2010/11/01

 「萩原健一 トーク&ミニライブⅡ ANGEL or DEVIL」(なかのZERO 大ホール)

 前々項から続く

 ゲストにはまるで期待していなかった。横浜は梨元さんの娘だった。素人に毛が生えたような人にショーケンとのトークを盛り上げる力などなく、ショーケンだって話術にたけているわけではない。梨元さんの話題でいくつか会話のキャッチボールがあっただけであっけなく終了してしまった。これは別に彼女のせいではない。
 その後、名古屋、大阪も同じだったらしいので、「誰だろう?」なんてワクワク感は皆無。だから「ゲストは小堺一機さんです」と紹介されたときは驚くと同時に喜んだ。こりゃ、トークがはずむぞ。会場もどよめいたような気がする。

 少し前にパーティーで一緒になって話したことが今回のゲストにつながったらしい。
 小堺さん、そのときの会話を得意の物真似をまじえて再現する。大爆笑。
「あのとき、すごい失礼なこと言ってしまったんですよね」
 パーティー時、ショーケンは小堺さんの目をじっと見つめながら話していたという。その目つきについ訊いてしまった。
「クスリやめられたんですよね」

 世代だから、テンプターズ時代からショーケンの活躍を知っている。役者に転向してからは映画もTVも観ているようだ。こりゃ中身の濃いトークショーになるなと次の展開を期待していた。小堺さんが「太陽にほえろ!」だか「傷だらけの天使」の話題をしようとすると、ショーケンがストップをかけた。  
 ショーケンにとっては70年代の作品に関する話はもううんざりなのだろう。ファンにすれば何度聞いてもうれしいものだが。
 腹八文目どころか、五、六文目といったところで小堺さん退場。もう少しトークしてもよかったのに。これは予定どおりなのか否か。小堺さんがゲストなら、大きなサイコロを用意して、ファンが気になっていることを代表して訊くということもできたのに。新作「ナオミ」はどうなったのか? 「約束」のリメイクは本当に自身で監督するのか? 市川森一脚本の旅情を描く映画は? 「傷だらけの天使」の映画化は? フルバンドにコンサートは? これなら30分、40分なんてあっという間に経ってしまう。 

 「シャ・ラ・ラ」の大合唱では、小堺さんを引っ張り出してきて、AHaちゃんをお供に客席の通路を一周。4列31番が通路に面している。隣の女性はあわてて通路に向かって飛び出していった。ショーケン、横浜がそうだったように中野でももみくちゃだった。

 シャ・ラ・ラ


 知っているなら一緒に歌ってくださいと言って、歌いだしたのはテンプターズ時代の代表曲2曲。
 「R」で「神様お願い!」を、「ENTER THE PANTHER」で「エメラルドの伝説」を解禁した。「神様お願い!」を歌いだしたのは理解できる。メンバーのオリジナルだし、ローリングストーンズを意識した楽曲だからだ。が、なぜ「エメラルドの伝説」なのか? いかにもなおとぎ話風ラブロマンス、もろGSサウンド。テンプターズ時代は地獄だったと切り捨てるショーケンは絶対取り上げない楽曲だと思っていた。もちろん、僕自身は「神様お願い!」も「エメラルドの伝説」も大好きだけれど。
 横浜のときは、新アレンジの「神様お願い!」に度肝抜かれた。イントロからはまるで「神様お願い!」だと想像できない。CDを聴くうちにお気に入りになった。ウエストコーストのロックンロールという感じ、しませんか。
 ラストはショーケンのテーマソングとでもいうべき「ショーケン・トレイン」。
 ライブではお馴染みになった、バンドメンバーを引き連れてのステージ一周。いつものパフォーマンスのあと、ショーケンが全速力でステージを駆け巡った。思わず拳を握り締めた。
「ショーケン、本気なんだ」
 胸に熱いものがこみ上げてきた。

 声の調子は「ENTER THE PANTHER」と比べると格段に良くはなっているが、全盛期には及ばない。それは仕方ない。心配なのは声が裏返ったまま、もどらないときがあるときだ。
 ショーケンの声の衰えを声の裏返りと表現する人がいる。言葉が足りない。裏返りは演技でも歌でもショーケン節の魅力の一つだった。歌ならば、裏返って高い声を極めたとたん、すぐにドスを効かせるような、まるでジェットコースターみたいな高低自由自在な歌唱にゾクゾクするわけだ。それが裏返ったままだとたまらなく不安になる。声が震えていたりすると喉を酷使しないで祈りたくなる。
 横浜のときは、一番前だったこともあり、歌い終わるたびに、喉の薬をシュッシュしていたのを目撃している。
 
