる。この文章を書きたいがためにショーケンにインタビューしたのでは? なんて詮索したくなったりして。

 いやいや、そんなことはどうでもいい。本当に興味深い話を引き出してくれるのだから。映画研究者・山本均の協力と助言の賜物だろう。

 前述の話から次の主演作に予定されている「ナオミ」(「痴人の愛」)のあるシーンになり、「ベニスに死す」に続いてもう完全に引き込まれてしまった。沢田研二の話では声たてて笑ってしまった。「カポネ大いに泣く」のハットのかぶり方!
 ジュリー主演の「太陽を盗んだ男」から「地獄の黙示録」へ。
 ああ、長谷川監督の才能を認めるのなら、一度長谷川監督作品に出演してくださいよ!

 そのあと、黒澤明監督の「影武者」の話になるのだが、ここで総毛だった。血が逆流した。「影武者」撮影前にフランコ・ゼフィレッリに誘われたと言うのだ。ショーケンも絓秀実も知らないのか、まったく話題にしていないが、あの「ロミオとジュリエット」「ブラザーサン・シスタームーン」の監督ですぜ!

 この項続く




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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