2011/01/18

 「ばかもの」(スバル座)

 シネコンのレイトショーで観ればいいや、なんて考えていたら、シネコンどころか都内では2館でしか上映していない。それも平日だと定時に会社を出ると最終回に間に合わない。頼みの川崎(チネチッタ、TOHOシネマズ)でも上映はなし。
 仕方ないので、10日(月・祝)に出かけたら、ディスカウントチケットで前売券が手に入らなくてあたふたした。そのとき、スバル座では15日(土)からプログラムが変更になることがわかった。昼間は「SPACE BATTLESHIP ヤマト」、最終回のみ「ばかもの」の上映。時間も19時からだ。これなら平日でも十分間に合う。
 結局、1,800円で観た。

 「やわらかい生活」がそうだったように、この映画もとても身近に感じた。
 主人公(成宮寛貴)は年上の女(内田有紀)に振られてアル中になってしまう。アル中を躁鬱病にすればそのまま20代半ばの自分ではないか。舞台が高崎(群馬)だから、「やわらかい生活」以上にその思いは強い。
〈白衣観音慈悲の御手〉の観音さまの姿を見るのは何年ぶりだろう。小学校の遠足では、白衣観音と遊園地のカッパピアはセットになっていたっけ。カッパピアはもう何年の前に閉鎖されたらしい。
 映画の最初の方で主人公が通っている高崎文化大学は高崎経済大学がモデルだろう。実際ロケは同大学で行われている。映画の中ではバカ大学という設定だが、けっこうレベルが高いはずだ。調べてみたら、高崎○○(漢字二字)という大学がもうひとつあった。モデルはこちらか。

 主人公と年上の女の出会いと別れ、再会までの10年ほどの軌跡を描く、と知って興味を抱いた。10年間の時の経過をどう見せ、描くか。一番のポイントはここだ。20代から30代(30代から40代)の人の変遷を見せるというのはとてもむずかしい。変わっていなさそうで、でも違う。この微妙な変化を役者のメーキャップや小道具等で的確に表現してくれたら……
 成宮寛貴に関しては成功していたのでは? 童貞大学生が年上女の肉体に溺れてしまう様に「わかる、わかる」。セックスを知ったら、あとはもう毎日やるだけ。歩く海綿体。女性にしてみれば「あなた、私の体だけが目当て?」。そうやって信頼を失っていくのだ。相手が同年代の場合は。
 内田有紀は、長い髪がそのまま白くなったというのがなんだかなあ。女性なのだからもっと変化していたほうがリアルだ。髪を短くしたり、パーマ(ウェーブ)かけたり等するものではないか。でも内田有紀だから許してしまう。
 
 蛍雪次朗の伯父(叔父?)、親戚にぜったいいそうなタイプだ。
 中華料理店主で登場した仁科貴。一瞬川谷拓三かと驚いた。ずいぶん前に復帰したことは知っていたが、やっとスクリーンで再会できた。うれしい。
 浅田美代子のお母さんもとても自然。「釣りバカ日誌」で鍛えた結果か。僕は石田えりが降板してからこの映画を観なくなってしまったのだが。
 
 会話の端々に群馬弁(上州弁)がでてきて、そのたびにニヤけてしまう。群馬弁の場合、単語よりイントネーションだ。標準語をしゃべっているようで、語尾で群馬弁がもろだしになったりする。そんな会話を耳にすると、郷里(群馬県太田市)に帰省したような感覚になって、ニヤけてしまうというわけ。エンディングロールで確認すると方言指導のクレジットがあったから、狙いだったのだ。

 「やわらかい生活」も「ばかもの」も絲山秋子の小説が原作だ。主人公が精神的な病気を克服して、次なるフェーズに向かっていく、というのは絲山秋子の小説の特徴なのだろうか。
 それから映画の中で一番の官能シーン。「やわらかい生活」では、ヒロインの髪をいとこの男性がドライシャンプーで洗うシーンが印象的だった。「ばかもの」には、事故で左腕を失った女の右腕を主人公が洗ってやるシーンがある。たまたま似ていただけなのか。それとも意識してのことなのか。二つの作品、ラストはかなり違うけれど。
 この右腕を洗うシーン、本当なら、女の切断された左腕の傷痕をきちんと見せるべきだった。もちろん全裸で片腕がない姿を。CG、デジタル処理で表現できる。すべてを主人公にゆだねた女の、傷痕を含めてすべてを受け入れた主人公の、ふたりの心情が交叉するさまを(映像で)表現する重要なシーンだと思うのだ。この物語のキモではないかと。

 一つ疑問に感じたこと。素敵な女性(白石美帆)と出会って希望を見出したというのに、それでもアル中になるものなのだろうか?




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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