 まあ、とにかく。
 ショーケン、フラフラ。
 全員ソデに消えた。

 エメラルドの伝説/神様お願い!/愚か者よ/ショーケン・トレイン(9月25日吉日、友の結婚)


 さあ、アンコールだ。ずっと手拍子をし続ける。最初は全員が立ち上がっていたが、一人、二人と座っていき、立っているのは(まわりでは)僕と隣の女性だけになってしまった。どうして皆座るんだよ! 少々毒つきたかったが、このままだと後ろの席の人がステージを見づらいなと思って、あわてて着席した。続いて女性も。
 舞台にはショーケン以外のメンバーがそろった。
 AHaちゃんが巫女になって、天上の神を呼んでいる……  

 ショーケンが客席から現れるのは、名古屋、大阪の情報で皆知っている。誰もステージなんて注目していない。
 どこから現れる? スリリングな瞬間。
 スポットライトが当たった。な、なんとショーケン、2階席に立っていた。
 ステージでは「フラフラ」の前奏が始まった。
 ショーケン、すぐにドアの外へ消えると、そのまま裏の通路を走ってきてステージに登場した。
 客席の歓声! ボルテージは最高潮!
 個人的には、あのまま2階席で「フラフラ」を歌えばもっと感激したのにと思っているのだが。
 ……ボブ・マーリーよろしく、ショーケンの「ヨォー」に応える客席。その繰り返しで最後に三本締めならぬ四本締め(?)。

 ANGEL or DEVIL/フラフラ(春よ来い)

 本当のエンディングがやってきた。時計を見ると20時ちょっと前。エントランスに飾ってあるポスターには18時30分~20時30分と明記したあったのに。トークの時間が短くなっているのだろう。まあ、ショーケンにはトークショーは似合わないし。だいたい2時間あのパフォーマンスやったら、ぶっ倒れるよ。 
 メンバー紹介のあと、ちょっと長めの挨拶。カンペの力を借りたのはご愛嬌。
 今を生きていると、だから皆さんも明日を楽しい一日にしてください、と。
 胸にしみた。
 そう一週間先、自分がどうなるかわからない。自分だけでなく、明日だって本当のところわかりゃしないのだ。だからできるだけ触れ合いたい。もうライブはいいかな、と思ったけれど、考えを改めた。

 帰り支度をしていると、「君が代」が聞えてきた。ショーケンの声だ。何かの式でショーケンが歌ったという。週刊現代ではグラビア特集に「ショーケンが国家を歌う時代」というタイトルがつけられていた。
 高校時代のラグビー部顧問で、現代国語のM先生が、授業でこんなことを言った。
「『君が代』は『古今和歌集』の読み人知らずの作品なんだ。地方の誰だかわからないような人が天皇のことなんて詠むものか」
 以降、このスタンスで「君が代」に接している。

 充実した1時間30分強だった。


 Gt:瀬田一行 Gt/Chor:長井ちえ Vocal/Chor:AHa
 Key:篠原信彦
  □
 Bess:石川信二 Dr:堀越彰 
 Sax:鈴木アキラ


 タイトルの「ANGEL or DEVIL」、ふと黒澤明の言葉(本のタイトル)にも由来しているのだろうかと思った。

  天使のように大胆に
  悪魔のように細心に




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No title
Kei様 初めまして
私も11月1日の中野ZEROホールへ行きました! 席は4列31番の通路側です。Keiさんのお隣のお隣の席でございました…。
今年からショーケンの魅力にはまりまして、なんとかライブに行けることができました。
ショーケンの歌は、ヘタッピィに感じて全然聴けなかったのですが、著書の『ショーケン』を読んでから聴けるようになってしまい、今回のライブはむちゃくちゃ楽しかったです。
通路の席だったのでショーケンと握手できました。4列目に来てくれた時にショーケンの手が余っていたので、私の両手で丁寧に握手してもらいました(握手を奪ったとも言う)。とても分厚い手なのに柔らかく温かかったです。そうそう、中央の席から女性が飛び出て来られました(笑)。
会場のファンの方々はあまり元気でなく、途中で座ってしまう人が多かったですね。Tシャツ1枚で戦闘モードしていたのは私ぐらいでした。
小堺一機さんとのトークは楽しかったですよね。「人生はギャンブルですから」で大笑いしました。最後のMCで「今回のライブもそうですが、出会いを大切に」と言われていたのが印象に残り、ご縁ができたから、またライブを開いてくれたら私は行くと思いました。
Keiさんとはお近くの席だったのに出会うことはありませんでしたが、ブログを発見して出会うことができました(笑)。
長文失礼しました~。
No title
わあ!

