復帰のリハビリを兼ねて。
 帯広のJさん、励ましの長芋ありがとうございます。精がつきます。

          * * *

 ウルトラシリーズ等の監督で有名な実相寺昭雄はエッセイの類のほかに小説も何篇か上梓している。第一期ウルトラシリーズを邁進している円谷プロを舞台に関係者たちの青春群像を描いた「星の林に月の舟」(大和書房→ちくま文庫)は傑作だった。
 TBSで「ウルトラマンをつくった男たち 星の林に月の舟」のタイトルでスペシャルドラマになった。感想は「なんでもかんでも実相寺監督の功績になっている!」。

 つまりこういうことだ。
 小説の吉良(自身をモデルにしたTVディレクター)は主人公とはいえオールマイティではない。円谷プロとは局のディレクターとして関わっている。あまりに突飛な演出で社内の仕事を干された吉良は、会社の先輩、円谷一の紹介で円谷プロの監督を引き受けることになる。
 「ウルトラQ」ではシナリオを2本書いたがモノにならなかった。後番組「ウルトラマン」の企画には直截係わっていない。基本的事項が決定したのち、脚本家の佐々木守とコンビを組んで撮影に入っていく。決められたフォーマットを、意図的に無視して独自のカラーを全面的に押し出し、あの異色作を作ったのだ。
 にもかかわらず、ドラマになると、たまたま撮影を見学にきた吉良のアイディアが採用されたことで「ウルトラマン」の骨格が出来上がったことになっていて呆れてしまった。本当は円谷プロの企画室長でシリーズのメイン脚本家の金城哲夫、メイン監督の飯島敏宏等々が考え出したことなのに。

 「龍馬伝」最終回を観ながらドラマ「ウルトラマンをつくった男たち」を思い出していた。ドラマなのだからフィクション大いに結構。しかし、歴史的事実を改変するのはいかがなものか。それも歴史に疎いこの僕でも「そりゃないぜ」と突っ込みたくなる改変である。
 「元禄繚乱」最終回では、綱吉が討ち入りした四十七士に面会したというフィクションを肯定した。ショーケンの綱吉だからではない。テーマに直結してなおかつ納得できたからだ。

 「龍馬伝」も確かにテーマに結びついている。が、どうしても納得できない。龍馬を暗殺した男たちと岩崎弥太郎が出会っている、それも暗殺前だけでなく暗殺直後にもというのはあんまりではないか。
 すれ違った、なんてものではない。顔と顔を突き合わせて熱い会話が交わされるのだ。顔を見られた男たちは弥太郎を一刀のもと斬り捨てるだろう。状況としてそれが当然だからだ。あるいは、暗殺者を2回も目撃した弥太郎なのだから、その後犯人探しに躍起になるだろう。事業に成功して財を成した男なら、それが当然のことではないか? クライマックスで現実に引き戻す愛媛県知事当選のテロップ挿入はもちろんのこと、いやそれ以上にこの出会いのシーンに興ざめした。

 「龍馬伝」にはその手のフィクションが多すぎるきらいがあった。リアルな映像(特に屋内に差し込む太陽光然とした照明)に夢中になりながら、英雄然とした龍馬の人物像、その描き方に鼻白むことが何度あったことか。
 弥太郎と龍馬は同郷ではあるものの幼馴染みではなかったという歴史的事実を知ったときは驚いた。おいおい、ドラマの核となる部分(テーマや構成)がフィクションなのか。だったら仕方ないのかもしれない、と。あるいは、今の視聴者のレベルに合わせた作劇なのかもしれない、と。
 最終回に向けてのこの数話の盛り上がり方は否定しない。実際、僕は何度も目頭を熱くしたし、涙が頬を伝わっている。
 「LIMIT OF LOVE 海猿」のシナリオライターらしいといえばそれまでだ。「犯人に告ぐ」はよく出来ていたと思うけれど。

 冒頭にいつものタイトルがなかったので、ラスト、あのテーマ曲を流すのかとわくわくしていたのだが、そんな俗っぽい作りにはしなかった。劇伴の音楽にゾクゾクきた。新たに作られた曲なのか、単なるこちらの思い過ごしか。
 「龍馬伝紀行」の音楽も、Yuccaのボーカルのあと、第一部のいちむじんが流れてきて感激至極。どうせならピアノとチェロも流せばよかったのに。第四部から第一部へひとまわりしたということなのかも。




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No title
「龍馬伝」最終回に昔の知り合いが出たので初めて観ました。主役の顔だけで演じる形だけの芝居が気持ち悪くて、何度か早送りして観てしまいました。香川・上杉がやたら良かったので尚更。
あの微妙に揺れるカメラの撮り方も、ちょっと酔いそうになりました。光と色は良かったんですけど。
スズキ さん
第一部のころ、幕府の役人役で知り合いの俳優さんが出演していました。始まったばかりだったので、大友ディレクターの演出ぶりを聞いたりしていました。
最近では、観に行った芝居の主役を演じていた俳優さんが出演していて驚きました。

ハゲタカチームの撮影はかなり気に入っています。堤幸彦監督の「ケイゾク」の流れを汲む…堤組の撮影を担当したI屋のカメラマンは今はもう完全に売れっ子、大御所ですね。同じゆれでも、まったくセンスのない映像もありますので。「BOSS」とか。

No title
龍馬も中岡もおの若さで燃焼しましたね。
tarou さん
書き込みありがとうございます。

もし龍馬が暗殺されなかったら、明治をどんな風に生きていたのか、興味あります。
歴史通に言わせれば、政治家にはならず、商人(企業家)になっていただろうと、
岩崎弥太郎のライバルになっていたのでしょうか?
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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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