承前

 映画上映が終って、15分の休憩。この間に、一番前の座布団席がなくなって、客席の一番後ろに移動するものだと思っていた。実際、始まる前にそう言われていた。が、お客さんが多すぎて、座布団席の人はそのままということに。立たなくていいということで喜んだのだが、実は立ち見の方がより芝居の世界を満喫できただろうと終演後にわかるのだ。

 舞台中央の奥にはグランドピアノが設置されている。ピアノはアトリエの主である佐藤慶子さん。その斜め前、客席から見ると上手になる位置の椅子にはチェロの高橋裕紀さんがちょっと緊張した面持ちで座る。下手、ちょうどピアノの後方になる位置に篠原監督が座ったのには驚いた。床に直だ。単に座ったわけではない。担当する楽器は、どこかの民族楽器だろうパーカッション。

 篠原監督にはカルテットをモチーフにした映画を作りたいという考えがあったとプログラムに書いていた。ピアノのあるアトリエで映画上映プラス何かをやる機会をもらって(このイベントは「第3回恵比寿映像祭 地域連携プログラム デイドリームビリーバー」に参加している)、最初は朗読劇+生演奏の上演をやるつもりだった。が、実際に役者を迎えてアトリエ芝居に変貌した、と。

 長野・安曇野にあるペンションが舞台。このペンションに有能なチェリスト(藤本浩二)がマネージャー(太宰美緒)とともにやってきた。作曲活動のためとのことだが、ペンションオーナーの妻(竹中友紀子)とチェリストはかつて恋人だったという事実がある。ピアニストとしてパートナーでもあった。チェリストの本当の目的は何か? オーナー(阿部竜一)は心おだやかではない……。

 チェリストが弾くチェロ、オーナーの妻が弾くピアノ、その音色が高橋さんのチェロであり、佐藤さんのピアノなのである。クライマックス直前、ふたりが奏でる二重奏が胸に迫る。
 その直後、ピアノへの想い断ちがたく妻がかつての恋人とよりを戻すのではと悩んでいた夫が放つ一言。その相手を思いやる言葉に涙がこぼれそうになった。

 座布団に座っていると、芝居をいつも見上げていなければならない。これがけっこう疲れる。ちょっと下を向いたりして、何度も決定的な場面を見逃している。立ち見で舞台全体を見渡していた方がどれだけよかったか。

 マネージャー役の太宰さん。二井サロンやシネりんの常連だが、初めて芝居を観る。素直な演技でとてもよかった。ワインの飲み方とか好きだなあ。

 芝居のあと、篠原監督と二井さんのトーク。そして会場で打ち上げ(懇親会)。佐藤さんの手作りの料理、缶ビール、ワイン……。
 演者と観客が芝居を話題に大いに盛り上がった。
 




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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