ちょっと感動。
すぐお近くの方が、ブログを発見されるなんて。
ネットはすごいんだなあ!

中野、見れなくてホント残念です。
いやもう、ほんっと。
No title
うぐぐっ、行けなかった辛さが倍増された……(苦笑)
 
kaneko さん
初めまして。
書き込みありがとうございます。
こんな出会いがあることをうれしく思っております。

4列31列の女性、覚えていますよ。右隣はスーツ姿の男性でその隣。けっこうお若かったような印象がありますが。
通路に面していたので、ここ、ショーケン通りますよと教えてあげたかったくらい。余計なお世話なのでやめました(笑)。

もしかしてショーケンライブ初体験ですか?
ショーケンの歌唱、ハマると病みつきになります。
「人生はギャンブルですから」は「Gambler」という歌にでてくるフレーズです。
「ギャンブルが人生だって? それは違う、それは逆だ、人生がギャンブルなんだよ!」
私の座右の銘になっております(笑)。

たぶん来年はフルバンドでライブをやるんではないですか?
また行くと思いますので、そのときはどうぞよろしくお願いします。

ちなみに1列30番、31番が無断撮影していて係員に2度注意されていましたね。カメラ取り上げられて、最後は携帯電話で撮っていました。そこまでして写真が欲しいのでしょうか。自分の目に焼き付けたり、耳に記憶させたほうがよっぽどいい記念になるのに。

showken-fun  さん
横浜のときも、いらっしゃるなんて全然知らなくて、予期しない場所で偶然出会って驚いたのですから、中野も当然、いらっしゃるものと予想していました。
当日券購入するのに並んで、自分の目の前で売り切れるのが夢じゃないですか?
いや、自分が買って売り切れる方がいいかな?
スズキ さん
来年こそはご一緒しましょう。
その前に、ライブハウスにGHQ聴きに行きましょう!
No title
showken-fun様
「ブログを発見して」と、まるで自分が見つけたような文章ですみません。
showken-funさんのブログから流れてきていました。いつも読み逃げで失礼しました。Kei様のブログのコメント欄をお借りして御礼申し上げます。(Kei様お借りいたします)

Kei様
アハハ。覚えていて下さりありがとうございます。私は男性が多い会場に緊張していて、お隣のお隣まではチェックできていませんでしたがKeiさんはスーツ姿ではなかったですか? 近くの席の方は仕事帰りで仕事が出来るような方々ばかりだなぁなんて思っていました。
通路にショーケンが通るかもというのはshowken-funさんの記事で知っておりました~。声をかけて頂いていたらもっと緊張してしまって握手を奪うことは出来なかったかもです(笑)。
今回の中野は初ショーケンライブです。そんな初心者ですので「人生はギャンブルですから」は曲のフレーズなんて知りませんでした。あまり曲は知らないので、ご伝授していただけると嬉しいです!
一列目の方々と後ろの席から前へ来られた方の行為にショーケンは嫌な顔をせずに、その方々の前の右側にもよく来てくださり、ショーケンは凄いなーと感心してしまいました。私に向かって歌ってくれていると勘違いもして楽しかったライブでした(笑)。
次回のライブでKeiさんやshowken-funさんとお会いできるのを楽しみにしております!(ライブ開催、ショーケンお願い!)
またまた長文失礼しました~。
kaneko  さん
「Gambler」、ショーケンのベストアルバム「ENTER THE PANTHER」赤盤に収録されています。もしCD購入するのなら黒盤とともにぜひ!
それから、DVD「ANDREE MARLRAU LIVE」も絶対観てください。
とりあえず、Youtubuで一応観られますから。って、もう観ていますよね。

私は私服でした。会社休みましたから。って、会社行ってても、カジュアルですけどね。
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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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